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これにて

 僕が反撃に転じてしばらくして……


「おらっ!!」


 僕が剣に力を込めて打ちこむとアクセルはそれに合わして剣で庇った。


「くそっ……!!」


 だが完全に威力は消せなかったのか後ろに下がるアクセル。


 徐々にだが僕の方が優勢になり始めてきた。やっぱり予想外の事が起きて混乱しているのだろうが、それはいつまでも続くとは思わない。なのでここは一気に畳みかける。


「どうした? さっきまでに調子はどこに行ったんだい?」


「うるせぇ……雑魚のくせによぉ!!」


ガンッ


「でもその雑魚に君は押され気味だけどねっ……!!

ーーボマーフレイム!!」


 と僕は片手にをアクセルに向けると手から爆発を発生させた。この攻撃は攻撃範囲こそ狭いが、剣で打ち合える距離なら問題がないし威力は炎系の魔法の中でも上位である。アクセルは僕の手が前方に出た瞬間に何かを察したのか急いで後退しようとしたがほんの少し僕の魔法の発動が早かったようだ。


「ゴハッ……!!」


 そのまま後ろに吹っ飛んでいったアクセル。直撃こそ避けただろうが苦痛に苦しむ顔からは中々に刺さったのだろう。


「何でだ……何で俺が負けているんだ!? 悪役のお前に!! 主人公の俺がぁ!!」


 駄々っ子のように叫ぶアクセル。それに対して僕は皮肉を込めて言う。


「“主人公”か……君はその称号にあぐらをかいて今の状況ってわけだろ? “主人公”ってゲームの中での地位に満足して与えられた能力を磨こうとしなかったのにね」


 こいつは元の魔力の高さ、使える魔法の数は群を抜いていたので努力すれば僕なんかかすり傷1つ負わせることが難しかっただろう。ただアクセルはそれをしなかった。しなかったから僕に今ここまで追い詰められている。


「うるせぇ!!」


 そう叫ぶと剣を杖替わりにして立ち上がった。そしてアクセルは高速でこちらに向かってくるので剣を構える。


 カンッ!! カンッ!!


 再び剣同士が当たる音が響きわたる。


「悪いけど……この世界を守るためにお前を倒す!!」


「たかがゲームの世界でマジになるのかよお前はよぉ!!」


「“たかが”じゃない!!」


 ガンッ!!


 僕は力を込めて剣を叩きこんだ。アクセルは押され気味だが何とかこらえている。


「この世界の人達は皆必死に生きている!!」


 ガンッ!!


 更に強く叩きこむ。先ほどよりも顔をしかめるアクセル。


「その生活を身勝手に僕達は邪魔をしてはいけないんだ!!」


「うるせぇ!! 邪魔すんじゃねぇーー!!」


 僕が再度打ちこもうとした際に、アクセルも構えていた剣をこちらに向けて振りかぶってきた。お互いの全力を乗せた剣同士が重なった瞬間……


 キィン!!


「「なっ……!!」」


 カラン、カラン……


 お互いの剣は手を離れてそれぞれの後方に飛んでいった。お互いの全力を乗せた剣の勢いは疲労困憊の僕達の握力では抑えることが出来なかったのだろう。それぞれの剣はすぐに取りにいけないような距離に弾き飛ばされた。


 剣が飛ばされた僕達は考えることが同じだったらしい。剣が後方に飛んでいくのを見た瞬間互いに拳を握り、相手に向かって振りかぶる。僕はこの一撃に残りの全力を注ぎこむ。互いの全力を乗せた拳がうなり声とともに放たれた。


「「うぉぉぉぉーー!!」」


 振りかぶった拳は相手の顔目掛けて飛んでいく。見た限りほぼ同じスピード、パワーのパンチ、多分だがまともに当たればお互い倒れるだろう。そして……


 ゴキッ


「「ぐっ!!」」


 ほぼ同時にお互いの顔に拳が当たり、鈍い音が響き渡る。もろに受けたので目の前がチカチカするし、口の中が切れたのか血の味がする。


(くそっ……予想以上に今までのダメージが響く……!!)


