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君とボクの交われない交差点 ~私と剣~

作者:

連載中の「君とボクの交われない交差点」のどこかに、入れようと思ってたのですが、書く前に忘れるなwwとなったので短編にしました。


真っ青な何もない空に、乳白色の美しい巨城が浮かんでいます。鳥さえも飛んでいない空を、城に向かって飛翔する美しい獣が一匹。それは、頭は馬、身体は虎で尾と羽が鳳凰の不思議な獣。 獣は、その背に美しい女性を2人乗せ、宙に浮かぶ城に向かって真っ直ぐに飛翔し、城門へと一直線に向かいます。城の中心には、重々しく塞がっている鋼鉄の扉が見え、辺りには誰もいません。ですが。彼女らが近づくと、どこからともなく大きな笛が鳴り歓迎の音楽が流れてきました。

そうして、大きな大きな男の声が響きます。


「フレア様とルタ様の入城ーーー!!」



その声とともに、重い音を立てて城門が開きます。獣は音もなく城の中へと入り床に足をつけました。


「ご苦労様、レイン」


そう言って獣を労うと、先に獣から降り立ったのは、長い赤い髪に毛先は金色、瞳は薄い桃色、大胆な服装に勝ち気そうな雰囲気のある美人です。 その後ろには、彼女の服装とは真逆に長い帯を幾重にも巻いたかのような服装の女性。布は彼女の体をほとんど覆いつくしており、たおやかな雰囲気に、青い髪に毛先は緑色、瞳は穏やかな翡翠色の美しい女性。赤髪の彼女に手を引かれてレインと呼ばれた獣から降り立ちます。


「ホーンズは、相変わらず大きな声ね。耳がまだキンキンするわ」

「姉様…っ」


赤髪の女性がふざけるように耳を塞ぐと、咎めるように、細く長い指が姉の服の裾を軽く引っ張ります。


「ふふ、ルタもそう思ってるくせにって!わっ、もう、わかっているわよ。ふふ」


赤髪の姉と思わしき女性、フレアは優しくルタの頭を撫でて微笑みました。彼女らは顔は似通っていますが、雰囲気がまるで異なっています。ですが、仲は良好のようで仲睦まじく戯れていました。

そんな彼女らを、離れた場所から、ひそひそと兵士達が覗いていました。


「おい、あれが紅蓮と翡翠の姉妹か。噂に違わず美しいな」


兵士達は鼻の下をのばしニヤニヤしながら覗いています。


「そうだな」


「おい、お前ら!これから、女神様方はデウス様への謁見だ」


隊長らしき男性の口から、デウスという言葉が出た途端に二人は覗きを止めて、足を閉じ気を付けで固まってしまいました。少し足が震えています。


「っ、いかんな。それは、デウス様に消されてしまう!」


こそこそと話す兵などに目もくれず、彼女らは戯れていました。それから、暫くすると彼女らの前に小さな光の玉があらわれました。


「ご機嫌麗しゅうございます。女神様方」


見た目の可愛らしさに反し、その声はとても低いです。


「貴方も、相変わらず元気そうね、ヴィー」


「ありがたく存じます」


「堅苦しいのはいいわ。デウス様に呼ばれたの。案内してくれるかしら」


「御意」



ヴィーと呼ばれた光輝くお供に導かれ、彼女らは堂々と光る廊下に足をのせました。すると、ほとんど歩くこともなく、あっという間に、重い謁見の間の扉にたどり着き、扉を開けば、真っ白な髭をたっぷりと蓄えた男が豪奢な椅子の上にどっかりと座っていました。その姿はとても大きく、恐らくは3メートル以上はあるであろう巨体にたっぷりと蓄えた髭を弄りながら男が彼女らを出迎えました。


