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僕達は一緒に体育館を出て、旧校舎の中を出口に向かって歩いていた。


「戻ったら皆さんに謝らないといけませんよね……特にラウラさんには」


と申し訳なさそうに言う姉さん。


「うん、そうだね。

まさかラウラがあそこまで感情的に怒るなんて僕も思わなかったよ」


ラウラはあまり感情を露わにして怒らないで感情を極力抑えて怒る。

感情的に怒るのはアクセルの事件と今回の件ぐらいしか記憶にない。

……僕はしょっちゅう笑顔で怒られているが。

もう少し兄に優しくしてほしいと思うのは気のせいかな?


「とりあえず僕も一緒に行くから頑張って許してもらおうよ」


姉さん1人でラウラと話をするよりも僕という緩衝材がいた方が話し合いはスムーズに進むと思ったのだが姉さんは首を振った。


「レイ君の気持ちは嬉しいのですが……ラウラさんとの問題は私1人でどうにかしないといけませんから大丈夫ですよ」


「そう……? 姉さんがそう言うならいいけど」


彼女がそう言うなら僕はそれ以上追及しないことにした。

この2人には2人にしか分からないことがあるんだろうと思う。

それに僕が首を突っ込むのは野暮だろう。


「でも姉さんがあそこまで感情的になるなんて初めてじゃない?」


僕の記憶上だと姉さんがあそこまで感情的になり、その上泣くなんて彼女が幼い頃の駄々をこねる時以外で見た事がない。姉さんは小さい頃から大人びている性格だったので尚更さっきの光景はとても驚いた。


「うぐっ……私としたことが……お姉さん失格ですよね」


としょんぼりする姉さん。

最近はずっと“お姉さんですから”モードだったのでこういう反応は久しい。

個人的にはこっちの方の姉さんが好きなのだが。


「いやそこまで言ってないって……それに“お姉さん失格”ってなんなの」


「私にも事情があるんです……」


「そうなの……?」


「だってお姉さんぶらないと私は私らしくいれないというか……」


「“私らしく”ってそんなの気にしないのに……」


別に姉さんが人前で見せないズボラなところも僕は知っているので今更


「それは駄目なんです!! 私はそうでもしないと……!!」


「そうでもしないと……?」


「あっ……その……うぐぐ……」


「ねぇ本当にどうしたの姉さん?

今日の姉さん変だよ?」


「え、えっと……そのですね……」


「何か僕に直してほしいところがあれば僕直すからさ……これからは僕、姉さんの力になりたいんだ」


「いやそのですね……ある意味、貴方だから言えないんですよね……」


「僕だから? それってどういうーー」


「さ、さぁ早く帰りましょう!! 皆さん待っていますので!!」


と急に早歩きになる姉さん。


「は、はぁ……まぁみんな心配してそうだし帰ろうか」


(あぁ……僕言い損ねちゃった……せっかく覚悟決めたのになぁ……)


僕は生徒会室を出た時の覚悟が無駄になったので少しだけがっかりしたのだが、歩くスピードを速め姉さんの後を追いかけるのであった。




「--本当にごめんなさい!!」


姉さんは生徒会室に戻るやいなや生徒会役員に謝った。

生徒会室にはラウラを始めとして全員が残っていたのは意外だった。


「い、いやレイと会長が無事なら私はいいぞ……じゃなくて大丈夫です」


「まっ、無事なら俺はオールオッケーだ!!」


「フフフ、私もよ」


「私も2人が仲直りしてくれたら大丈夫だぜぃ!!

ーーで2人、旧校舎で何をしていたのか気になりますねぇ?」


とニヤニヤしながら僕に尋ねてくるチャス。

さっきまで少しは日頃の行いに目をつむろうかと思っていたのにその気も失せてしまった。


「チャス……君という人は……話をしたぐらいで特に何もなかったよ」


まぁ正確には泣いている姉さんを抱きしめたというのがあるけど、それを彼女に話そうものなら凄い勢いで詮索してくるだろうし、その流れで今の姉さんに話を振られたらかなり面倒な事になる。