 得意な肉弾戦になったとは言え、今まで高火力の魔法を受けていたり、戦いの中での疲労は確実に僕の身体に蓄積されていたようで、いつもなら耐えられそうなアクセルのパンチも脳が大きく揺らされて頭の中が真っ白になるぐらいの威力になっている。視界もぼやけてきて、少し意識が遠ざかってきてーー



“レイ”


(えっ……)


 ふと頭の中に響いた女性の声、その声を僕はよく知っている。


(フローレンス……?)


 その声は僕がこの世界で一番愛する人、フローレンスの声であった。勿論彼女はこの場にいない、彼女の屋敷にいるはずだ。何故今、彼女の声が聞こえたのか分からない、ただ……。


“無事に帰ってきてください”


「ーーッ!!」


 その声は意識を失いそうになった僕を呼び戻すことに充分であった。


ダンッ!!


 思いっきり足を地面に叩きつけて踏みとどまる。一瞬飛びそうになった意識を押さえつけ再度拳を握り振り絞った。目の前のアクセルを見るとまだダメージから復帰できて無さそうである。これを好機とみて勝負をつけることにした。


「これで終わりだぁーー!!」


 僕の拳はダメージから復帰できていないアクセルの頬を再度とらえた。勢いのまま振り下ろした。


「ごぶぁぁっ!!」


 アクセルはそんな叫び声を挙げながら後方に吹っ飛んでいき、壁に激突した。いつもならしっかりと体勢を整えて放つので今の体勢はめちゃちゃでいつもより威力は下がっているだろうだがあいつを再起不能にさせるには充分だったようだ。


「認めねぇ……こんなの……」


 なんて言っているが、立ち上がって反撃してくる様子は一切なく声を出すので精一杯なのだろう。まぁそう言う僕も立っているのが限界なのだが。


「あっ……そう言えば忘れない内にやっておくか」


 とポケットから飴よりも少し大きめの球体を取り出す、そしてそのまま上空に放り投げる。放り投げられた球体は一定の高さに上がると球体は小さく破裂し上空に赤い煙を漂わせた。


「何だよ、それ」


「これか? これは戦いが終わったことを伝えるための狼煙さ。今の僕にはお前を捕まえることが出来ない、それにお前には沢山の仲間がいることが分かっていたから」


 事前に父さん達とオピニルさんには話していたことであり、この狼煙を上げたら同時期に戦っている父さん達の方の戦いを有利に進める事が出来る。



 ドゴォン!!


 突如爆発音が響き渡る。


「お前一体何した!?」


 そう言うとアクセルは勝ち誇ったかのような表情を浮かべて言う。


「はぁ? この遺跡に仕掛けておいた爆弾を起動させただけだ」


「爆弾だって!?」


「もう少しでこの遺跡ごと吹き飛ぶ!! 俺とお前はここで終わりなんだよぉ!!」


 先ほどの爆発音からするにかなりの威力を伴っている。そして今僕達がいる場所は廃遺跡、“廃”がつくとなると誰も使っていないので場所自体が大分廃れている。となると、さっきの爆発でこの遺跡自体がいつまで保つか分からない。


「元々使うつもりはなかったんだなぁ。だけど残しておいて良かったぜぇ?

ーーレイ・ハーストン、お前を葬れるだからなぁ!!」


「そんなことしたら動けないお前だって死ぬんだぞ!?」


「お前を殺せるんならどうだっていい!!

ーーさぁ逃げねぇとお前も道ずれになっちまうぞ?」


 とニヤッとした表情を浮かべるが、声のトーン的に普通じゃない。最早やけくそなのだろう。


(お主マズいぞ!?)


 例のクソ神が頭に直接言ってくる。勿論それが分からない僕ではない。


「分かっている、いったん逃げよーー」


 バタンッ


「あ、あれ……」


 きびすを返してこの場から逃げようとした瞬間、突如倒れ込む僕。


(どうした!?)


