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私という人間


 “フローレンス・ライシングという人間をの印象は?”


 という質問を学園の生徒に聞くと大体が私を称賛する言葉だ。陰では私の事を悪く言っているかもしれないが表立っては言われていない。


 自分で言うのも変だが恵まれている方だと思う。王国内でも名家と知られているライシング家に家の歴史上類を見ない魔力適正を持って生まれた私は生きていて殆ど苦労をしたことがない。

 


 正直私自身感情の起伏が少ないほうだ。変に浮かないように周りに合わせて驚いたり、笑ったりぐらいはするが基本的に感情はかなり冷めている。周りの同級生を始めとして大人までもが私のご機嫌取りをしようとしているのを子供ながら冷めて見ていた。



 ただそんな中1人だけ異質と言える子供がいた。その子供の名はレイ・ハーストン、ライシング家と並ぶ有力貴族の長男。彼の父親はとても有能な人物であり、王国には欠かせない人物なのだが



ある日


「お~い、姉さん」


「あら、レイ君」


 


「姉さん凄いね、今回もテスト一位だったんでしょ?」


「ふふ、これぐらいお姉さんですから当たり前ですよ。

ーーところでレイ君は?」


 私がそう聞いてみると彼は私からゆっくりと目を逸らす。その反応で今回のテストがあまり良くなかったことが分かる。


「……が、頑張ったよ?」


「コラ、目を逸らさないの。今回はどれぐらいの順位でしたか?」


「半分より少し下……いやでも前回よりも順位は1つ上がったんだよ?」


「でも半分より下なんですよね?」


「……返す言葉がございません」


 そんな優秀な父親から生まれた彼だがお世辞にも優秀な人物とは言えなかった。成績はこそ真ん中より少し下であり、それに加えてこの世界で人として扱われる最低限の能力“魔力”が一切無かったのだ。




 魔力がないということは魔法が一切使えない。それはこの世界では致命的なことであった、幸いにも親が国内有数の貴族ということもあり表立っていじめられたりはしていないが、陰では色々と言われてきたことを私は知っている。


「生徒会終わったあとで勉強見てあげますから」


「本当!? 助かるよ」


 だがそれでも彼はひねくれたりせずまじめに


 そんな彼の前だと不思議な事に年頃の女の子らしく振舞える。


ーー彼の突拍子もない言動に笑ったり


ーー彼が別の女の子と親しくしていたら嫉妬するし


ーーたまに見せる彼のカッコいいところを見て惚れてしまう。


 そんな自分を見て人並に感情の起伏があるのだと実感できた。



 

 色々な事があって彼と付き合う事が出来た私。彼を狙っている子は沢山いたのに私を選んでくれた時はとても嬉しかった。初めてからの毎日はとても楽しく、今までで一番充実してた日々であったと思う。


ーー街中でお忍びデートをしたり


ーー海で一緒に遊んだり


ーー夏祭りデートもしたり


 更にアクセル討伐の件があり学内でのレイの評価が上がったという嬉しい出来事もあった。ただその際は彼が人気者になりすぎて私との時間が減ってしまい若干ワガママになってしまうこともあり彼を困らせた。


 そんな幸せの中、不穏な知らせが届いた。あのアクセル・フォンが脱獄したという知らせである。最初は学生1人ぐらいすぐ捕まるだろうと私の父含めてそう思っていた。だが実際は誰も歯が立たず、私の父を始め全員返り討ちになってしまい王国全体が暗い雰囲気になってしまう。


 そんな中レイはいきなり自らアクセル・フォンと戦ってくると言い出した。私は慌てた、父を含めてとして大人が勝てなかったのに学生の貴方が勝てるはずがないと。


 だが彼は私にこう答えた。


“アクセルと同じく僕はこの世界の人間じゃない。

それに僕は性格に言うとレイ・ハーストンじゃないんだ”


“僕は元々別の世界の人間なんだ。で、アクセルも僕と同じ世界の人間”


“僕は簡単に言うと本物のレイ・ハーストンではないんだ。

ーーレイ・ハーストンの名前と身体をもらった別人なんだ”



最初は何を言っているのか分からなかった。だが話を聞いていく中で徐々に怒りがこみあげてきた。


ーー今まで別人としてどんな気持ちで生きていたのか?


ーー私達を騙していたのに何とも思わなったのか?


そして私は彼に対して一番言ってはいけないことを言ってしまう。


「貴方なんて……貴方なんて来なければよかったのに!!」


 口に出した後、しまったと思ったが遅かった。彼は今まで見た事がないような辛そうな表情をしていたが、すぐ穏やかな笑みを浮かべる。私が手を伸ばすも彼は既に後ろに下がっていたので届かなかった。そして穏やかな笑みのままこう告げる。


“フローレンス・ライシングさん、僕は君を愛している。愛する人がいる世界を僕は命に代えても守ってみせる”


“じゃあね、フローレンス”


 これが彼と交わした最後の会話だった。いや、会話として成り立ってなかったのかもしれない。だって私は何も言えなかったのだから。あの時に戻れるならしっかり彼と会話をするべきだったのだろう、今更遅いだろうけど。



 “レイ・ハーストン行方不明”


という報道が流れるのは、その会話から数日後であった。


 レイがそんな訳ないと信じられず、アクセルと戦っていた場所に毎日足を運び必死に探した。探して謝らないといけない。


 ただどんなに探しても彼は見つからず、日数だけが過ぎていった。

 



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