郊外の戦い
レイがアクセルとの一騎打ちをしている頃、王都西部……
「もう少しだ!! このまま勢いで押しつぶせ!!」
「「ハッ!!」」
レイの父親であるアーク・ハーストンは自身も戦いながら前線で指揮を取っていた。レイがアクセル・フォンと戦っている同時刻彼と彼の悪友で騎士団長のカイン・ルネフはアクセル陣営の兵と国境付近でそれぞれ戦闘中である。
戦い自体はアクセルがいないことが幸いとしてなのかアーク・カイン率いる王国軍が戦いを優勢に進めており、もう少しで決着がつきそうな流れである。
(こちらはケリがつく……レイちゃん頼んだよ……!!)
“アークさん、聞こえますか?”
“どうしたアルク”
通信魔法で声をかけてきたのは王城で全体の指揮を取っているアルク・ライシング。息子の交際相手のフローレンス・ライシングの父であり、学園時代の後輩兼悪友である。彼の魔法は戦闘よりほ補佐向けなのでこういう通信系などが得意。
“カインさんの方面は我々の勝利で終わりました。周辺の索敵を行いましたが存在なしです”
“流石カイン、伊達に騎士団長に最年少で就任してないな”
彼の強さは学園時代散々共にやらかしてきたこともありよく分かっているので元々心配していない。それでも終わったと聞くと少し安心したのは確かだ。それはアルクも同じだったようで声音は安心したかのような声音である。
“えぇカインさんですから、アークさんの方はいかがですか?”
“もう少しでケリがつく。終わり次第、周辺の残党を片付けていく”
“分かりました、最後まで油断しないでください。忘れていないと思いますが、アークさん、カインさんはどちらでも欠けたらこの戦い、我々の負けですからね?”
“分かっている、私はここで倒れるつもりはない。
ーーレイちゃんとフローレンスさんの子供をみるまでな”
“えぇ私も楽しみです、レイ君とフローレンスの子供は”
とお互い冗談交じりに自分の子供達の将来を語る。2人ともかなりの親バカなのである。
“終わり次第、また連絡する”
“かしこまりました、嬉しい報告期待します”
そう言って通話を切る。改めて目の前の戦局をみるとほぼ決着がつきそうだ。ここが終わり次第、残党狩りを兼ねてレイが戦っている旧遺跡に向かおうと決める。旧遺跡は学園時代に学園行事で見に行った以降行ってはいないが場所は分かる。
(何故旧遺跡なんだ……奴は何であそこを選んだ?)
噂だとあの遺跡には宝物が封印されているとか色々とあるが実際に何があるのかを知っているのかは誰も知らない。ただ何かの理由があってアクセルはあの場所を戦いの場に選んだのだろう。レイは遺跡がどういう場所なのか知っていたのだろうか、と頭の中に疑問が思い浮かぶ。そう思うのには理由がある。
(あの子は時々妙なところで鋭い……)
レイは親の贔屓目を入れても頭が良い方ではなく、勘で動く性格の人間だ。彼の長所として一番上がるのは群を抜いている身体能力なのだが、アークは息子の優れているところは身体能力よりも、その勘だと思っている。勿論身体能力も素直に凄いと思うがまるで未来の事を知っているのであろうかと思うぐらい鋭いことがある。
(今回の事もレイちゃんは何か勝算があって1人で挑んだんだろう……そうだよね?)
彼に真意を問いただすためにまずはこの場を治めないといけないと思い、一気に攻め落とすように部下たちに指示を出す。本来はレイが戦っている場所をアルク経由で教えてもらおうと思ったのだが、旧遺跡周辺には特殊な魔法が張ってあるのか全く見れないという返事をもらい渋々諦めた。ただ戦いが終わり次第、狼煙を挙げるように言っておいたのでそれまでは我慢するしかない。
「アーク様!!」
「何だ?」
「あちらをご覧ください!!」
「ん?
