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白銀の竜  作者: 夕闇 夜桜
第一章
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第五話:夢か現実か


 ――俺は一体、何をやってるんだろう?


 白銀竜・ティルファリーナから能力(ちから)を与えられたというのに、彼女と並んで戦わせてもらうことすら出来ず、その力を発揮することすら出来ずにいる。


 ――もしかして、ティルファがあの場所から離れるために……?


 今まで何度も何度も浮かんだその思考に、それはないと振り払う。

 そんな理由であれば、竜徽結晶(りゅうきけっしょう)があろうと、ティルファリーナはもうユディルの元を離れているはずだ。


 ――だったら、何で……


 そう思ったのと同時に、どこから発生したのか、円を描くように炎が出現する。


『――ユディルっ!!』


 よく聞きなれた声が響いてくる。

 そちらに目を向ければ、炎に包まれるティルファリーナが自身(ユディル)に向けて何かを言っている。


『ごめんね。一緒に居られなくて』


 その一言で、この後の彼女がどうなるのかなど、容易に想像できてしまう。


「――ティルファ!」


 これが夢だろうが現実だろうが、どちらでもいい。

 彼女に対して、不信感のようなものはあったが、命に関わることについてまでは、何も言ってなかったはずだ。

 綺麗な白銀の鱗が、火に燃やされ続けることで、どんどん黒ずんでいくのが見て分かる。あんなに綺麗で、汚したくないとすら思えてしまうその鱗が、あっさりとこうも容易く黒ずんでいく。

 もし、何者かによって、この炎が放たれたのだとすれば、何故その人物はそんなことをしたのだろうか。


 ――いや、そんなことよりも。


 彼女が、自分の前からいなくなったら。

 そんなことが、繰り返し頭の中を(よぎ)っていく。


「っ、ティルファは――白銀竜・ティルファリーナは、俺の相棒(パートナー)だ! どこの誰だか知らないが、そいつに手を出すな! もうこれ以上、手を出し続けるなら、俺が許さんぞ!!」


 この言葉に、少しばかり目を見開いたティルファリーナがどんな想いを抱いたのかは、ユディルには分からない。

 けれど、返事とも取れる彼女の言葉は、聞こえにくいはずなのに、耳へとはっきりと聞こえてきた。


「……そうはっきりと、告白のようなことを言われると、恥ずかしいんだけど」


 そう確かに、ユディルの耳には届き、彼の目は横になったままのユディルを見つめるティルファリーナへと向けられる。


「朝だよ、ユディル。早く起きないと遅刻するよ」


 いつも通り、起こしにきたらしいが、若干照れているのか、珍しいティルファリーナの反応に、ユディルは(まばた)きを繰り返す。


「あれは……夢?」


 一体、どのタイミングで、あちらに行き、こちらに戻ってきたのか。ユディルには分からないが、ティルファリーナの声で起きたことだけは事実であり。


「何で? 本当に何で?」


 いろいろな疑問が残ったことで、若干モヤモヤとしながらも、ユディルは朝食を食べ、登校するための支度を始める。

 一方で、ティルファリーナはというと、自身が持つ竜徽結晶(りゅうきけっしょう)を取り出し、目をやるものの、特に何も無かったかのように、元あった場所にしまい込むと、そのままユディルと共に登校するための準備を始めるのだった。




少し分かりにくいと思うので、少し補足。

ティルファリーナがユディルを起こしに来た際、彼はうなされており、様子を見ていたら「ティルファは~」を寝言半分に言い出したので、彼女は驚いたわけです。

そして、「そうはっきりと~」という台詞の時には、薄ぼんやりと目覚めたユディルとティルファリーナの目は合っていたりします。



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