「遠路はるばるよくきたな、フレア、ルタ」


「お久しゅうございます。デウス最高神様」


二人はそろって美しくお辞儀をします。控えている近衛兵達もその美しさに目を奪われていました。静まり返る謁見室をデウスの咳払いが打ち消します。


「良い。そう気を張るでない」


言われるやいなや、フレア頭を上げます。


「はい」


「姉さま!いけませんよ」


ルタは咎めるように姉を呼びますが


「ルタよ。

お前もあまりそう固くなるな。兵も気が張って仕方ない」


「ですが…」


尚も引き下がらないルタに姉は


「ルタ。お父様がおっしゃってるのだから引きなさい 」


「はい」


まだ不服そうですが、彼女はしぶしぶ引き下がりました。


「それでお父様、どのようなご用命で私達をお呼びに?」


「うむ、よくぞ聞いてくれた。フレアや。

これはのう。お主らのどちらかに頼みたいことでな」


「私達姉妹のどちらか……で、ございますか?」


フレアは怪訝そうな顔で主神にたずねました。

彼女らは二人は、二人で一人です。その絶大なる力も一人では半減してしまうのです。


「あぁ、そうじゃ、お主らの一人に、創生の女神となって貰いたいのじゃよ」


「創生の」


「女神?」


ふたりは揃って顔を見合わせました。


「あぁ、そうじゃ。こことは別の場所に

新たなる世界を創造してほしいのじゃよ。」


「しかし、デウス様。

今は、新たに世界をつくる必要性はないかと存じますわ」


「ホッホッ、いいや。フレア。必要性とはな。作り出すものじゃ」


そう言って、絶対神は悠々と立ち上がります。


「破壊と守護の双剣を我に」


彼の言葉に近衛の兵たちは急ぎ二本の大きな刀を手渡しました。遠目からでも煌めくその刀に反応したのはルタの方でした。



「その剣は?」


フレアは、妹の様子に気がつき直ぐ様手で妹を制します。しかし、それでもルタは、なんとか剣をみようと顔をだします。そして、その美しい刀身に心奪われました。


「綺麗!あっ、いえ…、すみません。

そ、その剣たちは一体?」


先ほどまで静かにしていたルタは、剣を見たとたんに目を輝かせていました。一本は真っ黒に赤い刀身に赤い宝珠、もう一本は真っ白に青い刀身、そして青い宝珠がついています。


「これは、守護と破壊の双剣。

守護のリィン、破壊のニェーチェじゃ」


「初めて聞く名ですわ」


「そうじゃろうな。

この二本はワシが3億年かけて作り出した近年ようやく、完成した剣じゃ。

これ一本では守りと破壊のみの剣じゃが、この二本が揃えば一つの宇宙くらいならば容易く破壊できる。

よく見ておれ」



二人は父がなにを言っているかが理解できませんでした。しかし、王はそんなのが二人など構いもせずに左腕を振りあげました。



「え?」

「父様?なにを」



父神が力を込めると何もない空間に亜空間が開きその中には銀河が煌めいていました。


「この空間に、一つの宇宙が広がっておるのがみえるか?

この幾千の星にワシらに仇なす者共がおる。

一つ一つ潰すのでは、とてもとても切りがないくらいにのう」


「えぇ。星達は見えますが仇なす者共…ですか?」


「父様?なにを?」


二人は美しく輝く銀河に見とれるよりも、父の異様な雰囲気に身を引き、守るように魔法の膜をはりました。



「ルタ!私の後ろに」

「はい!姉様!」


「フレア、ルタよ。よぉく見ておれ」


ふん!彼が両手で双子の剣を振るうと剣檄が宙を舞い、世界が容易く壊れていく音響きます。


「……!!」

「と、父様!!一体なにを!

本当に破壊してしまったの?!

あのたった一振りで?中で生きているモノたちは!!」


ルタはガタガタと震え顔を真っ青にし、直ぐ様フレアは彼女を支えました。


「 ルタ!大丈夫?」


「ねぇ 、姉様、中は?中はどうなったの!大丈夫なの?」


「父様………、この中はどうなったのです?」




「勿論、塵ひとつ残っておらん」



淡々とした様子でデウスは刀をしまいます。


「っ!なぜでございます!

何もしていないモノ達まで犠牲にしたのではないのですか!!」


激昂するフレアに対して王は無表情で答えました。


「不必要な、我らに仇なす者の世界は間引かねばならん」


「父様!!」


我慢ならないとばかりにルタは立ち上がりますが、デウスはジロリとルタを見てからフレアを見つめた。フレアは苦々しそうにデウスを一度睨み付けた後に、ルタに向きなおります。


「っ、ルタ!

