第二話
簡単に良く出てくる登場人物を紹介しておきます。
主人公、高瀬 歩
ヒロイン、有村 絵里
親友、筒島 淳
手紙の主、???
と、なっています。よろしくお願いします。
「はい?」
俺がもう帰らないことを確認すると、有村はその握った手を離してばっぱっと両手の汚れを落とす。
いや、俺そんなに手は汚くないと思うし今の歳でそんな事するのか?
気になったがこれ以上何かを言ったりすると有村の機嫌が不機嫌にへとなりかねないのでここは黙っておく事にする。
「だから、高瀬は今みんなを引っ張ってくれてるけどその肝心の本人はこの誰も分からない事件を信じてるのかなって思っちゃって。けどごめん、みんなを引っ張ってるんだから信じてるか」
多分この話題は、関係のない人からしたらどうでもいい話だと思う。だから何だよ、俺にそんな事聞かれたとしても答える必要がないし何て言っていいか分からない、これが関係のない人の正直な思いだろう。
でも俺、高瀬歩はこの事件にへの関わりはある。この質問を他人事だと思っての返答は出来ない。そんな特別に難しい質問でも無いのですぐ答えられた。
「別に俺は、信じてるか信じてないかは考えてない」
だって、俺の予想でそんなの言ったら駄目だと思うから。そんなのは特別に考えないでもいいと思う。
しかも俺たちはまだ18歳、高3だ。むしろまだ20歳じゃないんだから20歳以上の人がこの事を考えてくれないかと俺は思ってしまう。そりