第7Q VS園長先生
今回は園長先生視点です
side 園長先生
「NBA選手になって日本をワールドカップやオリンピックに出場することです」
私はこの言葉に驚愕した。
日本がバスケでワールドカップやオリンピックに出場するのなんて夢物語だ。ましてはNBA選手なんて夢のまた夢だ。それを自信たっぷりに言い放つ彼にも違和感を覚えた。
如月 武
彼は大人しい子でこんなことをいう子ではなかったのに自我が芽生えたのであろうか?
教育者として、1人の子に固執しすぎるのは良くないが彼から目が離せなくなった
彼は子どもらしくない、まるで私たちと同じ教育者と感じさせられる時がある。
新任で自信をなくしつつあった葵先生を筆頭に彼は困っている先生に優しい言葉をかける
彼の持つ不思議な魅力に興味を持った私は彼に欲しい者はないかと尋ねた
「バスケットボールとリングが欲しい」
彼がそう答えたとき、心が躍った
一、保育者として、一、バスケットボールプレイヤーだった者として彼の成長を見届けたくなった
彼のバスケを見て、更に驚愕した。
3歳児とは思えないボールハンドリング、レイアップ、ジャンプシュート。そして、彼は暇さえあれば基礎練習をしている。彼は才能ではなく努力でここまでなっている
更に、指導も上手い
集まった子どもたちに基礎を強要するのではなく、細心の注意を払って1人1人が楽しめるようにしていた。
半年が経つ今ではゲームを行えるようになっているのだ
「彼とバスケをしてみたい」
一、バスケットボールプレイヤーとして対峙してみたい
その願いが叶った
彼は、今日遅くまでお預かりが入っており一人で黙々と練習している
「たぁくん良かったら先生と1ON1をしないかい?」
「いいんですか?お願いします」
私は彼にボールを渡し、ディフェンスの構えをとる
彼はボールを保持して、私の目をのぞき込む
彼の子どもとは思えない鋭い眼光に私は一瞬ひるんでしまう
チラッ
鋭く左を見た
「(左か)」
私は進行方向を防ぐために、左に進もうとした瞬間に気づく
「(動いてない??フェイクか)」
彼は視線のフェイクを入れ、右にドライブしてそのままレイアップを決めた
「すごいね。さすがNBA選手を目指すだけはあるね」
私が褒めるが彼は喜ぶ様子もない
「先生、僕に自信を待たせなくていいです。NBA選手を目指すなら今のうちから背が高い選手相手に経験を積まなくては行けないんだ。中途半端な自信なんて邪魔になるだけだ!!僕を徹底的に叩きのめして下さい。絶対泣いたり、諦めたりしませんから」
ゾクゾク
彼の意識の高さに背筋が凍るように感じるのと同時に自分が恥ずかしくなった
「ごめんね(次からは本気でいくよ)」
大人げなく私は彼を叩きのめした
フェイク、レッグスルー、バックビハインド、フックシュート、フェイダウェイ、フローターシュート
どれもまだ、筋力不足や練習不足で完成度が低いが、彼が持てる技すべてをぶつけてきた。何度叩きのめしても諦めずにくらいついてきた
私は確信した
『彼は本物だと、日本のバスケットボールを変える存在になると』
そのためにも、何とか時間を作って彼と毎日バスケをしようと
私は心に誓うのだった
<バスケ用語解説>
『フェイダウェイシュート』
後ろに下がりながら打つシュート
『フックシュート』
ディフェンスに対して体を横に向け、肘を伸ばして放つシュート
『フローターシュート』
ブロックをかわすようにふわりとボールを浮かせるシュート