第41話 覚悟
「まず、先々代妙義団団長木村椎菜はS級異界生物によって殺された──」
最初の第一声はかなり重々しいものであった。
全員が一気に緊張する。
それから、詩織は前回の戦いについて語り始める。
「今から10年前にS級異界生物が出現したのは上野村の不二洞という鍾乳洞だったの。その異界生物はそれほど大きいものではなかったけど、破壊力が尋常ではなかった。熊のような体に鳥のようなくちばしをもっていた。そのような話を先の戦いに参加した者から聞いた。それほど大きくはないが、破壊力が強く多くの者が異界生物の攻撃によって殺された。姉もギリギリの戦いで攻撃をかわしていたらしいが最後に相打ちとなった攻撃によって体が……真っ二つになってしまった。私の姉の遺体を見た時に異界生物を何としても駆逐したい。そう思った。みんなも次の戦いは死者が出てしまうかもしれない。甚大な被害が出るのは分かっている。それでも戦う覚悟はある?」
「……」
会議室はシーンとしていた。
静かすぎて誰かがつばをごくりと飲む音が聞こえた。
斜め前の男は顔が真っ青になっていた。前の女は震えていた。
正行は、自分の手を見る。手が震えていた。覚悟は決まっている。正行はずっとそう思っていた。しかし、手が震えているのを見て、まだまだ自分にも覚悟が決まっていない。そう思い知らされた。だが、正行としてもすべての異界生物を倒すことが目標である。それにはS級異界生物ももちろん含まれる。
「もちろん、戦うに決まっている!」
正行は、シーンとした空気の中1人立ち上がり叫ぶ。
周りはいきなり叫び出した正行をきょとんと見る。だが、それは一瞬だった。次の瞬間から変わる。
「ああ、俺もだ!」
「私も!」
「あんな化け物に負けてたまるか!」
「やるぜ!」
正行に続いて次々と叫ぶ。正行の覚悟を聞いて、他の者も自分を奮い立たせるため立ち上がる。
「……」
詩織はその様子を見て黙っていた。
「みんな、頼む。群馬の未来のために」
山名知事の目元に涙が見えた。
その後、具体的な作戦について話が移る。
「では、今回の作戦について伊香保榛名団団長から話してもらう」
「では、作戦に移る。今回のS級異界生物が現れたのは草津白根山だ。湯釜にいる。そのため、場所的にこっちが不利だ。敵のいる場所が分かっているが、その姿についてはまだよくわかっていない。なので、まずは敵の正体について見極めたいと思う。そこで先遣隊を派遣する。各団団長で話し合った結果、妙義団からは林正行、榛名団からは町田萌恵、赤城団からは金井凛を派遣することにした。3人はいいか?」
「はい」
「はい!」
「は、はい」
正行はいきなり自分の名前が呼ばれたことに驚きびっくりしてしまった。仕方ない。事前にそのような話を一切聞いていなかったのだから。
「では、3人はこれより草津に向かってくれ」
「「「了解しました!」」」
こうして、正行は流されるまま草津に向かうことになったのだった──




