VSアクセル・フォン2
「くそっ……!!」
「おらおら!! どうしたどうしたさっきまでの勢いはどうしたんだぁ!?」
さっきの一撃でアクセルが本気を出したのだろうか、僕は完全に防戦一方になっていた。向こうが撃ってくる魔法をキャンセルしているはずだがキャンセルしきれてない。
(マズいの……)
(何がマズいんだ?)
心に神が話しかけてくるので返事をする。
(無効化しているはずじゃが……どうやら貫通してきておる)
(何!?)
(無効を貫通だって……? 僕の持てる最大の能力が意味を成していないじゃないか)
(いや大幅に威力は下がっておる。だが一部が貫通しておるな。お主、先ほど雷の魔法くらった際に少し手がしびれたじゃろ?)
(言われてみれば……)
先ほどアクセルから雷の魔法が直撃しそうだったのでキャンセルを使い、無効化したはずだったのに使用後少し電気でしびれる感じの痛みを感じた。ほぼ唯一のアドバンテージが無くなったとなるとこの戦いの勝利は更に厳しくなる。
(おいおいそれズルくない!? こっち尚更勝ち目無くなってきたじゃん!!)
(多分じゃが先ほど自分の魔力を一気に上げてきたのが予想以上で無効化の許容範囲を超えてきた感じじゃな……)
「--よそ見している暇あんのかよ!!」
「危っ!?」
神との会話に気を取られていたらアクセルが剣をこちらに向けて振ってきたので後ろに躱す。スピード、パワー共に先ほどまでよりも明らかに増している。
「本当油断している暇もない……!!」
本当に一瞬のスキが命取りに繋がる。当のアクセルは顔を真っ赤にして怒鳴っている。
「よくも俺に怪我させやがって……!! 絶対許さねぇ!!」
「はっ、罪もない人たちを怪我させた奴が何を言っているんだ? 怪我をさせたのなら自分も怪我させられることも考えろっての。まぁそんな事考えられないからこんな騒動起こすんだろうけどさ」
「罪がない訳ないだろう? 主人公の俺に刃向かってきた奴らだ、脇役らしく引っ込んでおけばいいもーー」
ギンッ!!
「ちっ、駄目か」
「おっと危ない危ない」
わざと煽る風に話しかけてみてその隙に一撃を叩きこもうと思ったのだが防がれた。
「弱い奴が俺に逆らうんじゃねぇよ、“アゲインストウィンド”」
「うわっ!!」
突如強い向かい風に煽られてバランスを崩す、これ幸いにとアクセルは多数の魔法を撃ちこんできた。
「キャンセル!!」
いつものように手を突き出して無効化の構えをする。そしてこちらに向かってくる魔法に対して出来る限り効果的になるように手を当てたのだが……。
「うぐっ……ぐぬぬぬぬ……!!」
神の言う通り確かに威力は大分落ちているのだろう、だが魔力が大きいの無効化出来ない分が衝撃として僕に当たる。服のあちこちに焦げた跡やかまいたちだろうか何か所か切れていた。
「ーーアイスブロック」
「はっ……?
ーーがはっ!?」
突如後ろからとてつもない衝撃が僕に襲ってきた。その衝撃になすすべなく吹っ飛ぶ僕。どうやら僕がキャンセルに集中している時に完全に視覚外の後ろから巨大な氷の塊が飛んできたようだ。
(お主大丈夫か!?)
