対峙、再び
「アクセル・フォン……!!」
「よぉレイ・ハーストン、久しぶりだなぁ」
そこには本来この世界のの主人公であるアクセル・フォンが立っていた。彼とこうやって対峙するのは夏祭り以来である。相変わらずのイケメンだが表情は前のような爽やか系ではなくどことなく普通ではない表情をしていた。
「一応聞くけど、何でこんな事をした。脱獄した挙句に王国の人々を傷つけることなんて」
「はぁ? そんなの決まっているだろ
ーー俺はこの世界の主人公だからな、なんで主人公の俺が断罪されて牢屋、しかも大罪人が収監される牢屋に入れられたんだぜ? 主人公に対する対応じゃないよなぁ?」
「そんなのお前が悪い事をしたからだろうが!! それにこの世界の人々はお前が“主人公”だとか僕が“悪役”だとかなんて知らないでしょ!!」
僕がそう言うとアクセルは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。
「うるせぇ!! お前は良いよな、生徒会長になって彼女も出来てさぞ楽しい学園生活を送れてよぉ。俺なんて暗い牢屋で1人……ったく羨ましいぜお前が」
というと彼は今までいた場所からジャンプして僕の前に降りてきた。
「羨ましいって……」
“羨ましい”というのは魔法が使えるお前の方が羨ましいと思う僕。まさかその感情だけで起こしたのかと思うと怒りが更にこみあげてくる。
「なぁレイ・ハーストンさんよ
ーー俺と手を組まないか?」
「はぁ……?」
「この世界を知っている俺とお前ならこの世界をモノに出来るだろ?
ーーあぁ気にすんな、お前の女に手を出さねぇよ」
「そんなの僕が“はい、そうですか”って言うと思っているのか?」
僕がそう言ってもアクセルは続ける。
「いやいや別にお前にも悪い話じゃないだろ。だってお前のこの世界の人間達に差別され続けたんだってな? “魔法が使えない”や“家柄が~”って散々言われて、大変だったみたいじゃか。しかも俺を倒してから学園の奴らからの掌返しが凄かったらしいじゃないか」
アクセルはその場のいたかのように言う。
「だからどうした!! それで僕がお前の誘いに頷くとでも思っているのか!! 確かにこの世界に恨みはあるけど、それがお前と手を結ぶ理由にはならない!!」
「いやいや俺はお前の能力を買っているんだ。俺とお前が組めばこの世界は確実に俺達のモノになる。今この街の郊外に俺の仲間が大勢待機していて、俺の合図1つですぐにでも王国に攻め込むことが可能だ」
彼の言う“大勢”がどれぐらいなのか分からないが、アクセルの件で疲弊しているこの街に攻め込まれようものなら無事では済まない。それに今のアクセルは“この世界の人間には負けない”というチート能力があるので、彼が前線に出てきたら確実に危険だ。ならば僕がすることはただ一つ。
「だったら尚更僕はお前を倒す!!」
と僕は帯刀していたハーヴェストを鞘から抜いた。その様子を見たアクセルはほぅといった表情を浮かべて同じように鞘から剣を引き抜いて僕の方に向けてきた。
「ゲームをプレイしたお前ならこの剣がどういう剣か分かるよな?」
「“宝剣アクラウェン”か……!!」
ーー宝剣アクラウェン
この世界で比べる剣が無いほどの価値と能力を持っている宝剣。そして今僕らがいる遺跡はその宝剣が封印されていた場所である。本来この遺跡に封印されているのは王族以外知らないはずであり、本来のフローレンスルートで判明するのだが、ゲームをクリアしたこいつが知らないはずがない。
「そうだ、この剣はこの世界のでも最強の剣だ。お前が持っている剣とはけた違いなんだよ!!」
一応僕が持っている剣も王国内の有力貴族ハーストン家の宝剣だが、あっちはこの国の最強の剣。こっちの剣の能力があるかどうかは分からないが武器に関しては向こうに軍配があがる。
「まぁ確かにお前が持っている剣は良いものだろうけどお前が上手く使いこなせるかな?」
「あぁ? やってみるか?」
僕が軽く挑発? してみるとアクセルはあからさまに機嫌を悪くした。思いのほか短気のようである。
「元々そのつもりでしょ? 何を今更言っているんだ?」
再度剣を握り直して構える。そう言えば彼個人と戦ったことがないことに気づく。なので彼の実力は不明、僕自身身体能力は強化されているとはいえ向こうは魔法がほぼ使い放題だ。気を抜く訳にはいかない。
「じゃあ行くぜ」
アクセルがそう言うと凄いスピードでこちらに向かって近づき剣を振り下ろしてきた。
「--ッ!?」
予想以上のスピードでこちらに向かってきたの間一髪のところでガードした。ギリギリと金属音が周りに響く。
「ほぉ初撃が防いだか……俺の初撃を防いだのはお前が2人目だ」
「そりゃどうも……!! ちなみに最初の1人は誰だ?」
「お前が仲良くしている騎士団長サンだよっ!!」
剣のみね付近で強く押してきた。
「くっ……!!」
僕はこの体勢はマズいと思い、押される力を利用して後ろに軽くジャンプして下がった。スピードだけじゃなくてパワーも予想外である。パワーもカインさんに匹敵するぐらいあり、個人的に予想外すぎて少し焦った。
(大丈夫かの!?)
僕担当の神も予想外過ぎたのだろうか焦った声で心配してくる。
(大丈夫とは言えないけど……やるしかないでしょ?)
とは言ったもの、どうしたものかと考えようとしたところ……
「--フレイムスパイラル!!」
目の前に炎の渦巻きが迫ってきていたので僕は腕を突き出した。
「キャンセル!!」
これまたギリギリで魔法を打ち消すことが出来た。回数制限が解除されて初めて使ったが確かに今まで感じていた倦怠感を感じない。僕の様子を見たアクセルは感心したかのように呟く。
「へぇ……それがお前の唯一の魔法ってやつか。便利なモン手に入れたな」
「まぁ魔法なのか分からないけど使えるので使うさ
ーーもう終わりなんて言わないよね主人公?」
なんていう軽口を言いながら体勢を整えて再度剣を構える。今の剣と魔法の1撃ずつ受けて分かったが冗談抜きでアクセルは強い。流石あれだけ大口叩いていただけある。逆に僕には軽口を言っている暇はなさそうだ。
「あぁそんな訳ねぇだろ悪役。
ーー精々俺を楽しませてくれ!!」
というとアクセルは再び先ほど同じぐらいのスピードでこちらに向かってきたであった。





