第8Q 黄金世代??
今回も園長先生視点です
彼が私に挑戦するようになって一年半が過ぎた。彼は年長組になった。彼はかなり身長が伸びた。年少のころから給食も一日も欠かさず2回以上おかわりをしてきたのだこの前の身体測定では120cmを記録している
何度叩きのめしても彼は必ず挑戦してきた。ドライブのキレもフェイクの精度もシュートもすべてのレベルが上がっている。
私が173cmあるため何とかブロック出来るが、同世代で彼を止められるだろうかと興味がわく
「先生行きますよ」
彼が声をかける
「いいよ」
私が構える
彼がしかける
これは??
私は抜かれ、レイアップが決められた
私は彼に初めてゴールを許した
無論、油断などしていない。本気だった。彼はどんな表情をしているのだろう
彼の表情は嬉しそうではなく冷静そのものだった
この表情から察するに彼は気づいているのだろう。この技術は将来通用しなくなるだろうということに
「たぁーくん」
私は彼に声をかける
「今まで身長が高い相手に対策するためだけを考えていました。今のは逆転の発想で小さい身体を活かして見ようと思いました。実際、園長先生から初めてゴールを決めることが出来た・・・」
彼の表情は明るくない
「しかしこれは良くても中学校くらいまでしか通用しないかもしれない」
やはり彼は気づいていた
私は子どもらしからぬ彼の思想にもはや驚くことはなくなっていたが、意識の高さには驚いてばかりだ
「これを磨いていこう。これが昇華出来れば、間違いなく上でも通用する」
私はそう確信する
「絶対無理とは思いませんが下半身の筋力や体幹が出来上がってる相手には厳しいのでは?」
彼はそう分析しているようだ
「たぁーくんはケレン・ドゥというNBA選手を知っているかな?」
「はい。低身長ながら得点王に輝いたスラッシャータイプのSGですよね?」
「私にはこの技は第一段階で進化した先が彼なのではないかと思う」
「そこまで考えていませんでした。選択肢の一つとして、考えて見ます。ありがとうございました」
「おーいたぁーくん。早くバスケしようよ」
大迫くんが彼を呼んでいる
「ダイ、今行く」
彼が向かっていく
彼に引っ張られるようにみんなバスケが大好きになっていった。特にいま彼を中心に集まっている5人はすごく上手い。その辺の小学生より上手いのではと思えてくる
大迫 大貴 彼の幼なじみでよく一緒にバスケをしているが、この中で二番目に上手いだろう。正直センスだけならたぁーくんよりも上なのではと思う
中西 祐介5人の中では一番身長が低いが視野が広くパスが上手い。また、ドリブルも上手い
今井 紺田足が速く、体力もある
大山 隼人5人の中で1番身長が高く127cmもある
本当に黄金世代のようだ。もちろん彼ら以外にもバスケをする子は多いがゲーム形式でも、この5人は頭2つくらい抜けている
そのためこの5人が一緒のチームでゲーム形式をすることはないが見てみたい
その気持ちが抑えられない私は密かに彼らのために試合を企画しようと企むのだった