ノクターン/G線上のアリア
ノクターン/
だれかの
だれかへの想いは
劣情の低音より
憧れの高音に至り
期待の中音に震え
いつしか
想いは月光にも似て
温度のない光を宿し
透明なまま
諦めの夜明けに消える
無音の余韻の間に
胸によぎる面影
きっと微笑みは
ポートレートのように
切り取られた思い出になっていく
G線上のアリア/
湧き上がる
このやるせなさを
わたしは忘れていたわけではなくて
抑えこんでいた
遠くへの憧れというような
旅立ちのきっかけを
握りこんでいる
誰も
わたしを知りはしない
その空の下で
見知らぬ街を歩き
雨に濡れ
何かを贖い
何かを忘れ
何かを失う
混雑する駅の
人いきれの中で漂えば
邪魔にされ
胡乱な目で見られるだろう
それでも
終着駅のない
旅に惹かれてしまう
一人きりで
貧しく住み
詩を書き
いつか
斃れるまで
孤独に
日陰の太陽を仰ぐ
そんな
どうしようもなさに
やるせなく
駆け出したくなってしまう
ショパン ノクターン
バッハ G線上のアリア
から。
浮かんできた言葉たちです。