いいから私の後ろに控えてなさい」


「でも!」


尚も言葉を発そうとする妹の肩をフレアはつかみ、姉はそっと妹に耳打ちしました。


「いいから、少し黙りなさい。いくら私達が父様のお気に入りとはいえ、その調子だと貴方も消されてしまうわ」


ルタは押し黙ります。それから、すぐにフレアは、堂々たる態度で神へと振り返りました。


「わかりましたわ。驚いてしまって申し訳ございません、お父様。それで、私たちのどちらかへのお役目とは?」


「ワシの頼みは、今しがた破壊した宇宙の新たなる創造じゃ」



「つまり、私達に新たなる星達を、銀河をつくりあげろ?っということでございますか?」


「その通りじゃ」


「ですが、先ほどのように他の文明を滅ぼす必要性が私には感じられませんでした。なぜなのです?」


「先ほどもいうたであろう?」


デウスの試すような視線にフレアは、頷くしかなかありませんでした。


「…………わかりましたわ。ルタ、いいわね」


「……、はい」


「流石のお主らといえども、いきなり言われても心が定まらんであろう。しばらくこちらの宮殿に住まうがよい。その間に、2人の力量を見て、ワシが選ぶとしよう」


「父様。ですが、あれほどの量の銀河を一つの形成ならば、私とルタの二人の方がよろしくては? 」


「それはならん。

この空間に入れるのは、一人だけじゃ。入れるようになるとすれば、それは一億年先となる。心しておくがよい」


「「一億年…!!」」


ふたりは目を見合わせます。


「父様!それは、私達では荷が重くございます!他の方は駄目なのですか?」


「残念ながら、お主かルタ以外に創生の魔法は使えんのだよ」


「そんな……」


「まだ時間はある。ゆっくりと休んでどちらか答えを聞かせてくれ」


「……、わかりました」



反論すれば同じく消されるかもしれない。そう思うと何もいえずに頷かざるおえず、彼女らは、足を動かすこともなく謁見の間から外に出ていました。


「あーあ、疲れた。本当に父様のすることはよくわからないわ。大丈夫?ルタ」


「うん、ねぇ、姉様、どうして父様は目の前で銀河を壊したの?」


「うん?あぁ、あれ?あれは牽制よ」


「牽制?なんでだれに?」


「私達によ。父様は私達の力を認めているけれども、それにともなって私達が自分の地位を追いやるんじゃないかって思っているのよ。

私は父様のあんな地位ごめんだわ」


「私もだわ。姉様。牽制にしたって、あそこまでしなくったって……」


「それは、恐らくだけども、見せしめも兼ねてるわ。私達にも、私達以外の誰かに向けて、きっと見せたいんでしょうね」


「それでもあんな簡単に壊してしまうなんて」


「えぇ、そうね」


「父様、一体どうして…」


「私には、わからないわ。わかるのは、あの中に、幾億の生命がいたのに、今はもう何もない真っ暗闇となってしまったことよ」


「あの中に新たなる世界を築くのが」


「「創生の女神」」


「姉様、私のあんな真っ暗な世界に一人ぼっちは嫌。それに姉様とも離れたくないわ」


「私もよ。でもね決定権は父様よ。…今の私にはどうしようもない。

………今は…ね。

考えても仕方ないわ。

ねぇ、ルタ、久しぶりの故郷よ。少し散歩でもしましょう」


「うん、姉様」



二人は、せめて久しぶりの故郷を堪能するために、城内の庭園を歩いて回ることにしました。


しばらく懐かしい昔話を語りながら二人は庭園を歩いていましたが、突然ルタが足を止めました。


「姉様、あれ」


ルタは、唐突に指で大きな樹を指差します。


「あら?あの樹がどうしたの?」

「ほら、あの二人の男性、私、見たことないわ」


「え?」


フレアは、なんのことだかわからずに首をひねりました。



「ほら、あっちに褐色に赤髪の男性に金髪に長い髪を結った男の人が凭れかかって寝てるじゃない」


ルタは懸命に姉のフレアに伝えようとしていますが、あまり姉には伝わっていません。


「あの樹なら見えるけれど、人?わからないわ」


