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たまにはお菓子

 とある休日、僕は自分の部屋でミラから借りた本を読んでいた。今日は両親はデートとのことで家にいるのは僕、ラウラと数人の使用人だけだ。僕は自室でミラから借りた小説を読んでいたのだが、これが結構良い。ミラって小説を選ぶセンスあるんだな……と1人で思っていた。


 小説をベットで寝ながら読んでいると……


コンコン


 誰かが僕の部屋のドアを叩く音が聞こえた。


「はい?」


「お兄様」


 ドアの向こうからラウラの声が聞こえた。


「ラウラか、入っていいよ」


「ありがとうございます、では」


 とラウラは部屋のドアを開けて中に入ってきた。今日のラウラはいつものように黒いワンピースを着ていて、銀色の髪とのコントラストが綺麗だ。


「お兄様は何をされているのですか?」


「僕はミラから借りた本を読んでいるよ。ラウラは?」


「実はお願いがあって……」


「ラウラからお願いって珍しいね、妹のお願いなら断る理由がないからいいよ」


「ありがとうございます。そ、そのお願いなんですけど……」


「うん」


「お兄様の手作りのお菓子が食べたいな……と思いまして……」


「なんだ、そんな事。いいよ、何食べたい?」


「いいんですか……?」


「さっきも言ったでしょ、妹の頼みなら断らないって」


「ありがとうございます……流石お兄様ですね」


「そうと決まればキッチンに行こうかな」


と僕はラウラを連れてキッチンに向かうのであった。その際に 


“会長やミラ呼ぼうか?”


なんて言ったらラウラは首を横に強くふり


「い、いや流石に先輩方に悪いですよ!? だ、だっていきなり呼ばれても迷惑かもしれませんし!! ま、また今度にしましょう!!」


 いつも以上に強く言われたので呼ぶのを止めた。


(……ラウラって2人とも仲悪かったけ?)


 なんて思ったがまぁいいかと僕は追及するのはやめた。




「よし、じゃあ始めますか」


 と僕はお菓子の材料を取り出し、手慣れた様子で始めた。今回作るのはある意味ラウラと思い出が多いクッキーだ。僕は今まで彼女に様々なお菓子を作ってきたのだがその中でもクッキーは彼女のお気に入りらしい。


「相変わらずお兄様ってお菓子を作る時の手際って本当に良いですよね……」


 ラウラは感心したかのように呟く。


「ハハッ……」


 なんて前世のお菓子を作り始めての10年とこっちの世界に転生してからの14年の合わして24年のお菓子作りの腕があるのだから慣れるのも当たり前だろう。まぁそんな事を知らないラウラは僕を純粋に尊敬の眼差しを向けてくるのが少し良心にくるものがある。


「さて、あとは焼くだけ……」


「惚れ惚れするぐらいの手際の良さですね……」


「取り柄これぐらいしかないからね……最近学園だと僕の印象は問題児扱いだし……」


 ミラの件で僕は日々教師陣から問題児の烙印を押された。

……弁明したいのだが弁明するとミラがやったことになってしまうので我慢する。


「あれはお兄様が悪いですからね……どうせ誰かを庇ったんですよね」


「あ、あれ……ラウラ?」


 どうやら会長に続きラウラにもバレているみたいである。


「お兄様……妹の私が分からないと思っていたのですか? それはお兄様はよく変な行動をしますけど……」


「よく変な行動しているんだ僕……」


「自覚を持ってくださいお兄様」


「はい……善処します……」


「それで話を戻しますが、お兄様は変な行動をしますけど……それっていつも誰かのためですよね? この家に慣れていない私のためにクッキーを作ってくれたり、今回の件も誰かの失敗を庇おうとしたんですよね? 今回はルネフ先輩をですか?」