僕がそのように言うとチャスはニヤニヤ顔から一転、飽きれた表情に変わった。


「えぇ……つまんない……損した」


「はぁ……次からチャスの仕事手伝わないからね?」


チャスはたまに生徒会の仕事をサボる。

その際にその尻ぬぐいに向かうのが僕という訳だ。


「ちょい待ちな副会長さんよ

ーーいくらご要望で?」


手で丸を作り、賄賂を渡そうとするチャス。

……こういうところで働く頭を他で使えと心から思う。


「人を買収しようとしない……」


「えぇ……レイって貴族の息子でしょ~だったらこういう事もしないと~」


「……ちなみに何で払うつもりか聞いてもいい?」


「フッフッフッ……それはですな……

ーーウチの定食10回分で!!」


「何となく予想通りだったよ……普通にお金払って食べにいくよ

ーーというかもうみんな帰らない? もう話す内容は無かったわけだし……」


丁度姉さんを追いかけることになったきっかけは会議も終わりになりかけていた頃だった。

それにもうそろそろ下校の時間が迫ってきている。

それにこれ以上この場にいると考えているとチャス以外の人達からの追及が始まりそうだ。


「ーーそうですよ、皆さん。

今日は帰りましょう」


とさっきまで会話に入ってこないで口をつぐんでいたラウラが口を開いた。


「だな!! 帰るか!!」


「うむ、今日は帰宅としよう」


「ちぇ……つまんないの……まっ、そろそろお店手伝う時間だし仕方ないね

ーー命拾いしたね副会長」


「はいはいお好きにどうぞ」




「お兄様と2人で下校は久しぶりですね」


「うん、そうだね」


生徒会室を出たあと、僕とラウラは2人で帰り道を歩いていた。

姉さんはというと今日は僕を屋敷まで送るということはぜず、彼女の屋敷の前で別れた。


「にしてもお兄様」


「ん?」


「お兄様はフローレンスさんにもう少し強く出てもいいと思います」


「あっ……はい……だよね……」


「いくら年上の幼馴染だからといってももう少し強くでてもいいと妹の私は素直に思います。

ーーお兄様のお考えをお聞きしたいですね」


ラウラは相手が年上だとしても自分の言いたい事をはっきり言う性格だ。

逆に僕は言いたいことを人にあまり言えない性格なので、そんな彼女からしてみれば僕は見ていて文句を言いたくなる人間なのだろう。


「はい……ラウラさんのおっしゃる通りです……」


「それにフローレンスさんも少し過保護すぎます。

毎日朝から帰る時まで一緒にいて。挙句の果てに休み時間毎にお兄様のところに行くなんて……うらやまーー

ーーじゃなくておかしいですよ2人とも!!」


道でいきなり大声を出すラウラ。

周りに誰もいなかったのが幸いだが、いたら絶対みんな振り向くだろう。

……というか何か言いかけていた気がするが追及したら油に火を注ぐことになるだろう。


「ど、どうしたのラウラ、いきなり大声出してさ? 疲れてる? 休む?」


「誰のせいでしょうね……!!

最近、寝不足なのもストレスが溜まりに溜まっているのも誰なのでしょうね……!!」


(あっ、ヤバイ……これ結構本気で怒っている顔だ……!!

こめかみがピクピクしているし……!!)


ラウラが本気で怒ると何故か逆に笑顔になる。

そしてこめかみがピクピクしているときはかなり我慢している際のサインだ。


「は、はい……多分9割僕のせいだよね……」


「全部ですよ!!」


「……ですよね、ハイ」


予想通りの返事が返ってきたので少し落ち込む僕。

というかラウラも結構姉さんに甘いと思うんだけどね?


