第39話 行方
正行は、裕也に行き先も伝えられず一緒に歩いていた。
正行は自転車登校なので自転車を押している。学校を出て駅まで行く。上毛電鉄の駅である。上毛電鉄は、自転車を乗せて乗車することが可能なため正行は押していた自転車をそのまま電車の車内へと入れ込む。
「で、こっちは中央前橋方面だな」
「ああ、そうだな」
正行たちが乗った電車は上毛電鉄の前橋市側の終点中央前橋駅方面であった。ちなみに反対側は桐生市の西桐生駅にある。
ガタゴトガトゴト
電車のジョイント音が響き渡る。
「いい加減に行き先を教えてくれよ」
「まあまあ待て」
裕也は相変わらず教えてくれなかった。
そんなにもったいぶらなくてもいいのに。正行はそのように思っていた。
中央前橋駅に着くと二人は再び歩き始めた。方向は前橋駅方面であった。
上毛電鉄の中央前橋駅とJR両毛線の前橋駅は1キロほど離れている。だから、益を出たらバスに乗るか歩いて向かうしかない。
正行は前橋駅に向かうのかなと思った。しかし、それが間違いだということにすぐ気づいた。国道50号との交差点で前橋駅に行くにはまっすぐ行かないといけない。しかし、その交差点を右に曲がった。その時点で正行はある程度どこに向かっているのか理解が付いた。だが、どうしてそこへ向かっているのか分からなかった。
正行は、気付いていないふりをしてどうでもいいような会話をする。
今日の話。学校での話。裕也の彼女の話。リア充〇ねという話。
そんなこんなの話をしている間に目的地に着いた。
「……やはりか」
「やっぱり気づいていた?」
正行の目の前には高くそびえ立つビルがあった。
群馬県で一番高い建物。群馬県のどこにいても目立つ建物である。そう、これこそが群馬県庁である。
「なぜ、県庁に?」
正行は疑問を言う。
裕也はそんな疑問を聞いているはずなのにまったく聞かずにこっちに来いと言い、県庁の中に入る。
「どこに行くんだよ」
正行は何度も言う。しかし、まったく聞いてもらえない。
県庁の中のエレベーターに乗ると33階ある県庁の中間あたりの階で降りる。
「さあ、この部屋だ」
正行は裕也に言われるとそのまま部屋の中に入る。
そこには妙義団、榛名団、赤城団のメンバーが勢ぞろいしていたのであった──




