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プロローグ

 僕は昔から運動や勉強、更に人付き合い等何をやっても平均より下だった。

 学校では出来るだけ存在を消して行動し、家で両親から優秀な兄と比べられて怒られる日々が毎日続いた。その兄が悪人だったら恨んで少しは気持ちが楽になったかもしれなかった。でも兄はこんな僕にも優しく接してくれてそれが尚更僕には辛かった。


 正直何のために生きているのか分からないと自分でも思っていたが、そんな日に一筋の光が差した。


 その光とは“青い月が見える丘で”通称“月丘”というギャルゲーである。

 このゲームは魔法が使える世界が舞台で主人公の男子生徒アクセル・フォンが家の都合でとある学校に来たところから始まる。そこで何人かの女子生徒と交流していく中でたった一人の大切な相手を探すののがおおまかな話だ。実はこの主人公には色々と辛い過去があったりするのだが……まぁそれは今度にしておこう。

 元はPC用のゲームだったのが人気が出たためコンシューマー化されたの僕はふと立ち寄ったゲーム屋で見て思わず買った。そしてプレイしたのだが……



 そのゲームに僕は今までの何よりも夢中になった。


 ヒロインは主人公が後に入ることになる生徒会の5人。


 学園の生徒会長のフローレンス・ライシング。

スタイル抜群、文武両道、、魔法適性も抜群で、性格良しという非の打ちどころがないという完璧超人。


 悪役の妹 ラウラ・ハーストン。生徒会では書記。

1年生ながら頭の良さを認められて生徒会入りが認められた。


 チャス・アルマンダ、担当は会計。

日頃はのんびりしているが情報収集が得意で、生徒会構わず学園内で敵に回したくない人間の1人。


 ミラ・ルネフ。担当は主務。

騎士団長の娘で女性ながら剣の腕は達人級


 副会長のアリーヌ・ベスランド。

生徒会の中でもお姉さんという立場で役員みんなを暖かく見守っている。


 それ以外にも見ていて楽しいイベント、その場にあったBGMや綺麗なイベント絵などが全て僕の好みにドストライクだった。好きすぎて英単語や歴史の人名は覚えるのが苦手な僕なのだが、このゲームにおいてはテキスト、選択肢は勿論、説明書の一言一句まで覚えている。

……人は興味のあることはすぐに覚えるということをこのゲームで改めて学んだ。



 “月丘”と出会ったあとの僕はそのゲームをプレイするのが生きがいになった。まだ10何歳の若造が何を言っているんだど思われそうだが、僕にとっては生きがいと言っても過言ではない。今までの無色だった人生に色を付けてくれた存在だ。


 そしてそのゲームの全てのルートを何十周した、とある日僕は……



 交通事故に巻き込まれて命を落とすのであった。


 その日、学校からの帰り道に信号待ちをしていると隣にいる幼い子供が母親の手を放し、横断歩道に出てしまった。どうやら親の方はスマホを見ていて子供が離れていることに気づいていないようである。

 そして運が悪い事にその子供に向かってトラックが迫ってきた。


「危ないっ!!」


 僕は目一杯手を伸ばし幼い子供の手を掴んで引っ張り、その親の元に飛ばした。だが男の子を飛ばした勢いで僕は逆に道路に出てしまった。


「あっ……ダメだね……これ」


 なんか今のこの状況を見て僕はある意味笑うしかなかった。

 避ける時間など運動神経の悪い僕にはあるはずもなく、僕の身体はトラックに跳ね飛ばされた。

 飛ばされた勢いで地面に叩きつけられ、指一本動かせないという状況で自分の命は長くないと察する。

 周りから悲鳴やら大声が聞こえるのだが何を言っているか分からない。


「痛い……けど……なんだ……僕……頑張れるじゃん……」


 今まで何も人並に出来なかった僕も最後の最後に人の為に行動出来たのだ。


「瞼が重いなぁ……もう……眠いや……寝よ」


 そうして僕の17年間の人生の幕を閉じた。

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