「だ、大丈夫な訳あるか……!!」
神からの言葉に対して何とか返事をする。完全に意識外からの一撃だったので痛いこの上ない。そんな様子をみたアクセルは勝ち誇ったかのように言う。
「おいおいどうした生徒会長サンよぉ~? お得意のキャンセルはどうした?」
「うるせぇ……なぁ!!」
悪態をつきながらも何とか足に力を入れて立ち上がる。さっきの一撃は予想以上に重たく、日頃鍛えていなかったら一発で戦闘不能になっていただろう、口の中には血の味が広がっていた。
「へぇまだ立ち上がるか、その心意気だけは褒めてやるよ
ーーだけどそれがどこまで続くだろうかな!!」
再び強力な魔法をこちらに向けて連発してくる。さっきと同じようにキャンセルに集中すると再び重たい一撃を意識外からくらうことになってしまうので今回は回避に専念することにした。こちらに向かってくる魔法に対して、魔法同士の間を見つけその間に滑り込む形で避ける。だがいつも以上に神経を使うためか体力をいつも以上に消費してしまう。
「ふぅ……ふぅ……」
いつもなら息が上がらないはずだが、呼吸を整えるのに結構時間がかかる。
「息上がってんなレイ・ハーストン。魔法は飽きたし、次はこっちかなっ!!」
キンッ
「くっ……!!」
剣が直撃するギリギリのところで自分の剣で受け止めた。“次はこっち”と言ったのは剣のことか。剣の実力なら僕の方が勝っていると思うが今は別だ。こちらは魔法の直撃とそれに伴う体力の消費が激しくいつもなら少し僕の現状圧倒的に不利な状況である。
重なっている剣同士でギリギリと音がなる。最初こそ何とか押し返していたが徐々にアクセルの力に推され始めてきた。
「おいおい、剣が跳ね返ってこなくなったけどどうした?」
「ちっ……いつもならこれぐらーー」
「--おらっ!!」
とアクセルの蹴りががら空きになっていた僕の腹に深くめり込んだ。
「ぐはっ!!」
蹴りの勢いで前かがみになる僕。その瞬間、奴の剣がこちらに真っ直ぐ振り下ろされてきたので横に転ぶように避ける。だが上手く受け身が取れず、腕を強く地面に叩きつけてしまった。
「がはっ……うげっ……」
「フレア!!」
「キャンーー
ぐっ……!?」
キャンセルしようとしたところ飛んできた火球は軌道を変え、僕の腕に直撃した。当たった部分の服が燃えたので地面に倒れ込み、地面にある砂で火を消す。火は消したが当たった箇所は結構な火傷を受けた。
「痛てぇ……」
「休んでじゃねぇよ!!」
いつの間に目の前にいたアクセルに再び蹴りをくらい、遠くに飛ぶ僕。蹴られた胸付近を触ると激痛が走った。今のはあばらが数本折れた感がある。呼吸するのも辛い。
「がはっ……うぐっ……!!」
「今の蹴りはそれなりに上手く入ったと感じたんだが、まだ動けるか」
「当たり前だ……僕が動けなくなったら……お前を止める人がいなくなるからね」
剣を杖替わりに何とか立膝の状態まで戻す。正直言えばもう身体は限界に近い。多数の傷に、体力は底を尽きそうだ。多分だが何箇所か骨折もしているだろう。
「流石生徒会長サンだ、尊敬するぜ。でもそこまで守る意味がこの世界にあるのか?」
「何だと?」
「お前は生まれつき魔法が使えないことで散々酷い目に合ってきたんだろ? 表立っていじめられなかったのも生徒会入り出来たのも家柄と元生徒会長と幼馴染だったからお前自らの能力ではないだろが」
「そんなこと……今更……分かり切ったことだろが……!!」
ーー魔法が使えないのにいじめられないのは政務官のアーク・ハーストンの息子だから
ーー特別優秀じゃないのに生徒会に入れたのは生徒会長のフローレンスと親しかったから
ーー前回アクセルを撃退できたのも生徒会のみんなのおかげ
今までの人生、僕は家柄とフローレンスを始めとする周りの人達のおかげで生活してきた。そんなこと誰かに言われるまでもなく僕自身が一番分かっている。痛いほど味わっている。
「それなのに俺が捕まった後お前を散々馬鹿にしていた連中達は一気に掌返し、まるでお前を神の如く敬ってきただろ? あいつらも現金だよなぁ、今まで俺を支持していたのに風向きが変わると分かった瞬間、散々馬鹿にしてきたお前を支持するなんてな」
「だ、だまーー」
と立ち上がろうとした瞬間再びアクセルの蹴りをくらい、飛ばされる。飛ばされる時に握っていた剣も手が届かない場所に滑っていく。今までの痛みが積み重なって動けない。
「10分前のお前ならこれぐらいの蹴りをくらうどころかカウンターを俺にかましてくるだろ? それすら出来ないぐらいお前はボロボロだ。
ーーこの世界にお前がボロボロになってまで戦う理由があるのか?」
「それは……」
(くそっ……身体が動かない……僕が戦わないと……でもどうやって戦う?)
身体はあちこち怪我をしてボロボロ、唯一の能力も意味がない物になってしまった。この場を打開するためには僕はあとどれだけ頑張ればいいのか全く分からない。
「~~~~」
アクセルが何かを言っているが上手く言葉が聞き取れない、妙に時の進みが遅く感じる。
(あ、あれ時間が妙に遅い……でもこの感覚どこかで……あぁ思い出した前世で事故に巻き込まれたときだ……)
何か前にも似たような経験をしたことがあると思ったら前世でトラックとの事故に巻き込まれた際に感じた感触と同じである。ということは僕はもう死ぬのだろう。
(また僕は死ぬのか……何も成し遂げる事が出来ないで……)
前世で何事も成せずに、レイ・ハーストンに転生して今度こそと思い色々と努力してきたがまさかこの世界でも中途半端に終わってしまうのかという怒りえを思うのと同時に“またか”と自分の事を嘲笑してしまう。
(フローレンス……ごめん)
僕は最後に最愛の彼女に心の中で謝罪すると今まで閉じないように我慢していた目を閉じた。





