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忙しい彼氏

今回はフローレンス視点です。

私の彼氏のレイ・ハーストンが生徒会会長に任命されて数日……生徒会室にて



「ーーレイ~先生からこれからの生徒会の件で話したいことがあるみたいだよ」


「ごめん、今行くって伝えて欲しい」


とレイは書類から目を離さずにアルマンダさんに伝えた。


「はいよ~」


「お兄様、文化部から部費増額の嘆願書が来てます」


彼の妹のラウラがレイの目の前の結構な量の書類を置くと彼はげんなりとした表情をする。


「えぇ……また来たのかよ……懲りないなぁ。

ーー嘆願書は机に置いておいて、後で見るよ」


「はい、かしこました」


そしてラウラさんが目の前に大量の書類を置くと彼はため息をつきながらも、先生との話し合いで使う書類をまとめると椅子から立ち上がった。


「じゃあ僕今から先生と会議行ってくるから、みんな各自の仕事よろーー」


バンッ!!

と誰かが生徒会室のドアを勢いよく開けた。


「大変だ坊ちゃん!! 運動部の連中が喧嘩し始めた!!」


慌てた様子で生徒会室に入ってくるトリスケール君。彼は椅子にずっと座っているのが苦手なのでレイが校内で何も起きてないかをパトロールしてきて欲しいと頼んでいたらしい。

……まぁそんな彼の予測は見事に当たった訳ですが。

そしてそんな事を聞いたレイは結構怒り気味だ。


「はぁ!? 何でこのタイミングで起きるかなぁ……。

ーー喧嘩はアルで一回仲裁入って、それで解決しそうだったらそのまま解決に持っていく、ダメなら僕が介入するよ。ごめんミラ、アルが暴走しないかお目付け役頼める?」


「あぁ分かった、トリスケール殿行くぞ」


「おっけ、坊ちゃんの手間を増やさないように解決するぜ」


と意気揚々に生徒会室を出ていくトリスケール君とルネフさん。


(多分この2人が出れば何とかなるでしょうね。

流石レイ、適材適所に役員を派遣してます。お姉ちゃん嬉しいです)


「で、話し合いには僕とラウラが行くから……チャス、僕が話し合いの間少しお願いね」


「ほいよ~任されたぜい」


「恩に着る、ラウラ行こうか」


と必要な書類をまとめて、行く準備を整えたレイはラウラさんに声をかける。


「はい、分かりました。

ーーでは、皆さん行ってきますね」


「「行ってらっしゃい」」


と彼はラウラさんと一緒に生徒会室を後にした。



レイが生徒会室を後にしてしばらく……


「はぁ……」


さっきまでのレイを見ていれば分かるが彼はとても忙しい。

会長になってまだ日が浅いのもあってか会長職に慣れていない様子で、慌ただしく動いている。


(はぁ……寂しいです……構って欲しいです)


「ーーライシングさん」


「は、はい?」


「手、止まってますよ。

愛しの後輩クンが構ってくれないから悲しいのは分かるけど、今は生徒会の手伝いで来ているんですから元会長の貴方が手動かさないでどうするの?」


「ご、ごめんなさい私とした事が……やらないといけませんよね」


ベスランドさんに注意されて私は再び手を動かし始めた。

私達がここにいる理由はレイが忙しそうにしているから手伝いに来ているのである。

それなのにレイに目が行き過ぎてて手が止まってしまった。


(今日もレイ忙しそうね……寂しいです)


「後輩クン忙しそうね……」


まるで私の心を覗いたかのような発言をするベスランドさん。

彼女は前から人の感情に敏感なところがるのは知っているけど、今の私はそんなに顔に出ていたのだろうか。


「え、えぇとっても忙しいみたいです。最近全然一緒にいれないのです」


「でも毎朝一緒に登下校してるわよね?」


「……登下校以外は一緒にいないです」


「そ、そうなのね。お昼休みは?」


「誘うと思ったら何故か毎回タイミング悪いんです……生徒会の仕事なんかが入ったりして断られてしまって……」


何故か私が誘おうとする度に邪魔が入って全然誘えないので私が彼と一緒にいれるのは本当に登下校の時間しかない。そのため手伝うという名目で生徒会室に来ても彼と全然会えないのである。


「なるほど……」


「構って欲しいです……お姉さん寂しくて泣きそうです……もう何も仕事したくないです……帰っていいかしら?」


私は机に突っ伏した。

他の生徒会役員は既に帰っており、私とベスランドさん以外は誰もいない。

ベスランドさんは学生寮というのもあって私と一緒に残っている。


「今帰ったら後輩クンと帰れなくなりますよ」


「それは駄目ですね、頑張りましょうかベスランドさん」


と私は突っ伏していた状態から背筋を伸ばして仕事を再開した。

これ以上彼と一緒にいれる時間が減ったら私は学校にくる意味がなくなってしまう。


「歴代最高とまで言われた会長とは思えない手の平返し……貴方って本当にフローレンス・ライシングなの?」


「えぇこれが私ですよ。レイの彼女で元生徒会会長のフローレンス・ライシングです」


「久しぶりに私以上の掌返しを見た気がするわ……でも休日は会えないのかしら?」


「休日だけじゃつまらないんです!! せっかく同じ学園にいるんですから!!」


せっかく同じ学園にいるのに会えるのが休日だけってそれだと同じ学園にいる意味がない。


「え、えぇ……そうね」


「ベスランドさんもそう思いますよね!! 休み時間も隣にいたいのです!!」


「……後輩クンって大変そうね」


ベスランドさんはそう言うと何故か遠い目をする。


「というか最近も休日にあって膝枕してあげると疲れているのかすぐ寝ちゃうんですよ!!