「ふぅ……ところでお兄様」


「は、はい……?」


今度は何で怒られるのだろうかと思っていたのだがラウラの口から出てきた言葉は予想外の言葉だった。


「ーーお兄様はフローレンス様の事をどう思っているんですか?」


「えっ、綺麗な年上の幼馴染だよね?」


「お兄様……私の言っている意味分かりませんか……!!」


再びこめかみがピクピクし始めるラウラ。


「い、いや意味は分かるよ、そりゃ……うん、ごめん茶化しちゃいけないよね……」


勿論ラウラが僕に本当に聞きたい事は何となくわかった。

だけどいきなり言われたので思わずいつも思っている事を言ってしまった。


「はぁ……お兄様はこういうところまでヘタレなのですか……?」


「あ、あの……ラウラさん、それは結構へこむんだけど……」


妹に“ヘタレ”って言われるのは結構心にくるものがある。


「まぁお兄様がヘタレで臆病なのは今に始まったことじゃないですね」


「……散々な言われようだな僕」


妹からの散々な言われように落ち込んでいるとラウラは先ほどまでのイライラしているときの笑顔ではなく穏やかな笑顔になった。


「でも、お兄様。

ーー大事な時にヘタレはいけませんよ?」


「ラウラ……」


「お兄様が生徒会室を飛び出した時に私、何となく察したんです」


「……」


「お兄様にとってフローレンスさんはもう()()()()()()じゃないんですよね?」


「うん、僕はどうやら姉さんが好きみたいなんだ。1人の女の子として好きみたい」


「“みたい”とは……?」


「いや……妹のラウラに言うのも変だけど……“好き”という感情が分からないんだ……」


生徒会室での姉さんと話した際にどうして姉さんと対等になりたかったのかを理解した際に、これが恋とう物なのかと直感で感じたが、本当にそれが恋なのか分からない。

……勿論、前世でなんて人とまともに話したことがないのでそういう気持ちすら感じた事がないが。


「はぁ……では私から1つ質問です」


そんな僕の答えにラウラは呆れながらも聞いてきた。


「ん?」


「フローレンスさんにもし彼氏が出来たらどう思いますか?」


ラウラにそう言われ、頭の中で想像してみた。


(姉さんの隣に、僕以外の男子がいて……それで親しい様子を見せられて……)


その様子を想像するだけで心が少し痛むのを感じた。


(そんな様子見たくない……姉さんの隣には僕がいたい……僕以外の男子が姉さんの隣にいて欲しくない……)


「嫌かな……見たくないと思う……僕が姉さんの隣にいたい」


「それは充分、恋だと思いますよ。

お兄様はフローレンスさんに恋をしています」


「そうなのか……これが恋か……」


ラウラに言われ、これが恋かと理解すると心の中が暖かい感じになった。

だが彼女はそんな僕の様子を見ると


「そんなしみじみと感じている暇がお兄様にありますか?」


「えっ……?」


「自覚したのでしたらすぐ行動するべき、だとお兄様にお借りしました小説に書いてありました。

ーーまさに今がその場面ではないでしょうか?」


ラウラにそう言われ、自分でハッとなった。

まさか彼女に小説のセリフを引用されるとは思ってなかったので個人的に結構意外だったのだが、そんな事を妹に言われて怖気づくなんてカッコ悪い。


「そうだね。よし、ちょっと兄、行ってくるね」


僕は屋敷がある方に後ろを向けた。


「はい、行ってらしゃいですお兄様。

嬉しいご報告をお待ちしておりますね」


「ラウラありがとう!!」


と僕はラウラにレイを言うとさっき来た道を走って戻ることにした。


(姉さん、待っててね)


自分の思いを告げるために僕は走り出すのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ふぅ……ようやく自覚したんですね……全く鈍感にも程がありますよ」


私はお兄様が走っていった方を眺める。

いつの間にかお兄様はいなくなっていた。


「お兄様……」


彼がいなくなった方に手を伸ばすがそこには勿論誰もいない。

出した手はむなしくその場で空を切る。

その光景は分かっていたとは言え、結構胸に来る。


「はぁ……分かっていたとは言え、意外と辛いものですね……」


私はお兄様に肉親以上の感情を抱いていた。

元々叶わないものだと思って日々を過ごしていたが、“もしかしたら”という事があるかもしれないと諦めずにいたが、ようやく諦める事が出来る。


「何故でしょうね……妙に夕焼けが目にきます……うぅ……」


(お兄ちゃん……お兄ちゃんへの恋心は諦めるよ……でも……でも……そんな簡単に割り切れないよ……だって10年以上ずっと……)


そう考えると目から涙が止まらなくなってしまう。

こんな様子を屋敷の人達が見たら心配させてしまう、それだけはいけない。


「今日は少し……寄り道をしましょうか……今日ぐらいは許してもらえますよね」


私はいつもはしない寄り道をしながら普段の倍以上の時間をかけて屋敷に戻るのであった。


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[一言] 嬉しいけど悲しい... ラウラルートまで待たなければ!
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