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第5話 勝利


美久の首元に異界生物の触手が迫る──



 「危ないいいいいいいいいいいいいい!」



 正行は叫んだ。


 これは、間に合うのか。とてもギリギリのところであった。距離的にはぎりぎりであった。これならばもう少し近づいておけば、必死にそう思いながら美久に駆け寄る正行。


 正行の必死の叫びに対して美久の方はどうかというと、



 「うざいわよっ!」



 しかし、正行の助けなどとてもいるような状況ではなかった。異界生物は美久を襲った。そう、襲ったのだ。美久はちゃんと異界生物に襲われた。しかしながら、襲われたはずの美久は異界生物の触手を手で持ちそのまま異界生物を軽く持ち上げた。それは、ハンマー投げの選手がハンマーを投げる時に回転しているような光景が正行の目の前に出現した。



 「はあああああああああああ」



 美久は大きく声を上げる。


 ぐるんぐるん。触手を持たれた異界生物は為すすべなく美久によって回転させられる。1周、2周、3周と何周も何周も回され続ける。これが人間であったのならばとっくに目が回ってギブアップしているころだろう。



 「とりゃああああああああああ」



 美久が女子とは思えないような声を出してそのまま異界生物を空高くへと投げる。


 異界生物は空へと消えていった。よく漫画とかで見る空に飛ばされた後にキラリンと光るまさにその光景を見せつけられた。……美久は日本のオリンピックのハンマー投げ選手として是非とも参加すべきじゃないかな……あははは。はあ。現実を少し認めるのがつらくなってきた。



 「よし、終わった」



 美久は、正行がドン引きしていることも知らずに笑顔で目をキラキラと輝いた状態で額の汗を手で拭く。



 「……」



 「ん? 正行どうしたの?」



 正行がドン引きしていることに美久が気付いたのはそれからおよそ1分経過した時のことだ。


 正行は何も言えなかった。


 正行は、美久に言いたいことがたくさんあり過ぎて頭の中がパンクしていた。言いたいことはたくさんあったのだ。しかし、頭の中でまず何から突っ込もうか考えていたら思考が停止してしまった。そんな状況になってしまったのだ。



 「おーい、正行ー、ま・さ・ゆ・きいー」



 美久はフリーズ状態になってしまった正行に反応を促すために名前を何度も連呼する。それを何度か繰り返したところでようやく固まっていた正行が動いた。



 「はっ! っというか、あれ完全に俺が助けに行く流れだよね。普通に倒してしまっていいのか?」



 正行は美久に対して非難を言う。しかし、美久の方はそのことについて悪びれているもなくごめんごめんと軽く謝るだけであった。



 「ごめんね、正行がそこまで怒るとは思ってもいなかった……もしかして私のこと心配してくれていたの?」



 美久のその言葉に対して思わず言葉を失ってしまった正行であったが、すぐに行動停止状態から立ち直り反論をする。



 「そ、そんなことないだろっ!」



 ただ、正行のその言葉にはかなりの動揺があった。完全にあせった状態であった。正行が美久のことを心配していたのは事実である。そのことを美久に気が付いてほしくなかった正行であるが、隠そうとしてもかなり動揺してしまっていたので、すべては無駄となり完全に美久に気づかれてしまっていた。


 美久の方は、そのことを知り、かなり照れてしまった。美久の頬は少しだが赤く染まっていた。そのことに動揺している正行は気づいていないし。美久本人も正行のことを考えていたため自身の頬が赤く染まっているなんてことに気づいていなかった。

 2人して照れてしまっていた。

 だが、この場にずっといるわけにはいかなかった。


 「しかし、早く報告しに行かないと」


 そう。正行たちにはやることがあったのだ。それが報告。異界生物を倒した後団長に報告しなければいけないのだ。と、言ってもだ。団長はすぐ近くにいる。緑のドームに異界生物が現れ、警察と共に規制線を張る仕事を団長はしているからだ。緑のドームの外側に即席で作られた本部へと正行と美玖の2人は向かう。

 

 「だんちょう、仕事終わりましたよ」


 美玖が終わったということを伝える。

 団長と呼ばれた人物は本部の奥から出てきて答える。


 「はいはーい、おつかれさま。いいねいいね。2人とも強くてしおりんめっちゃうれしいよお」


 正行は、そのまま帰ろうとした。


 「ちょ、ちょっと待ってよ。正行―、冷たいよー。ノリが悪いよお」


 連絡が来た時のテンションもあれであったが、今のテンションもあれであった。子のテンションでよく団長をしているなと正行は思っていた。


 「俺は、仕事が終わったんで今から学校行きたいんですけど」


 「そうだねえ。真面目だねえ」


 詩織に真面目だと言われる。しかし、正行は別に自分のことを真面目だとは思ってはいない。ただ、学校をさぼることをしたくないだけなのだ。それに、成績に響くという理由が一番であった。大学進学を目指している以上、異界生物を倒したらさっさと学校に戻る。勉強をする。それが条件でこの仕事を引き受けた経緯がある。


 「じゃあ、もう行きますよ」


 「はいはーい」


 そう言って本当に正行は学校へと向かってしまった。

 その場に残った詩織、そして美玖はその姿を見て言う。


 「本当にまじめねえ」


 「だんちょうも見習ってみたらどうですか?」


 「あはは。それはいやだねえ」


 美玖は相変わらずこの人はということを思っていた。しかし、そんなに勉強をしたいって言っているのにどうして正行は異界生物を討伐するこの仕事をしているのだろうか。美玖は疑問に思った。しかし、それを詩織に聞くわけにもいかず胸の中にしまい込んだのだった。



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