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発掘現場へ

一章 二話

神造の武具が生み出した害は大きく分けて二つある、一つは武具自体に命を奪う以上の機能があった場合、もう一つは大戦以降にも続く武具を求めた人間同士の争いである。この本では前者について語ろう。

                             ”魔性の神・神造の武具の厄災”から抜粋2


「ええと、貴方がシグードさんですね。私の名前はヘリッツと申します。貴方のうわさはかねがね。」

助祭ホリィに連れられ二人は司祭ヘリッツの下に着く。オリィヴェに続きシグードに対しても演技がかるお辞儀をする。シグードはヘリッツと名乗った男の目から嫌なもの不快とみ言えるものを感じ取った。オリィヴェはシグードがヘリッツの所作に不快感を感じると予想していた。確かにシグードはヘリッツの所作からも不快感を感じ取ったであろう。だがそれだけではなかった。シグードの直感ともいえる何かがヘリッツの内心に隠した何かを感じ取った。しかしシグード本人はこの不快感の出所をまだ理解していなかった。

「かねがねしているなら早く依頼の詳細を話しちゃくれないか?」嫌悪を可能な限り抑えながら話すシグード。しかしヘリッツはシグードの感情に気づいていない、あるいは気にしていないかのように、のんびりとした口調で答える。

「わかりました、こちらにどうぞ。」建物内の裏に回る、裏には小さな部屋があった。まるで尋問室だとシグードは内心考える。

「狭い部屋で申しはけありません、こちらにお座りください。」ヘリッツは指さした椅子に二人を座らせると、自身も机の反対側の腰かけた。

「それで依頼の詳細と言う事ですがどのようなことを聞きたいので?」

「聞けることはできる限り聞いておきたいどんな情報が役に立つかはわからないからな。」

「わかりました。まず大まかな概要ですが遺跡発掘の護衛です。発掘品はおそらくお二方とも予想がついているとは思いますが、神造の武具です。ただ完全な状態ではなくその欠片である可能性が高いようで。」

「一つ質問なんですが、どうして欠片であると分かるんですかね?」ヘリッツの言葉に対してオリィヴェが口を開く。

「今までの遺跡発掘の調査記録からです、無傷の完全体が納められた遺跡は今回発見されたものよりも規模が大きいものばかりなので、なぜ魔性の者たちが破片や欠片を遺跡で保管しているかは我々には想像もつきませんが。」

「不思議なもんだな。」シグードがつぶやく。

「次の質問、と言うよりこっちが本題なんですが、先ほどホリィさんから聞いたのですがね、私たち二人以外に外部の方がいると聞いたのですが、どのような方なのですか。」

「ああ、あの方ですね。何とも気難しい方だと思います、まあ直接会って話してみるのが一番彼女を知るのに有効でしょう。」

「彼女?と言うことはその方は女性ですか。」オリイヴェは少し驚く。

「確かに気難しいかもな、女の放浪者はただでさえ少ないんだ。そんな中で遺跡発掘の仕事をする奴なんて変わり者だろうな。」シグードはまだあったことすらない彼女に対し警戒をした。事実として女性が放浪者となることはめったにあることではない。女性のみで一人で生きていくことは普通にできることではないのだ。生きるために手段をあまり選ばない放浪者ではあるが、女性の放浪者はまず選ぶ選択肢がないのだろう。

「そんな変わり者の事は今はいい、教会の仕事だろう教会の戦力も今回の遺跡発掘には割り当てられるんだよな?」さっきまでの発言がなかったかのように今度はシグードが問いかける。

「ええ、今の私たちで用意のできる最良の人材を集めました。教会魔術を治めた法師と教会騎士の方がそれぞれ何名かずつ。」

「何名かずつだって?遺跡発掘は教会にとって最重要な事じゃなかったか?それなら何名かずつなんかじゃなく大人数呼ぶべきだろう。」

「ヘリッツさん。確かにその点は自分も気になりますね。」二人はヘリッツを見る。

しばらくヘリッツは下を向き考え込むようなしぐさを見せる。

「お二人は教会を見てどう思いましたか。」しばらくの沈黙が続き、ようやく考え込むしぐさを解き口を開いたヘリッツ。

「あれはあまり良い状態とは言えませよね」ヘリッツの哀愁漂う言い方にオリィヴェは少し戸惑うように答える。

「そうだな率直に言ってひどいもんだ、元は廃墟か?」それに対し空気が読めないのかあえての言い方なのかためらいげもなくシグードは言い放つ。

「確かにそう見えても仕方がありませんよね。」ヘリッツは小さなため息をこぼす。シグードとオリィヴェは不思議に思う。教会のみすぼらしさと用意できる人員が少ないことの繋がりが思い当たらなかった。たとえ教会に建物を修復するお金がなかったとしても。神造の武具の発掘であれば教会は他地域の教会とも連携を取り仕事をこなすからだ。