ーーあれは……!?」
アークの部下が指さした方を見ると、旧遺跡がある方面から赤い狼煙があがっていた。その煙を見た瞬間、アークはこれを好機として一気に畳みかけることに決める。赤い狼煙というのはアークが息子に持たせたものでアクセルとの戦いに勝利した場合は赤い狼煙を挙げろと伝えていた。その狼煙が挙がってきたということは自分の息子がアクセルに勝ったという事を意味している。
「聞け皆の者!! 我が息子レイ・ハーストンが国賊であるアクセル・フォンに勝利した!!
あの狼煙は我が息子に勝利した際に挙げるように伝えた狼煙である!!」
「「おぉ!!」」
“レイがアクセルに勝利した”
それを聞いたハーストン家の私兵はところどころから歓喜の声が上がる。この私兵達、アークに負けず劣らずレイの事を溺愛している。今回の彼1人で強敵であるアクセルに挑みに行ったと聞いた際には私兵のほとんどが加勢しに行こうとしていた。その後、アークとオピニルの説得もあり、別の場所の戦いでレイを応援することにしたのである。
逆に戦意を削がれたのはアクセル側の陣営である。アクセルという旗印が負けたと分かった途端、一気に崩れた。元々数と個々の戦力でハーストン陣営に負けていたのだが、更にアクセルが負けたと分かると蜘蛛の子を散らすように散り散りになったところをハーストン陣営にとどめを刺され、王都西部の戦いは幕を閉じる。
「敵、無効化完了しました」
副官の連絡をもらったアークは一度王城に戻ることにした。
「分かった、そのまま王都に連れていーー」
ドカーン!!
「何だ!?」
突如遠くから聞こえた爆発音に敵味方構わず驚く。音がした方をみると、丁度先ほど狼煙が挙がっていた旧遺跡の方向であった。
“アークさん!!”
“アルク一体何が起きた!?”
同時期に城で指揮を取っているアルクから通信が入ったので応答する。声音的にアルクも驚いているようだ。
“レイ君達が戦っている旧遺跡方面から巨大な爆発音とともに大きな爆発がしたようです。原因は不明ですが城にまで音が聞こえてきたのでかなりの威力だと思われます”
“今から旧遺跡に向かう、道案内頼む!!”
“分かりました!!”
アークはそう言い、部下達に敵兵の移送を頼むと単騎、馬を駆りだし旧遺跡に向かう。アルクからの案内を頼りに最短距離を今出せる最高速度で駆けづづけた。
(レイちゃん無事でいてくれ……!!)
彼にとってレイを始めとする家族は自分の身を犠牲にしても守りたい物であり、彼自身の生きがいに近いものである。まだアクセルが学生だった頃に一度レイはアクセルが雇った者達によって暗殺未遂が起きた際は事件が発生したと聞いたときは政務を放り投げて屋敷に戻ったぐらいだ。
心配を胸に抱えながら駆け続けて、10分……目の前に広がっていたのは驚愕の光景であった。
「嘘だろ……」
巨大な石がところどころに崩れておりかつてこの場所にあった遺跡の残骸が広がっていた。この景色を見て、そう言えばこの周辺の地面は元々脆かったと学園の授業で習っていたと思い出すアークであったが、気を取り直してレイを探すことにした。
「レイちゃーーん!! いるなら返事くれーー!!」
と付近に聞こえるように大声で叫ぶ。旧遺跡といっても素材が石で作られているのでそれなりの強度があるはずなのだが遺跡の多くが崩れており、その爆発の威力を物語っている。この威力の爆発に巻き込まれたら普通は……と嫌な予感が頭をよぎったが親の自分がそう思ってはいけないと思い、捜索を続ける。時間が経つにつれ、城に敵を移送したハーストン家の私兵が捜索に続々と合流し、捜索の手は増えた。ただ……
「皆の者、くまなく探せ!! 息子が身に着けていた服の破片でも何でもいい小さな手がかりでも見つけろ!!」
「「はっ!!」」
アークを含めて50人ぐらいで遺跡、その周辺を探す。彼らは日付が変わっても探し続けた、次の日には正式に国からの捜索隊も合流して探す。
--だがいくら、どれだけ探してもレイ・ハーストン、アクセル・フォン両者の手がかりを見つけることは出来なかったのであった。