「え?そんな!ほら、あそこにいるじゃない」


「うーん、見えないわね。けど、ルタがそこまで言うなら見に行きましょう。おいでレイン!」


口笛を鳴らせば最初に来たときに彼女らが乗っていたお獣が嬉しそうに飛んできて、二人を背にのせます。


「レイン、あの樹のそばまで」


「キュイイイイ」


「レイン、しーっ、寝てる人もいたから静かにね」



ルタの指示にレインはぐっと鳴き声をこらえて、ぐるぐると喉を鳴らしていた。


「ほら、誰もいないじゃない。」


フレアは樹の根本を指差します。

そこには本当に誰もいませんでした。

しかし、ルタは同じところを指差してどうして見えないの?とばかりに指を指し示しています。


「え?ほら?ここにいるじゃない。ねぇ?貴方、名前は?」


何もない所に指をさし語りかけるルタを、フレアは怪訝そうに見つめ、それと同時に、褐色の肌に、金色の瞳の男がルタを見上げました。


「お前、我らが見えているのか?」


「え?見えてるわ、どうして?」


「ルタ、誰と話しているの?」


「姉様!ほら、ここにいるではありませんか!赤髪に褐色の青年と金髪に、長い髪の青年が!ほら、ここに!」


ルタは、何もない樹の根本を指差して懸命姉に伝えようとその容姿や姿を語ります。


「!お前らは確か、デウスの娘達か。

あまり騒がないでくれるか?リィンが寝ているのだ」


「あっ、ごめんなさい。そちらの眠っている方はリィンというの?」


「あぁ、そうだ。お前らには先ほど会ったろう?」


「先ほど?」


「ねぇ、大丈夫ルタ?さっきのが、よほどショックだったのかしら?ねぇ、レイン?」


「グ~~ン」


「なるほどな。姉には見えていないのか。」


「え?見えてない!?ねぇ、貴方達は一体?」


「うぅ」


むずるように、金髪の男性は、黒い服の男の胸辺りには頭をすりよせます。


「女。静かにしろ」


「ふ、あー?」


「騒がしくしてすまない、リィン」


「うう?ニーチェ?」


ルタに見える光景には、褐色の肌に赤髪金眼の黒衣の騎士、そしてそんな彼に凭れかかる、長い金髪に白い肌、ぼんやりとした青い瞳の青年。金髪の青年がルタの方を見ると、彼女は頬を染め恥ずかしがりながらも、更に彼に近づきたくて、手を伸ばそうとしました。


「凄く綺麗な青い瞳」


近づくルタに赤髪の青年は彼女を睨み付けます


「女。勝手にリィンに触れるな、怪我するぞ」


「ニーチェ?」


「すまない、リィン。起こしてしまったのだな。

我らの主の娘だよ。リィン。

娘よ、それ以上リィンに近寄るな」


威嚇するように、ニーチェと呼ばれた男は唸りますそれに、ルタは負けじと睨み付けました。


「でも、私、彼とお話がしてみたいわ」


ニーチェと呼ばれた青年とルタにらみ合いを始めてしまいました。しかし、それは長くは続きません。


「ルタ!

どうしちゃったの?ルタ!」


彼女の肩をフレアは揺すります。


「きっと、さっきのショックで幻覚を見ているのね」


何もない所にむかって延々と話す妹にフレアは、慌てて妹を掴むと、レインへと投げて、レインはルタを見事にキャッチします。


「え?姉様!なんで!まだ話しは終わってないわ!」


「いいから!早く部屋で休むわよ、ほら、レイン!行って」


浮かびあがるレインからルタは叫びました。


「リィン!私はルタよ!覚えてて!!」




レインに乗せられながら、ルタはまだ、懸命にリィンに呼びかけ続けていました。




「はぁ………、なんだか、騒がしいな女神だったな。

リィン」


そう言って、彼はリィンの長い髪に口づけてから髪を鋤きます。


「………ルタ?」


「おーい、さっき起きたろ?リィン。本当に寝起きが悪いな」


鼻を摘ままれてようやく目を開けたリィンは大きく伸びをします。


「うぅーん、はぁ。あ?ニーチェ……」


「はよう、リィン。ちゃんと目ぇ覚めたか?」


「うん、少しだけね。

ん?あれ?さっきのは確か女神様だよね?