「そんなことを聞くってことはよ、何か言いたいって思うことがあるんじゃないか。」その疑問を解くためにシグードは問いかける。

「ええ・・・そうですね。」

しばらく間を開けて

「この教会に所属している我々は、本部や大きな教会からつまはじきにされたものがほとんどなのです。上に立つ者にとって都合の悪いものや異端の家の出、教会が異端とする研究にかかわってしまったもの達など。この、この遺跡発掘が我々のようなものにとっての最後のチャンスなのです。」平静さのあったヘリッツの声が荒げる。今回の遺跡発掘は教会の責務と言う以上に彼らの在り方に大きくかかわっているのだと言うことが良く分かった。

「なるほど他の教会に応援を頼むわけにもいかなかった。そこで足りない人材を外部の人間に頼ったわけですね。」オリィヴェは冷静に答える。

「その通り、その通りです。我々単独での仕事ができるよう私もかなりの手回しをしたのです。」

「わかりました、聞きたいことはある程度聞き終えました。シグード、まだ聞きたいことはあるか?」

「ない。」シグードはオリィヴェの質問に短く返す。

「分かりました。では現地へ向かいましょう、馬を用意してあります。今の時間だと、そうですね・・・夕方には着くと思います。ついてきてください。」ヘリッツは素早く席を立ちあがりながら。次に自分たちが行うべき行動を確認するように言葉をつぶやいた。

 三人は馬屋へ行き馬に乗りすぐに遺跡へと向かった。街道を走る道中は三人に特に会話はなかった。シグードとオリィヴェに関しては話すことがなかったと言うよりは町の外にある脅威に対して警戒していたことが理由の大部分を占めている。

 町の外での脅威は大きく分けて二つだろう。天候の荒れ具合と敵意を向けてくる存在だ。前者に対しては一介の放浪者にできることは少ないが、後者に関しては専門分野とする者もいることだろう。

町の外ではどのような敵がいるのか。まずは分かりやすいものとして、賊や野党の類と狼や野犬などの野生の猛獣。そして魔性の者だ。魔性の者は神話の時代、魔界からやってきた神の、人類の敵対者とされている。しかし現在は猛獣よりも知恵があり、賊ほどは危険性がない程度の評価である。それでも油断ならない相手であるのは事実であり、被害者が生れることも少なくはない。

「止まれ、前に何かいる。」周囲を警戒しながら進む道中、日は一番上まで登り傾き始めたころ。前方に気配を感じ止まるよう言うシグード。シグードは馬から降り先行する、シグードが下りた馬を器用にヘリッツは操り並走させ進む。

「野犬か狼の声が聞こえた。遠吠えじゃない、威嚇するような唸り声が聞こえた。何かと戦っているはずだ。」シグードは振り向かずに後ろにいる二人に伝える。二人はシグードの言葉には返事をせずについていく。

しばらく歩くと二人にもにも狼の声が聞こえてくる。そこでオリィヴェとヘリッツは馬を降り、手綱を気に結びシグードに再びついていく。シグード自身は気がついていないが、シグードの耳は良く常人が気が付かないような音にも気が付くことができる。かといって大きな音に弱いわけでもなかった。

狼の姿が見えるか見えないかの距離で三人は茂みにしゃがみ様子を見る。

「狼と魔性の者のようですね。」ヘリッツの言葉の通り、狼は数体の魔性の者に囲まれていた。

「小さい奴らが狩りをしているようだな。どうするシグード?」

「狼を始末する、それを道の外に投げ捨てればあのチビも狼とりに行くだろ。大方奴らは皮や肉が欲しんだろう。狼を取る気がないと分かればこちらによっては来ない。それぐらいの知恵はあるさ。」