「全く……ラウラには隠し事出来ないね……」


「当たり前です、何年お兄様の妹をしていると思っているんですか? そもそも私にお兄様が隠し事出来るとお思いですか?」


 賢いラウラに馬鹿な僕が隠し事に出来るはずがない。


「ですよね……というかもうラウラが当主になったら?」


「は、はい?」


「いやだってラウラの方が僕よりも優秀だし、僕よりもラウラがハーストン家の当主に相応しいと思うんだよな……」


「で、でも私は分家出身ですし……なによりもお兄様と跡取り争いなんて私は嫌なので……」


「大丈夫だよラウラ、僕喜んでラウラに当主の座譲るから!! だから争いはないよ!!」


「……そこは嘘でも張り合ってくださいお兄様」


 ラウラに呆れられた。


「えぇ……僕は最善の策を考えていたんだけど……ダメだった?」


 個人的に彼女が当主を引き継いでくれたらハーストン家が繁栄すると思うのだが、なんて思っていたらラウラに大きなため息をつかれた。


「はぁ……お兄様はもう少しハーストン家の次期当主としての自覚を持ってください」


「じゃあ僕が当主になったらラウラも一緒に支えてよ、僕の隣で」


「え、え、えっ!?」


 と何故か顔を真っ赤にして驚くラウラ。


「どうしたのラウラ?」


「い、いやお兄様!! そ、それがどういう意味か分かっているんですか!?」


「ん? 僕何かマズい事言ったかな?」


 僕個人はラウラみたいな優秀な妹がいれば僕も人並に仕事ができると思っての発言だったのだが、ラウラは僕の顔を見ると大きくため息をついた。


「いや……マズくはないんですよ……マズくはね……でも……分かってないんですよね……」


「ラウラ体調悪い?」


「別に悪くないですよ……寧ろ体調は絶好調です……」


 その口調で元気だと言っても説得力皆無だと思うのは気のせいか。


「なんか言っている内容と行動が一致してないよ……クッキー食べるの止める?」


「いえそれは食べます!!」


「あっ、クッキーは食べるのね」


 なんていう会話をしながらクッキーが焼きあがるのを待っていた。



「本当にお兄様のクッキー美味しいですね」


「気に入ってくれたようで嬉しいよ」


 無事に焼きあがったクッキーをラウラが入れたお茶とともに食べる僕ら。


「にしてもラウラって昔から変わらないよね」


「何がでしょうか?」


「いやクッキーを食べるときのしぐさだよ。昔からラウラってクッキーを両手で持ってむしゃむしゃと食べるよね」


「なっ……!!」


 とまた顔を真っ赤にするラウラ。どうやら自分でも自覚はあったようだ。


「いいじゃないですか……別に誰もいませんし……お兄様には今更という気がしますし……流石に人がいたら気をつけますけど……」


「あっ、じゃあ人の前では気をつけているんだ」


「クッキーを食べないように気を付けてます」


 まさかのクッキーを食べるという前提をやらないことで人前でバレるのを隠しているとは、流石我が妹、やることが結構極端だ。


「そっちに気をつけるのね……」


「お兄様も直した方がいいと思いますか……?」


「えっ、別にいいんじゃないの? だってそんなの気にしたらラウラ、大好きなクッキー食べなくなるでしょ? 変に隠そうとして人前でクッキーを食べないぐらいだもの」


「否めません……」


 ラウラは思い当たる節があるのか落ち込むラウラ。


「だったら僕は今のままで笑顔で食べてくれた方が嬉しいな。ほら、作っている方としては食べている人が笑顔だと嬉しいからさ」


 やっぱりお菓子作って、それを食べて笑顔で食べてくれる人がいると嬉しい。


「お兄様……」


「あとクッキーを食べているラウラって見ていて可愛いんだよね。なんか小動物を見ている気がして」


「なっ……!! 可愛い……!?」


「だって可愛いじゃんラウラ。

ーー流石自慢の妹だよ」


「い、妹……」


「あれラウラ? 僕らって兄妹だよね? 僕が兄でラウラが妹で」


「あ、あってます……あってますけど……はぁ……そうじゃないんですよね……」


 とこの後、ラウラは何かをずっと呟いていたが、それでもクッキーをいつものように両手で持ちむしゃむしゃと食べていたのであった。

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