ここは交われない交差点のはずなのに、あの子、僕らを見えていたね」


「そうだな、この交差点は本来デウスにさえも見えないのはずなんだが」


「この交差点で、僕らを見つける人がいるなんて…凄いね」

「あぁ本当にな」

「………ニーチェ。風が吹きはじめた。嫌な風だ」


「物騒な事をいうなよっと言いたいが、お前が目開けたのだから何かあるのだろう。

リィン。お前を起こした敵は、俺が全て殲滅しよう」


「ニーチェはいつも僕に甘いね」


「そりゃあ、大事な相棒だからな」


ニーチェは、リィンを離さないように抱き締めます。


「はは、ニーチェ。止めろよ。

それにほら、くるよ。下からだ。少し堅いのがいる」


「そうか、なら、デウスの元にいこうか。狩の時間だ」


「うん、そうだね。デウスの作った世界を僕は守らないと。

そのために、僕は有るのだから」


「相変わらずお前は真面目だな。だけど、そう言うところ、好きだぜ。

なら、俺はお前が守ろうとするもののための刃になってやるよ」


「ありがとう。ねぇ、ニーチェ」


「なんだ?」


「俺たちはずっと一緒?」


「?おいおい、当たり前だろ。

俺とお前は双刀。一対の剣なのだから。だれが手離すかよ」


そう言ってニーチェはリィンを抱きしめリィンは困ったように笑いました。


「そう、そうだね。

だから、この後に何が起きても僕らは永遠に一緒だよね」


青い瞳は、どこか遠く、もっと先の未来を見るかのように瞬いています。それを見ないようにニーチェは、リィンの手を引いて二人して姿を消しました。














しばらくすると、城全体を揺らす大きな衝撃が走り、フレアとルタは兵に何事かを確認しましたがもう、ヴィーはデウス様が片付けましたのでご安心をとの一言。

それから、数日、特段何語とも起こることはなく、ルタは何度か彼らのいた同じ場所を訪れましたが、結局彼らに会うことはできず、ほどなくしてフレアとルタはデウスに呼び出されました。



