表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/94

45、 コタロー期待する


「ねえコタロー、 やっぱり雑貨を見に行っちゃ駄目? 」


「…… ったく、 しょうがないな…… コイツらはロッカーに入れとこう。 氷と一緒に放り込んどけば大丈夫だろ」


「やった〜! 」



ーー 『見に行っちゃ駄目?』って、 聞いた時点でもう行く気満々なくせに。 そんな上目遣いでお願いされたら駄目って言えるわけないだろっ! お前は小悪魔かっ!



「いいよ、 ほら、 雑貨ってどの店だよ」

「やった〜! あのねぇ、 2階の新しいお店! 」


ああ俺って、 本当にコイツには甘々だ。




俺たちが小さい頃から良く通っているショッピングモールは、 学校から自転車で北東に12分程、 家からだと北西に12分程の距離……


つまり、 家と学校を結んだ三角形の頂点に位置しているので、 学校帰りの寄り道にはもってこいの場所だ。



2階建ての建物の1階部分には衣料品やアクセサリーのブティックの他に、 スーパーマーケットやレストラン街、 家電店などが併設されていて、 2階に上がると雑貨や本屋、 ゲームセンターに映画館まである。



ハナのことだ、 雑貨が見たいと言っても、 どうせ買い物途中で急に思いついただけで、 大して欲しいものがある訳ではないんだろう。


見たい店があるのなら、焼き肉パーティーの買い出しをする前に言ってくれよ…… とは思ったけれど、 ハナが欲しいものに興味はあるので、 とりあえずお付き合いする事にした。



ハナがエスカレーターで転びそうになったのを幸いに恋人(つな)ぎに成功した俺は、 絶対に離さないという意気込みでギュッと指を(から)めていたけれど、 目的の雑貨屋に着いた途端、 「わっ、 可愛い! 」の声と共に、 あっけなく逃げられた。



ハナは真っ先にアクセサリーコーナーに走り、 ヘアゴムやシュシュを物色(ぶっしょく)している。


そしていつものように、 めちゃくちゃ真剣に悩んでいる。



ーー ああ、 紺色のシュシュか茶色かで迷ってるのか。 両方買えば良さそうなもんだけど、 どうせお小遣いを使い込んで予算が厳しいんだろうな。



「ハナ、 どっちを買うの? 」

「う〜ん、 (こん)色か茶色かで迷っててさ。 校則だと黒か紺か茶色でしょ? でも黒は嫌かな……って」


「両方買えば? 」

「お小遣いが残り少ないから、 ここで使い過ぎたくない」


俺が隣に立って聞いたら、 案の定予算の心配をしている。


「紺色にしとけば? 」

「えっ、コタローは紺がいいと思う? 」


「どっちもいいと思うけど、 とりあえず紺にしとけよ」

「ん? 良く分かんないけど、 まあいいや、 紺色にしとこっと」



「あっ、 私がレジに並んでる間、 コタローは勝手にいろいろ見ててね」


そう言い残して行ったので、 俺は適当に店内を見て回ることにした。



文房具コーナーでペンケースを触っていたら、 視線を感じてバッと顔を上げた。


レジの列に並んでるハナと目が合ったと思ったら、 パッと()らされる。



ーー んんっ?



ペンケースを触る。 視線。 ハナと目が合って逸らされる。

それを無意味に3回くらい繰り返した。



念のため、 店内で移動してみた。 意味もなくぬいぐるみなんぞを触ってみる。 視線。 ハナと目が合う。 逸らされる。



ーー んんんっ?



これはなんか変だぞ。 何故だかめちゃくちゃ見られてる。


ハナの行動パターンは大抵把握(はあく)してるはずなのに、 これは新しいやつだ。



頭の中にハテナマークを沢山浮かべながら落ち着かずにいたら、 買い物を済ませたハナが寄ってきて、 「ねえねえ、 コタローってイラックマのぬいぐるみが欲しいの? 」と聞いてきた?



「えっ、 別に欲しくないけど…… なんで? 」

「だってさっき触ってたじゃん、 イラックマ」


「ああ…… ただそこにあったから手に取っただけで…… どうして? 」

「ううん、 別に」



「買い物は終わった? この店はもういい? 」


店を出ようと足を外に向けたら、 腕を掴んで止められた。



「じゃあさ、 ペンケースが欲しいの? 」

「えっ、 なんで? 」


「さっき触ってたじゃん、 ペンケース」

「ああ…… 今使ってるやつのファスナーがバカになってきたから、 そろそろ買い替えどきかなって思って見てたんだけど…… 」


「どれ?! 」


食い気味で聞かれて、 ついでにさっきのペンケースコーナーに引っ張って連れて行かれた。



「どれ?! 」

「えっ? 」



ーー あれっ? コイツってもしかして、 俺に何かプレゼントしようと思ってないか? 誕生日か? 誕生日プレゼントなのかっ?!

そしてこの流れは、 サプライズを狙ってないか?



だけど変だ。

俺へのプレゼントだったら、 ハナはこんな風に(さぐ)りを入れたりしないし、 ましてやサプライズなんて手の込んだことはしない。


自分が俺の部屋に置きたいものを独断(どくだん)で選ぶか、 もしくは一緒に買い物に来た時に、「コレでいいよね? 」で(そく)決まりだ。



なんなんだ? なんでか今日は新しいパターンが多くて気持ち悪い。 ハナらしくない。



う〜ん……。

ちょっと逆に探りを入れてみるか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