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かなりクソだ

「うぐぐぐ……」


 謎の空間から突如、現実に戻されて痛みに苦痛の声を上げる僕。どうやら意識を元の身体に戻されたようである。


(お主、戻ったか!? 大丈夫かの!?)


 僕の担当の神が焦った様子で声をかけてくる。そう言えばさっきのご先祖様との会話にいなかったな、こいつ。なんかご先祖様が細工でもしていたのだろうか。


(あぁギリギリでね……)


(焦ったぞ、数秒ワシからの問いかけに返答が無くて死んだかと思ってしまったの……)


(ちょっとあの世に旅行してきたんだ)


 少しご先祖様に会ってきました。そしてその時に少しだけど打開策を聞いてきたのである。


(お主……冗談言っている場合か?)


 ある意味冗談ではないのだが。身体に残っている力を振り絞って再び立ち上がった。多分だが次こそ倒れたら本当に立ち上がれないだろう。だが次は倒れるつもりはない。


「へぇ、立ち上がったか」


「そっか……そうだよね」


 なんで僕はあそこまで悩んだのだろうかと思い、自分に呆れる。僕がここまで頑張ってきたのは一体何のためだったのか、そんなの前から決まっていたのに。


「ふぅ……よしっ」


 僕は両頬を叩き、気合を入れる。


「おいおいもうボロボロだぞ?」


「そんな事お前に言われなくても分かっているさ」


 覚悟を決めると僕はアクセルをジロっと睨むと彼は少しひるんだ。


「お、お前いきなりどうした……?」


 僕の雰囲気が先ほどまでとは違うことにアクセルも驚いているのだろう。そして僕はそのままん雰囲気のままに彼に対して指を指して宣言する。


「先に言ってやる

ーーこの世界はかなりクソだ」


「はっ?」


「この世界はゲームの通りに魔力の高さと生まれの身分が物を言う世界だ。僕は生まれの身分こそ高いけど魔法は使えない。本当ふざけんなよクソ野郎どもっ!!」


 この世界で不満に思っていたことを全力で愚痴る。


「い、いきなり何を言い出すんだ?」


アクセルも僕が何を言い出すと思えばこの世界の愚痴を大声で叫ぶのだから焦っている。そんな彼の様子など無視して続ける。


「てかさ、異世界転生するならチート能力つけろや!! 何で僕は魔法無効化だけなんだよ!! “全ての魔法使用可能”とか“龍に変身”“何もない場所から武器を作る”とかチート能力くれっての!!」


(それは本当にすまぬ……!! というかここで言うか普通?)


 神が謝罪半分疑問半分で返事してくる。普通異世界転生ならチート能力がセットだと思うのだが僕についてきたのは魔法無効化と自身が魔法使用不可というあまりにもデメリットが大きすぎる能力であった。この世界に対しての文句と一緒に言っておくことにする。


 アクセルや神が唖然としている中僕はこの10数年で溜まりに溜まった文句をこの際に言うことに決めた。


「それにヒロイン達にも文句あるの!!」


(お主……この世界が好きじゃなかったの?)


(うっせぇ!!)


 神が何か文句を言っているが無視して続ける。


「彼女のフローレンス・ライシング。

何が“品行方正・文部両道・容姿端麗の生徒会長”だって?

ーーはっ、嫉妬深いし、人の話聞かないし、なんなら私生活ズボラの極みだ!!

今までどれだけ周りにバレない様に裏工作していたっての!!


ラウラ・ハーストン

“真面目な下級生”

ーー兄に対して毒舌、もう少し兄を丁寧に扱って欲しいです!! メイドさんいるだろうけど真面目なら少し家事スキル上げて!?


ミラ・ルネフ

“物静かな騎士娘”?

ーー声を出したら一番うるさい、真面目過ぎて勘違い多い!! 初対面殺されかけたことまだ忘れてないからな!!


チャス・アルマンダ

“元気な食堂の娘”

ーーあれは元気なんかじゃないし、ただただ騒がしいだけだし毎日問題ばっかり持って来やがって!! 僕が断れないのを良い事に店の手伝い頼むなっての!!