「よくきたな。二人とも。」


「えぇ、お呼びいただきましたので」


「早速だが、件の案件については、ルタにしようと思う」


「!?創生の女神をルタにするというのですか……

お義父様!なぜですか!?私の方がルタより優れています!!それにルタをたった1人荒野に放り出せというのですか!!」



フレアは激昂し髪の毛も逆立てています。

それにデウスは興味無さそうに続けます。


「ルタの方が創生の力は優れておる。もう決定事項じゃ、

ルタよ。旅立ちの支度を整えるが良い」


それだけデウスがいうと、もう謁見の間へは入れなくなってしまいました。


「お義父様!!お待ち下さい!!ルタ………なんで」


「……姉さま、私、創生の女神になりたくない。

あんなひとりぼっちの世界になんて行きたくない」


彼女はさめざめと泣き出しました。


「わかっているわ。姉様に任せなさい。

私が、私がなんとかするわ」

「………姉さま?」

「いいから、ね」



そう言って、フレアはルタをベッドにつれて休ませると、直ぐ様外へと飛び出していきました。



「ヴィー!ヴィーはいる?」


「フレア様、いかがなされました?」


「あなたにお願いがあるの」



「??」


ヴィーに向かってフレアは三つほど、用意してほしいものを伝えました。

ヴィーは、いつも通り御意と伝え壁に消えて直ぐに品々を用意してフレアに渡しました。


「ありがとう」


「フレア様、あなた様が何をされようとも運命は変わりませんよ」


「ヴィー、それでも私は何もせずにはいられないわ」



彼女はその場でヴィーと別れ次なる行動へと移りました。




「後は、私の方がルタよりも優れていることを立証すればいい。そうすればあんな暗くて何もない所にルタを一人で行かせなくていい」


そう言って、彼女は父親の宝物庫に向かいます。

普通の神ならば入ることなど出来ないでしょう。

しかし、彼女には並外れた力があります。

あっという間にお目当ての品を見つけ出して盗み出してしまいました。



「ふふ、見つけた。

父様のお気に入りの双剣。

銘は破壊と守護。素晴らしい力が籠ってる。

それに綺麗な刀………」


一つは黒刀。

装飾に金色、に赤い宝石。もう一振りは真っ白な刀身に同じく金色の鍔。そして青い宝石の刀です。

彼女はうっとりと刀をなでます。


「これなら私の力で神へと変え、父をねじ伏せられるわ」


彼女は、美しい曲線を幾つも描き文字を書き込んでいきます。



「さぁ、目覚めよ!破壊と守護の剣よ」


彼女が呪文を唱え、部屋に小さな落雷が剣達に堕ちました。

現れたのは二人の男性、褐色の青年に寄りかかるように、白い肌の青年が目を閉じていました。


「どうやら成功のようね」


「……お前は誰だ」


褐色の男性がフレアを睨み付けます。


「私はフレア。

あんたらを、使われるだけの剣から神格のある神へと生まれ変わらせたわ」


「………そんな無駄なことをして、お前の目的は何だ」


「私の目的は一つ。父であるゼウスの説得を手伝いなさい」


「説得だと?」


「ええそうよ。

貴方達が壊したあの穴蔵のような宇宙を再建する役割を妹が賜ったわ。

だけど、そんな危険なことを妹にさせたくないのよ。

だから、あんたたちは私の方が向いている進言なさい。なんなら、父様を殺してくれてもいいわ」


「はぁ?お前は、なんでそこまでするんだ?」


こいつは何を言っているのだと、呆れた表情で彼はフレアを見つめました。


「妹のためよ」


「妹ねぇ、あの青髪の女か?はっ!やなこった」


「……よく、私に逆らえるわね」


ざわざわとフレアの髪が逆立っていきます。


「貴様のごときでは、俺やリィンを扱えないといっている。そんな奴等の言うことなど聞けるものか!」


「あんたねぇ、こんな綺麗な女性が頼んでるのだから二つ返事でOKしなさいよ」


「やーなこった」


「まっ、腹立たしい剣ね!いいわ。そっちのリィン君だっけ?彼にお願いするわ」



未だに目覚めることのない青年に手を伸ばそうとする彼女手から守るように青年は彼を抱え込みます。


「リィンに触るな!!」


男を彼女を壁に、叩きつけました。

恐るべき力に彼女は防御壁を張って難を逃れしたが、辺りはばらばらになってしまいました。


「ふん………わかったわよ、その子には触らない。

それじゃあさ、取り引きしましょう?」


「剣相手に取り引きだと?」


リィンって子は女の子なのかしら?それともこいつは男色家なのかしら?そんな、事を頭に一瞬過らせながら、フレアは話を続けます。


「私は妹のために、その創生の女神の役割を代わってあげたいだけなの。

代わりに私に出来ることなら、あんた達の望みを叶えてあげるわ」


「……望み…か?………リィンと居れれば俺はそれでいい」


「その子といたいだけ?

なら、私があんた達を新しい世界に連れてってあげる」


「?」


「私が創生の女神になって、あの世界に下ればれ、デウス父様も簡単には手が出せないわ。

そこであんた達だけの世界を作ってあげる」


「俺とリィンだけの世界……」


「そう、二人だけの世界、他に何の邪魔もはいらない世界」


「二人だけ……わかった」


あまりにもあっさりとした返事に拍子抜けになりかかけながら、フレアは必死で堪えました。


「……OK、じゃあ、最初から事を起こしたくないわ。最初はもう一度お願いするの。あんた達もあたしの方が力が有ることを示してちょうだい」


「……よかろう。リィンそれでいいか?リィン?」


「その子、まだ寝てるわね」


「おい、リィン……起きないな」


「お話できないなら、可哀想だし寝かせておいてあげたらどう?」


「…そうだな。

この程度のことでリィンを消耗させたくない。

少しの間だけ、だ。後でな。リィン。

女、このまま奴の部屋に向かうぞ」


「私はフレアよ」


この子、相方への執着が酷すぎるわ。オデコにキスまでして、私はさっきから何を見せられてるのかしら?