ーー寝顔可愛いから許しますけど!!」


彼が寝る際に見せる無防備な寝顔は見ている私が癒されるぐらい可愛い。彼は寝てしまうと1時間ぐらい起きないので膝が少し辛いがあの寝顔を見れるなら容易いことなのである。


「許すのね……確か後輩クン勉強も最近頑張っているのよね?」


「そうなのです!! 彼が“生徒会長なんだからみんなの模範にならないと”と事で勉強を今まで以上に頑張る様になったんですよ!! 家に帰ったあとは夜遅くまで予習・復習をこなして最近成績が上がってきているので彼女として誇らしいです!!」


役職が付くと人は変わると言うが、彼は今まで以上に物事に取り組むようになった。今まで中ぐらいだった成績は今では中の上ぐらいに上がってきていて、このまま努力し続ければ上位にもなる。


「どうやらそうみたいね、ルネフさんやアルマンダさんからも聞きました。

皆さん自分の事の様に喜んでいたのが印象的ですね」


「フフ、本当皆さんがレイ以上に嬉しそうに話しているのが彼らしいです」


彼の成績が上がって嬉しかったのは当の本人よりもその周りの人達であった。

勿論私も嬉しいし、妹のラウラさん、クラスメイトのルネフさん、トリスケール君、アルマンダさん、そして隣にいるベスランドさんも彼の成績があがると自分の事の様に嬉しいのである。


「そういうのが彼の長所なんでしょうね」



「ーーでも寂しいのは寂しいんです!!」


だからと言って素直に喜べない。

彼が頑張っているのは分かるし尊重したいと思うのけど、構ってくれないのは嫌なのである。


「ライシングさん……ちょっと落ち着きなさいな」


隣のベスランドさんが私をたしなめるがそんな事を無視して続ける。


「だってだって寂しいんです!! 構って欲しいのに構ってくれない!!」


「ーーフローレンスは何をしているのかな……?」


声がする方を見るとそこには引きつった顔をしたレイと呆れた表情をするラウラさんがいた。


「あっ、レイお帰りなさい」


「うん、ただいま帰りました。

ーーじゃなくてさ、何をしているのフローレンス」


「構ってくれないのでベスランドさんに愚痴ってました」


「何しているのさ……先輩すみません、こんな遅い時間まで付き合わせてしまって」


「私は構わないですよ、こういう彼女は新鮮ですから。

それに私は学生寮なのでここから5分以内に帰れます」


「そう言っていただけると助かります……」


「それにしても後輩クンも大変ね」


「……いやそうでも……ないですよ?」


「ちょっとレイ、そこは即答して欲しいです!!」


ベスランドさんからの質問に少し間があったあと、疑問系で答えるレイ。


「私は何も変な事言ってませんよ?

ーーそれより私に言われてそんなに強く言うって事は自分でも自覚あるの?」


「れ、レイが私の事を嫌いになるわけないじゃないですか!!」


(そうですよね、レイが私の事をそう簡単に嫌いになるはずがないものね……大丈夫落ち着きなさい私……動揺したら負けです)


なんて私が思っているとベスランドさんは指を頬に当てながら話し始めた。


「そうねぇ~後輩クンは貴方に甘いけど、結構彼女っていう立場に甘えている気がするけど?」


「た、例えばどういうところですか」


「そうねぇ最近だとお忍びデートの新聞が出た際に、後輩クンの話を聞かないで一方的に問い詰める」


私がレイと“お忍びデート”をした数日後に新聞部が私と彼が写っている写真を載せた新聞を発行した。その際にトリスケール君たちがふざけでレイが謎の美少女とデートというのを私が勘違いしてしまい、霊を尋問したことだろう。


「あ、あれはレイが素直に言わないからです!!」


「あの後お兄様、一時期意識失いましたよね……」


「うん、一瞬自分の身体を上から見たよ……ある意味貴重な経験だね」


「うぐっ……」


自分がした事に心を痛めていてもベスランドさんは続ける。


「そしてアクセル・フォンが引き起こした事件の後なんてずっと“後輩クンを守る”って名目で彼の意思を無視して一緒にいましたよね」


「あ、あの時はレイの身を案じて……」


「あぁラウラが珍しく声を荒げた時ね」


「忘れたい出来事ですね……色々と」


と目を背けるラウラさん。

あの時、彼女があのような事をしてくれたおかげで今、レイと付き合えているのだが私自身も忘れたい出来事なのである。


「ま、まぁアリーヌ先輩、それぐらいにしておきましょうよ」


「そうね私もライシングさんの面白い反応を見れたから良しとしましょうか」


「ベスランドさん……私は貴方のおもちゃじゃないんですよ」


何故だろう、私がレイと付き合い始めると私の扱いは前に比べて雑になって気がする。その分、親しみが増えたので喜ぶべきなのかどうか分からないが扱いが雑だ。


(何ですかね……この素直に喜べない感じは……)


「それじゃあまた明日、ライシングちゃん」


「ち、ちょっとお待ちなさい!! 貴方完全に私の事おもちゃ扱いしてますよね!?」


と小馬鹿にしたかのように言うと彼女は生徒会室を去っていった。


「お兄様……大変ですね……」


「うん、大丈夫慣れた」


「あ、あれ……どうしたんですかお2人とも私の事を可哀そうな子を見るような目で見てきて」


「「……」」


「もう今日は何なんですかーー!!」



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