アリーヌ・ベスランド

“包容力豊かな年上のお姉さん”

ーー確かに精神年齢は一番上かもしれないけど一番考えぶっ飛んでんだよ!! あの人の“消す”って言葉、冗談か本気なのか分からなくて怖いんだよ!!」


 転生する前は大好きだったヒロイン達。だが転生してから実際に関わってみるとその幻想は彼女達と関わっていく中で崩れていくのが分かった。特に酷かったのはメインヒロインであり僕の彼女のフローレンス。上げるとしたら……


・とてもズボラ

「服ですか? 後で片づけるからいいです~」


・かなり嫉妬深い

「へぇ~彼女の私がいるのに他の可愛い女の子と何を話していたんですかね?」


・たまにポンコツ※僕に関わること限定

「何故ですか? あの時のレイは今までで一番カッコ良かったんですよ? そのカッコよさを皆さんに知ってもらおうと思ったんですけど……貴方の評判を上げようと思って……えへへ……」


・とにかくわがまま

「彼女権限使います!!」


……うん、たまに看過できないレベルまで落ちてしまうは如何なものかと思う。他のヒロイン達もここまではないけどゲームで憧れていた時に比べて幻滅はした。ただ本当にフローレンスの印象はゲームで見ていた時と実際に関わっていた後だと大分印象は変わった気がする。


「おいおいここに来てこの世を恨み始めたのか?」


 ここまでボロクソに文句を言い始めた僕を見て、アクセルはとうとう僕が頭がおかしくなったのと思ったのだろう僕をからかうように言ってきた。


「だけど!!」


 僕はさっきの文句の時の声をよりも大きな声を出した。


「僕さ、とある人に声をかけられたんだ

“何でお前と戦っているのか?”ってさ。

ーー馬鹿だから最近ようやく答えが出たんだ、前から答えは出ていたというのにさ」


 今まで僕が頑張ってこれた理由はご先祖様に問いかけられてようやく自覚した。そんな事前から分かっていたのに。改めてご先祖様に感謝である。


「この世界に文句はあるさ、でもそれ以上にこの世界の楽しい事を言える。どうやら僕はこの世界が自分が思っている以上に好きみたいなんだ」


 この世界に転生して早10数年、辛い事・悲しい事・怒りがこみ上げてくる事もあった。それでもこの世界に転生して嬉しい事・楽しい事・感動した事も同じぐらい見つけた。この世界に対してクソくらえと思うのと同じぐらいこの世界は素晴らしい物だと思う。


“もぅ、お兄様は仕方ないですね……”

妹のラウラ


“本当にレイは面白いよね~毎日飽きないねっ!!” “あぁレイもラウラ殿も面白い”

同級生のチャスとミラ


“後輩クンはクッキーとスコーンどちらがいいですか?”

先輩のアリーヌ先輩


“坊ちゃん行こうぜ!!”

親友のアル


そして……

“はい、私でよければ。

レイ・ハーストン君、私を貴方の彼女にしてください”

この世で一番大事な存在、フローレンス。


ーーそんな愛しい人たちがいる世界を守りたいと思うのは当たり前のことだと思う。


だからこそ僕は手を強く握り、思いのたけを叫ぶ。


「僕は愛しいみんながいる世界が大好きだ!!

だからこそ僕はアクセル・フォン、この世界を脅かそうとするお前には負けるわけにはいかないんだ!!」


「じゃあやってみろよレイ・ハーストンさんよぉ!!」


「あぁやってやるさ!!

ーーこい!! “ハーヴェスト”!!」


 と僕が言うと遠くに飛ばされていたハーヴェストが何も力を加えてないのに僕の方に向かって飛んできた。それをしっかり掴んで握る。剣を握ると不思議とだが先ほどまでとは違う感触を感じた。


「さっさと死ねよ

ーーハリケーン!!」


 アクセルは自身の剣から巨大な竜巻を発生させてこちら目掛けて撃ってきた。あそこまで巨大だと僕の“キャンセル”で完全に無力化は厳しいだろう。あいつもそれが分かって撃ってきている。


 でも……


「ーーハリケーン」


 僕がそう言うとハーヴェストからアクセルが撃ってきた巨大な竜巻と同じサイズの竜巻が発生した。それを向こうから向かってくる竜巻に向かって撃ちこむ。


ゴォォォォーー!!


 2つの巨大な竜巻は接触すると威力が同じだったのか相殺して消えた。その瞬間をみたアクセルはありえないといった表情を浮かべて言う。


「俺の魔法が相殺されるだと……!? あ、ありえない!! どうせはったりだ!!」


「別にはったりでも構わないし信じないならそれでも構わない

ーーで、もう終わりかい?」


「ふ、ふざけんなっ俺が負けるはずがねぇ!!

ーーダーク・バレット!!」


 と今度は黒い弾丸状の物体が数発こちらに向かって飛んできた。あの魔法は特に何かの属性が含まれるわけではないがその分、速度と威力が高い。だがこの魔法はよくアリーヌ先輩が使っているのを見ているので慣れている。


「じゃあ僕も“ダーク・バレット”」


 僕も同じ魔法を同じ数撃ち、こちらに向かってくる弾丸目掛け当てる。そしてこれも全て相殺させた。またもやあり得ないといった表情を浮かべるアクセル。そんなアクセルに剣を向けてこう宣言する。


「ーー反撃開始といこうか」

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