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嬉しかったんだ

生徒会室を出た僕なのだが……


「見失うの早い……」


姉さんは流石文部両道と周りから言われるだけあって足が速い。

僕も運動神経は良い方だが、姉さんは運動神経の良さにプラスして頭が切れるだけあって気が付いたら完全に見失っていた。

泣いていたのにそこまで頭が働く姉さんは本当凄いと思う。


「くそっ……どこ行ったんだ……」


とりあえず頭の中で姉さんが行きそうな場所を思い出した。


「姉さんが行きそうな場所……庭か……?」


姉さんは学園の名物である庭を結構気に入っており、休み時間に1人でいたい時なんかたよく庭にいる。

……まさに今こそ1人でいたい時なのでは?


「でもいなかった場合かなりのタイムロスだよなぁ……」

ーーって姉さんいた!!」


僕が途方に暮れていると窓から姉さんが旧校舎に入っていくのが見えた。

あの事件以降、旧校舎には入れない様に立ち入り禁止の張り紙が張ってあったのだが姉さんはそんなの無視して中に入っていった。

……あそこまで堂々と校則違反する人初めて見た。


「なんで旧校舎に向かうんだろ……姉さん、生徒会長だよね……ルール守ろうよ……

ーーじゃなくて、とりあえず話をしないと……!!」


それに僕は姉さんを追いかける最中でようやく気付いた気持ちもある。


(まさか自分が本当に主人公みたいな感情の知り方で気づくなんて思いもしなかったなぁ……でも自覚したんだから後は実行するだけだ……やってみよう)


僕はショートカットをするために自分が今いた2階の窓から飛び降りて旧校舎に向かって走るのであった。




「ーー姉さん、いた」


姉さんは旧校舎の体育館に体育座りをしていた。

旧校舎に入ったあと姉さんをまた見失ってしまったが、しらみつぶしに1つ1つ探そうと思っていたところ姉さんが体育館に入っていくのが見えたのでそのまま後ろに気づかれないように付いていった。


「……ッ!? レイ君!?」


僕の姿を見た瞬間、驚いた顔をする姉さん。


「うん、レイ・ハーストンです。

王国内の貴族の1つのハーストン家の長男で高等部の生徒会副会長を務めてるよ」


「そ、それは知ってますよ!! 何でこのタイミングで自己紹介なんですか!!」


「まぁそれもそうだよね、僕も変だって思ったし」


10年以上の付き合いで今更ながら自己紹介をする理由はないだろう。

……では何故したのかと言われると反応に困る。

とりあえず僕は入り口から少しづつ姉さんに近づいていった。


「で、でもレイ君どうしてここに……」


彼女は驚きながらも僕が近づいていくのから逃げようとしない。


「姉さんを追いかけていく時に校舎から旧校舎に入っていくのが見えたからさ」


「でも私、足音とか気配とか全然感じなかったんですが……」


「そりゃ僕、自分で言うのも変だけどさ体術だけならそれなりに出来るんだ。今回はオピニルさんに習った“暗殺者の歩き方”をやってみたんだけどさ、成功したみたいだね」


僕はミラからも体術をよく習うのだが、自分の屋敷にいつもいるからなのかオピニルさんに一番習っている。そのため休日や学校が終わったあとはよく稽古に付き合ってもらっている。

……屋敷の執事長が何故そんな歩き方を知っているのかは疑問だが。


「れ、レイ君って一体何者なんですか……?」


気が付いたら僕は座っている姉さんの前に着いた。

僕が立っているのと彼女が座っているのが相まって姉さんがとても小さく見える。


「でももう少し姉さんは後ろに気を付けた方がいいよ、そしてさ……

ーー隣に座っていいかな?」


「どうぞ……」


姉さんから許可をもらったので僕は彼女の隣に座った。


「ふぅ……にしてもここにくるの久しぶりだなぁ、まぁもう来たくなかったけどさ」


アクセルの事件以降、この校舎は立ち入り禁止になっており僕自身は久しくこの場所に入ってないがここでの流れは今でも鮮明に思い出せる。

……まぁもう出来れば思い出したくない出来事だが。


「……そうですね」


姉さんは僕が隣に座ってからずっと顔を膝に沈めている。


「ねぇ姉さん」


「……何ですか?」


「アクセルにこの場所で追い詰められた時に僕さ死を覚悟したんだよ。

ーーでも、姉さん達が来てくれて本当に嬉しかったんだ」


あの時、姉さん達が来てくれてこの世界に転生してきて一番嬉しいと思えた。


「でも私は未然に防げなくて……お姉さんなのに」


今回の出来事はあの情報通のチャスでも防ぎようがなかっただろうと思う。

逆に予想出来た人はいるのだろうかと気になるが。


「あんなの事前に防ぎようもないでしょ?

