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第9話 廊下

 妙議団の本部へと正行と倫子の2人は入って行った。

 本部は案外広い。

 何もない、電灯だけが付いている長い廊下をただひたすらに歩き続けていた。

 その間、2人は無言であった。

 理由は明白であった。

 正行からしてはからかわれてしまうのが分かり切っていたので会話をしようとしていなかった。

 そして、倫子はというと……


 (こ、この無言の時間つらいよお、で、でもいつもからかっちゃうし、正行君に悪いことばっかしちゃって……ああ、どうしよう)



 倫子の心の中はこんな感じになっていた。

 素直になればいいのに慣れずに悩んでいただけだった。

 難しい乙女心だった。


 長い長い廊下をさらに歩き続ける。

 出口が一向に見えない。

 相変らず広いこの本部について正行はいい加減文句を言いたくなっていた。大きい家に憧れていた時期も昔はあったが、今になってみればいろいろと大変なことに気づいたのでそんなあこがれはすでになくなっている。それもこれもすべてこの妙議団の本部が広いおかげであった。


 「そろそろたどり着くよね?」


 「はい、そろそろのはずですけど」


 「相変らず、広いよね」


 「広いですね、もう少し狭くてもいいぐらいですのに」


 「廊下とかね」


 「その通りです」


 長すぎたためか不自然な会話から始まり、普通に会話をしていた。2人の無言の時間はやはりつらかったようだ。


 「……ねえ、倫子さん。ちょっと聞きたいことがあるんですけど?」


 「なあに?」


 「何で、俺をからかうんですか?」


 「ふぇ」


 正行の言葉に倫子は驚いた。

 

 「そ、それは……」


 倫子は自分の内心を悟られないように誤魔化そうとするも言葉が全く出てこなかった。


 「倫子さん?」


 「そ、それは」


 倫子が覚悟を決めて言おうとしたとき、


 「なあに、2人してイチャついているのよ。まったく、一応ここが公共? の場なんだからね」


 2人の会話に割り込んできたのは妙議団団長の木村詩織だった。

 正行は周りの様子を見る。

 知らないうちに廊下は終わっており、本部の中心付近にまでたどり着いていたようだった。

 会議室も近くにある。


 「い、イチャイチャ……」


 詩織の言葉に倫子だけがかなり動揺していた。

 正行の方はそうではなかった。


 「イチャイチャしてませんよ。まったく、団長はいつも冗談がきついんだから」


 呆れているだけだった。

 詩織のいつもの戯言に対してこのような態度をとっている。


 「冗談……」


 そんな正行の言葉を隣にいた倫子は本気で傷ついたようだった。

 そのことに正行は気づかない。

 気づいたら本気で怒られるものだと思ってもいない。


 「まあ、いいや。大事な話があるのだから早く会議室に入ってね」


 詩織に言われるがまま会議室に2人は入って行くのだった。

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