「どうしてだろう……力が入らない……」


 この場から逃げようと思い、足を動かすが力が入らない。それどころか身体全体に力が入らないのである。


「あっ……しまった……僕もう限界だったんだ……」


 一度戦闘不能寸前だったのを夢の世界でご先祖様から発破をかけられてそこからは最早気力だけで立っていたのだ。だが何故ここで切れるのかと恨めしく思う。


「へっ、バカが……!! 自分の身丈を超えたことをするからこうなるんだよ!! シナリオ通りに死ね!!」


 アクセルがざまぁみろと言った口調で言った。

 今あいつがどんな表情をしているのか分からない。それよりも今はこの場から逃げないといけない。


「くそっ……」


 数か月前に死んでいないのでシナリオ通りじゃないと反論したいのだが、今はそんな反論する力もない。今僕達がいるのは入り口からそこまで離れていない、普段の僕なら全力で走ればすぐ入り口付近に行ける。だが満身創痍の僕にその距離はあまりにも遠かった。


「僕はまだ……やらないといけないんだ……」


 せっかく諸悪の根源を倒したのだから学園の学園祭を開催したい、アル達とバカ騒ぎをしたい、父さん達と楽しい会話をしたい……でもまず僕はフローレンスに謝らないといけない。


“そもそも何でこの世界に貴方達が来たんですか!! 貴方とアクセル、どっちが原因でこの世界に来たのかその理由は知りませんが、貴方達が来たからお父様や私の大事な人たちが怪我をしたんですよ!!”


 許してもらえるか分からないし、最悪別れることになってしまうかもしれない。でも別れることになったとしても僕は彼女にとって許せないことをしたのだからしょうがない。それでも僕は別れる前に、最後でもいいから彼女の姿を見て謝りたいのだ。


「う、動け……僕……!!」


 とりあえず腕を動かして匍匐前進をするように移動しようとした。だがその移動スピードはいつもに比べてあまりにも遅いものである。それでも僕は動かす。


「ま、まだだ……僕は……」


「お、おい諦めろって!? その速さで爆発前に逃げれるわけないだろ!?」


「うるせぇ……僕はレイ・ハーストンだ……ハーストン家の長男……それに学園の生徒会長……」


 少しずつでも移動する。


 ドゴォン!!


 再び爆発音が耳に入る。先ほどとは違う場所なのか同じ場所で爆発したのか分からない、だがそんなことはどうでもいい、今は少しづつでも前に進むのだ。そしてこの場から逃げないといけない。


「頑張れ……僕……!!」


 動いている中でも爆発音が耐えず耳に入ってくる。一体どれだけの爆弾を仕掛けていたのか気になるが優先すべきは今、この場から逃げることである。


 さっきから爆発の衝撃でがれきや石が当たったり、かすったりとでところどころの血が出て、その痛みで動きが止まりにそうになるがフローレンス達に会いたいという信念で身体を動かす。


(僕はまだフローレンス達に会いたい……!! まだみんなと生きていたいんだ……!!)


「ちっ……いい加減諦めろ!!」


 ドゴォン!!


「なっ……!?」


 今まで一番近くで爆発音が聞こえたと思うと、その爆発の衝撃で付近の地面が崩れ落ちていく。崩れ落ちていく地面から逃げようにも出口に向かう道が先ほどの爆発で壁が倒れて道が塞がってしまった。


「くそ……まだだ……!!」


 迂回路を探そうとした瞬間、僕の身体が急にフワッと宙に浮かぶ感覚になった。


「あっ……」


 僕の真下の地面が陥没したのである。そのまま重力に逆らう事が出来ず、陥没した穴に落ちていく。穴の下を見ると真っ黒な空間が広がっている。


「おいおい……嘘だろ……ここまでなのか……」


 上に手を伸ばすが、その手は何も掴めず空振ってしまう。そして僕はそのまま穴に落ちていく。アクセルにあんなに啖呵を切ったのに最後は穴に落ちて終わりとか笑えないのだが、今の僕にはこの状況を打破できる手段がない。


“ふふっ、しょうがない子ですねレイは”


 そんな中でも僕の頭をよぎるのはやっぱり彼女のことであった。


「ごめん……フローレンス……」


 そんな事を思いながら僕は穴に落ちていくのであった。

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