多分、チャスでも防げないって」


僕は慰めのつもりで言ったのだが姉さんはさっきまで下に向けていた顔を勢いよく上げた。


「それだとダメなんです!! 私がレイ君を守らないとまたレイ君が怪我しちゃいます!!」


「姉さん……」


「私にとってレイ君、貴方がいるから私は頑張れるんです……貴方がいないと私は……何も出来ない……頑張れない……」


「僕がいないとってどういう意味?」


「貴方がいないと私は……!! うぅぅ……!!」


とまた目に沢山の涙を浮かべて泣きだす姉さん。

……どうやら僕はまた何か彼女の地雷を踏んでしまったようだ、何が地雷か分からないが。


「えっ、ちょっ!? またなんで泣き出すの!?」


「うぁぁぁぁぁああーーん!!」


「だから何で泣いているの!? 僕また何か言葉選び間違えた!? ど、どうしよう……!!」


ここは誰もこない旧校舎の更に奥の体育館、そのため大きな声で泣いても誰に聞かれない。

大泣きしている姉さんを見られようものなら彼女のイメージが崩れてしまうがここなら誰にも見られずに済むが、だが誰もこないということはこの場合どうすればいいかを誰にも聞けないということもある。


「レイくんがいなぃとわたしはぁ……!!」


(どうやって姉さんを落ち着かせよう……? 話術は……ダメだ、僕言葉選び下手なんだった……)


僕はよく言葉選びを間違えてラウラに注意される。

そのため言葉でどうにかしようと出来るものではない。


(なると後は行動で止めるしかないけど……何をすればいいのか……

ーーん……待てよ……ここでよく主人公がやることと言えば……あれか……?)


今まで僕がやってきたギャルゲーの主人公が泣いているヒロインに対してしてきたことで自分に出来そうな事があることを思い出した。これならそこまで怒られないと思う。


(姉さん……ごめん……嫌だったらあとで文句を言ってね……!!)


と僕は心の中で詫びを入れ、自分が考えた行動を実行するのであった。


「ごめん、姉さん!!」


「えっ……」


僕が行った行動、それは……


「レイ君……こ、これは!?」


隣に座っている僕の方に姉さんを抱き寄せて抱きしめることだった。

いきなりこんなことをされたら普通の人は驚くだろう、それには姉さんも変わらないようでさっきまで泣いていたのに目を大きく見開いて驚いていた。


「ごめん姉さん……文句は後で聞く……いえ聞かせていただきます……」


「わ、私は文句言いませんけど……レイ君はなんでそこまで怖がっているんですかね?」


「ハハハ……僕にも事情があるんだ……察して欲しい……です」


だって普通好きでもない男子からいきなり抱き着かれたら、普通“変態!!”って言われてもおかしくない。何なら僕は堀の中にいてもおかしくないだろう。


「姉さん、大丈夫」


僕の腕にいる姉さんに優しく語りかけるように話す。


「えっ?」


「僕はいなくなったりしないよ」


「れ、レイ君?」


「あの時はごめん、姉さん達を心配させちゃって」


「……」


“あの時”というのがアクセルが使った魔法からみんなを庇った時のことだと分かったらしく姉さんは悲しそうな表情を浮かべた。

……彼女にこんな表情をさせたと思うと自分の行動に深く反省するしかない。


「あいつが魔法を撃った時、みんなに当たったらって考えたら僕さ今までにないぐらい恐怖を感じたんだ」


アクセルが魔法を放ったのが見えた瞬間、本能で“マズい”と思って、みんなの前に立った。

……まぁその後ものの見事に直撃して僕は吹っ飛んだわけだが。


「レイ君……」


「ほら僕って前から身体が丈夫だけが取り柄だったから何とかなるかなって思ったら……まぁ姉さんも周知の事なんだけど……小説かよって思うぐらい吹っ飛んだよね僕」


「あ、あの時は私心臓が止まるかと思って……!!」


場を和ませるつもりで言ったのだが今の状況では逆効果の様である。

……本当に僕って言葉選び下手なんだなと思う。


「ごめんごめん、冗談言って良いタイミングじゃなかったよね。

ーーでもあの時さ、僕嬉しかったんだ」


「嬉しかった……?

ーーひょっとしてレイ君って痛いのが好きなんですか?」


なんか姉さんから変な性癖を持っている人間と勘違いされかけている。


「そんな訳ないでしょ……僕が嬉しかったのはみんなを守れたことなんだ、断じて痛いのがって訳じゃない」


「みんなを守れた……?」


姉さんは僕の発言に驚いているようである。


「うん、みんなを守れたことだよ。

いつも守られてばっかりだった僕でも誰かを守れることが出来るんだなって思えて嬉しかったんだ」


僕がこの世界で幼い頃、魔法が使えないことで同学年から結構言われたりしたのだが、当時の僕は一々対応するのが面倒だったので無視をしていたが姉さんやラウラはそんな僕をいつも守ってくれた。

それに転生する前の世界でも臆病な性格でいじめられっ子の僕を兄はいつもまるでヒーローの様に助けてくれた。


(改めて僕って守られてばっかりなんだな……今も昔も)


そんな背景もあってか僕は、この世界では今度こそ誰かを守る立場になりたいと思って身体を鍛えた。その結果、体術ではそれなりに戦えるようになった。


「レイ君……」


「だから大丈夫だよ姉さん、これからは自分の身ぐらいは自分で守れるよ

ーーそれに今度は僕が姉さんの力になりたいんだ」


「ふふっ……貴方はすっかり大きくなったのね……私の予想以上に大きくなっていたのですね」


「まぁね……とりあえず帰らない? みんな心配しているだろうしさ」


と僕は立ち上がると座っている姉さんに向かって手を伸ばした。

姉さんは苦笑いしながらも僕の手を掴んで立ち上がった。


「レイ君の言う通りですね、帰りましょうか」







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