「このまま待っていれば魔性の者たちは狩りを終えて住処に帰るのでは?」ヘリッツは問いかけシグードを引き止める。

「狩りを終えてあの場で解体なんてされたら面倒だ。だから先に介入し撤退の選択肢を与える。」シグードは言い終えると剣を抜くこともなく素手のままで狼のいるほうへ歩いてゆく。狼は魔性の者への警戒を緩めずシグードに意識を向ける。魔性の者は突然の乱入者に警戒し狼への攻撃を止める。二人はその状況を後ろで静かに見ていた。

「狼さん、武器も持たない奴が歩いてきましたよ。さあさあ誰を狙うのかい?」言葉が通じるとも思えない狼に対して挑発するシグード。オリィヴェは後ろから何をしているのやらと心の中で思いながら、シグードがその行動に失敗したときに備えその姿を見守っている。

 狼は魔性の者とシグードの間に挟まれどちらを狙うかを考えていたが、どちらを狙うのかを決めたようだ。狼は素早くシグードにとびかかる。シグードは剣を抜かずにしゃがみ込む。素早く石を拾い上げると。狼に全力でたたきつけた。狼はとびかかる際に体が中へ浮いていたためその攻撃をかわすことも踏ん張ることもできずに衝撃に逆らう事無く転がった。シグードとオリィヴェ、魔性の者はしばらく狼の動く気配をうかがっていた。

シグードは二歩三歩さがる、すると魔性の者は狼に近づき止めを刺し引きずって高い草の中に入っていった。

戦闘後の余韻と呼べる時、シグードはあたりの気配を探る。オリィヴェは馬を取りに行き、ヘリッツは安心したように立ち上りながら口を開く。

「シグードさん、先ほどの腕前見事でした。しかし何故あの魔性の者を仕留めなかったのですか。仕留めなかったどころか、奴らの狩りを助けるなどと。」ヘリッツは静かな声で問いかける。しかしその口調は強さを含んでいた。

「俺たちの仕事は魔性の者の討伐じゃないってことじゃ満足できないか。なら、単純に複数を相手にするのは分が悪いし、俺の剣は業物じゃないからすぐに刃が鈍る。だから剣を使わない解決法を考えてそうなったってだけだ、問題あるか?」

「そうですか。私は神の信徒です、教義には魔性を許してはならないとありますから、魔性を見逃す選択に疑問を感じただけです。」

「そうか。だがまぁ俺の実力はよくわかっただろう?俺は信頼に値する実力があったか?」二人の間の悪い空気をなくそうとシグードは気を使い言葉を選んだ。

「ええ、そうですね。」ヘリッツはただそれだけを返した。

「馬を持ってきたぞ、さあ発掘現場に行こう。」オリィヴェが馬を連れ戻ってくる。二人の間の空気を察してかどうかは定かではないが、馬を取りに行っていた間のことをオリィヴェは聞かなかった。

 結局その後は何事もなく馬による移動が続いた。もちろん彼らの中に会話はなくそのまま発掘現場まで到着する。

「オリィヴェさん、シグードさん到着して早々ですが早速彼女に会ってもらいたいのです。この時間帯なら彼女も休憩を取っているはずですから。」町を出るころにはまだ日は一番高い所にすらいなかった太陽は傾き始めその色を橙色に染めていた。

「自分は構いませんが、シグードお前は?」オリィヴェの言葉に対して、シグードは無言でうなずく。

返事を見ると、ヘリッツは二人を連れてまっすぐにその天幕に向かった。

「この中です。あとはまあ、あいさつなどをして友好を深めるなり情報の共有をなさってください。」ヘリッツは妙に歯切れの悪い言葉選びをした。そして天幕に外から放浪者二人を連れてきたと声をかけると、指示を出しに向かったのか何処かへ歩いて行った。

二人は静かに天幕に入る。天幕の中はそこそこの広さがあり、簡素な寝台と机と椅子のみがあった。彼女は椅子に座り机へ向かい羽ペンを滑らせていた。

「あんたが教会に雇われたもう一人の放浪者か?俺はシグード、こいつはオリィヴェだ、腕っぷしは信頼してくれ。」シグードは軽い挨拶をかわす。

「あなた方が頼んでおいた放浪者ですね。私は名前はジレネと言います。」椅子から立ち上がり振り向き金の髪を靡かせながら彼女は自己紹介を交わした。

現在物語の進行を少なくとも自分なりに面白くしようと展開を練り直し文章として表現しようと苦闘中です。おそらく異常なほど遅れるでじょう申し訳ありません。

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