まぁ、いいわ。ルタが幸せになれるなら何だってやってやるわ。


「ヴィー、ヴィーちょっと来てちょうだい」

「御意」


「おい、ヴィー。お前、ゼウスの所への道わかるだろ?」

「はて、こちらの方は?」

「ええ、お父様に紹介したい方なの。粗相のないようにね」

「………御意」


彼が輝くと床が光、彼女らはまた、足を踏み入れました。

「フレア、先ほどから何を悪巧みをしておるかと思えば」

「お父様!!見てくださいませ!」


そう言って、彼女は、ニーチェを指差した。



「父様の剣から生み出したの。

ルタは確かに創生の魔法は使えるわ!でも、無機物から生き物を産み出すのは苦手だったはずよ!つまり、私の方がルタよりも才能があるわ!」

「……ふむ、しかし、なぜニーチェだけなのじゃ、フレア何が言いたいのじゃ!」


「リィンは疲れて寝てるよ、おっさんは俺らの使い方荒すぎ」


「ちょっと黙ってなさい!!

お父様!考え直してください!

創生の女神を私にしてください!!」


「……フレアや。お主の気持ちは、ようよう理解しているつもりじゃ」


「では!」

「フレア、お主だけに、伝えねばならない事がある」


「?お父様?」


「おっさん!早く済ませろ!俺はリィンを待たせてるんだ!話が長いなら俺は帰るぜ」


「お前は、人の姿になっても態度があらいのぅ」

「うっせっ」


「さて、フレアや。

お前に伝えねばならないこと。

それはルタのことじゃ」


「ルタのこと?それなら私が一番に存じています!」



「大事な話じゃ!よくきけ!!」


「っ」


「よいか、ルタはのう。

あの娘はお前の妹ではない。

それどころか、ワシらの記憶さえも操ることのできる絶大な魔女じゃ」


「?!何いってるの父様!ルタが妹じゃない?嘘をつかないでよ!!」


「それはのぅ、あの娘を永遠に葬るためじゃ」


「…なんで、そんなことを」


「お前にはまだいいとうなかったんじゃが仕方あるまいな。ルタを早急に呼び出し、消すとしよう」

「なんでよ!消さなくったていいじゃない!!ニーチェ!来なさい!」

「その必要なさそうだぜ」


ふんわりとした青い髪がたなびいています。

普段の柔らかな物腰ではなく、冷たい瞳でデウスを彼女は睨み付けていました。



「あら、流石デウス。

私の正体がバレていましたのね」


「ルタ、貴様どうやって入ってきた!!」


「ええ、姉様と同じ方法ですよ。ね、ヴィー」


「御意」


「なぜ通した!ヴィー」


「それは、私の従う相手が此方の方だからでございます」


「長かったわ、すべての記憶を弄り私の存在を刻みそうして、ようやく取り返しました」


その手には真っ白な刀身の剣の化身。


「リィン!

女!…汚ならしい手で俺のリィンに手を触れるな!!」



「どちらがですか!ニーチェ!、

貴方が私の騎士を、生きていた彼を殺して私から奪いその上亡骸も魂も奪いとり剣に封じ込めたのは、貴方でしょう。ニーチェ!

その姿だって、姉様の力じゃない。

あんたは元から化けれるのにわざとらしく現れたのはなぜ!」


「っぐ、お前は一体……」


「私はそこのデウスに、そして貴方に全てを奪われた者。

あぁ、でもようやく、彼を取り返すとができました………」


ルタは愛おしそうに剣を撫でます。


「デウスの命も奪えればとは思いましたが、どうやら今の私には出来ないようです」


「ようやく、本性をあらわしおったか!ネズミめ!」



剣となったリィンを彼女は軽々と振るいます。

嶄檄がアチコチ破壊していきました。


「ぬぅ!小娘が!!

