同じだから
朝食を食べて、僕は自分の頭の中で整理してからフローレンスの家に向かった。正直これから僕が行うことで自分の大事な人を悲しませることは明白である。ただそれでも……。
(もう誰かが傷つくのは嫌なんだ……それだったら僕が終わらせる)
それに今のあいつを倒せるのは僕だけだ。正直、勝てるか分からない、もしかしたら負けるかもしれない。それでも1パーセントでも勝てる可能性があるなら挑む価値があるはずだ。
そう思いながら歩いていると彼女の家に到着し、いつものように顔パスで中に入った。
「フローレンス、入るよ~」
といつものように彼女の部屋に入ると、彼女はきょとんとした表情をしていた。いきなり僕が来たことに驚いているのだろうと思う。
「レイ? 今日はどうしたんですか?」
「今日は……ちょっとフローレンスの事が心配になって、来ちゃった」
と僕がそう言うと彼女は少し困った顔をした。
「もぅ……貴方は心配性なんですから」
絶対フローレンスだけには言われたくないのだが、ここはあえて何も言わない。そして僕はそのまま彼女の隣に座った。表面こそいつも通りに見えるが彼女は大分無理をしているだろう。
「アルクさんは大丈夫?」
「はい、朝起きると今日から政務に戻るって宣言して城に向かいました。
何でも“アーク先輩・カイン先輩が前線で指揮を取っているのに私がおちおち寝ているのは我慢ならなくてね”だそうです」
「アルクさん……そこは張り合わないでもいいと思うんですけど……」
あの3人は仲が良いが、妙なところでライバル心みたいなのがあるのだろう。勿論自分の役職や責任を感じてのもあるだろうけど、他の2人が出ているのに自分だけ寝れないというライバル心が燃えて、気力で指揮を取っているかもしれない。今回の件が解決したら1週間ぐらい休んで欲しい。
「でもお父様達は3人とも責任感強いですから、そういう人間関係が無くてもアクセルの件が解決するまで休むことを自分で許さないと思います。早く解決して欲しいですね……」
なんて言ったあと表情が曇るフローレンス。自分で言って現状解決する見込みがない事に気づいたのだろう。解決策がないのに“早く解決して欲しい”と言うのは確かにいけないことかもしれない、ただフローレンス達に出来ることはアクセルの能力的に何もない。
ただ今の僕なら何とかなるかもしれない。
(フローレンス、ごめんね。僕は今から君を悲しませることをする)
そう心の中で彼女に謝罪をしたあと僕は決意を決め、改めて彼女の方を向いた。フローレンスは僕がいつもとは違う雰囲気を感じたのだろうかどこか不安な表情を浮かべる。
「実はさ、今日フローレンスに会いにきたのには勿論君が心配なのもあったけど、他に理由があるんだ」
「り、理由ですか……?」
「僕、戦うよ。
ーーアクセル・フォンと」
「戦うですって!?」
僕がそう言うと彼女は激しく驚いた様子だった。それもそうだろう、僕は魔法が全く使えず体術が他の人よりも使えるぐらい、対して向こうは魔法も身体能力も優れており王国の最大戦力である騎士団も返り討ちにした実力を持っているのだから。
「うん、僕が彼と戦ってくるよ。戦って勝ってこの騒動を終わらせてくる」
彼女は焦った様子で僕に言う。
「む、無理ですよ!! 相手はルネフさんのお父さん達を打ち負かせてレイのお父さんにも怪我させた相手ですよ!! それを普通の学生である貴方が勝てるはずがないですよ!! それに貴方が出る必要はないです!!」
フローレンスの言う通りである。僕は子供であり、ただの学生である。大人が勝てない相手に未熟な子供が無謀に挑みにいって勝てるはずがないだろう。ただ僕は少しだけ普通ではない。
「うん、普通はそうだよね。僕は子供だし、ただの学生だ
ーーだけど今の僕にはあいつに勝てる可能性がある」
「何でですか!! お父様達が勝てなかったのにどうして子供のレイが勝てるんですか!? そこまで言うならその勝てる理由を教えてください!!」
正直これを言う事はかなり躊躇いがある。なぜならこの言葉を言えば僕が勝てる見込みがあることを説明できるが、彼女との信頼関係を大きく揺るがすことになるからだ。さっきは覚悟を決めたつもりなのだがいざその言葉を言おうとした途端、緊張なのか恐怖なのかはたまた全く別の感情なのか身体の震えが出てくる。
(ふぅ……頑張れ……僕、彼女を守るためだ……!!)
「フローレンスはアクセル・フォンが何でカインさん達に勝てたか分かる?」
「それは彼が膨大な魔力を持っているからに決まっているじゃないですか!!」
「実は違う。
アクセル・フォンの最大の強さは膨大な魔力じゃない。あいつはこの世界の人間に絶対負けないという能力を授かっている。その能力のおかげで僕の父さん達、この国の」
「え、えっ……?」
彼女は僕が何を言っているのか分からない様子である。いきなり何を言い出すのかと思ったらアクセルの能力が予想外の返事だったのだから。それでも尚僕は続ける。
「“この世界の人間に絶対負けない能力”では、何故アクセルがその能力を使えるのかという疑問があるよね?
ーー答えは簡単、アクセルは元々この世界の人間ではないからなんだ、あいつは別の世界からこの世界に転生して来た存在だから、あんな規格外の能力を使えるわけ」
「アクセルがこの世界の人間ではない……? 貴方は一体何を言って……いえ、その前に何んで貴方がそのい事を知っているんですか……?」
「そりゃ僕とアクセルは同じだからだよ」
「同じ……?」
そうして僕は今までこの世界で誰にも言っていなかったことを告げるのであった。
「アクセルと同じく僕はこの世界の人間じゃない。
それに僕は性格に言うとレイ・ハーストンじゃないんだ」
「えっ……」
この時の彼女の表情を僕は一生忘れないと思う。