リィンよ!その娘は主の主ではない!ニーチェの元に戻らぬか!」


デウスはリィンを怒鳴り付け、青い宝玉が輝きリィンが苦しみだしました。


「「リィン!!」」

「おっさん!なにしやがる!!リィンが苦しんでいるだろうが!!」


ニーチェは、瞳をぎらつかせデウスへと飛びかかります。


「やめんか!ニーチェ!!」


「やかましい!リィンに仇なすのならデウス!お前であろうと殺す!!」


「チィ!血迷いおったかニーチェ!」


ニーチェとデウスが争う中、ルタはリィンに繋がれている宝珠をその手で破壊しようとしますが、なかなか割れません。


「壊れない!」


何度も何度も、壊そうと魔法を当てますが皹さえはいりません。


「ルタ………貸しなさい 」

「フレア……姉様!」

「いいから、貴方に悪いことはしないわ」


「どうして、……私は貴方を騙していたのに」

「そんなこといいから、貴方の手を貸して。

だって、貴方と私で出来ないことなんてないでしょう」


「姉様…」


ルタひとりでは、どうしても砕けなかった宝玉が、彼女と二人の神力を込めた途端に、パリンと音を立てて宝珠は粉々に砕いてしまいました。



「フレア!何を!!」


デウスはフレアを鬼のような形相で睨み付けていました。


「私は妹のためなら何だってするの!」

「そうか、もはや、お前のような娘はいらん!」


「おっさん!そっちにはリィンがいるだろうが!!」


ニーチェが、デウスを壁に叩きつけます。

その間にフレアは、デウスが開こうとした亜空間を強引に開きました。

「姉様!そんな無茶をすれば、死んでしまいます!」


「いいから、ルタ、良いこと。よくお聞きなさい。父様はリィンとニーチェが揃った時にしかあの、破壊はできないわ。

貴方はここから、どこか遠くへお逃げなさい!」


「姉様!どうして?

私は貴方を………」


「何も言わなくても姉様はわかっているから、さぁ」


そう微笑んでフレアは、ルタを次元の穴へと突き落としました。







「御姉様ーーーーーー!!!」


ルタの叫びが部屋中に響き渡りました。




落ちた世界は何もない真っ暗闇です。

その中にあるのは唯一の光源である元々は剣の青年。リィンです。

彼は、ぼんやりと辺りを眺めていました。



「あははは……は、は、

やっと、貴方を取り返せた………」


ルタは涙を流しながら壊れたように笑っています。


「…?」


不思議そうな顔でリィンは彼女を見下ろしました。


「ふふ、笑ってごめんなさい。

そうね。貴方はもう、何も覚えてないのですね」



「………」



「私は、私たちはね。あのデウスに全てを奪われたもの。

貴方は私を守るために戦い殺され、そして亡骸ごと奪われ挙げ句にこのような剣に変えられてしまったの、ごめんなさい。守れなくてごめんなさい」



ポロポロと彼女は涙を流しましたが、彼は何を言っているのかさえ解らずにいました。


「今の貴方にはわからないかもしれないわ。ごめんね。でも、言わせて、貴方はとても強くて優しい人だったの。フレア姉様のように、

なのに、あの男は貴方の身体も魂も奪い、こんな、こんな事をしていたなんて………

貴方を使って世界を終わらせ飽きたら壊していたなんて。もう、貴方にそんなことさせないわ」


彼女は忌々しそうにもう視ることのできない城を睨み付けます。



「もうデウスには世界を壊せないわ。

ニーチェが力を振るうには貴方が必要だもの」


「………ニーチェ」


ニーチェの名前にだけ、彼は反応を示しました。


「彼は、きっと、いいえ、必ず貴方を奪い返しにくるでしょうね。貴方は彼が大切?」


「………うん」

「そう。

でも、ごめんね。もう貴方を渡しはしないわ」

「………なら僕を、君の手で壊せばいい」


澄んだ青い瞳が真っ直ぐに彼女を見つめていました。その瞳に怖れも侮蔑もなく、ただただ青く澄んだ空のようです。

彼女は悲しげに微笑んで彼の頬をなでました。


「……リィン。私には貴方は壊せない。

だから私は………貴方の記憶を壊すわ」


「……………!?」


皿が割れたような軽い音ともに、彼は、物言わず崩れ落ちました。それを、そっと彼女は抱き締めます。


「………ごめんね。

もう離さないから、ずっと側にいてね」


彼女は優しく微笑みました。

拙い文章を、ここまでお読みくださりありがとうございました。

この短編は、長編の背後設定となっております。


この後、ルタとリィンがどうなったか?もしくはフレアとニーチェはどうなったの?と思って頂ければ幸いです。

この辺りは長編にて明かして行く予定です。






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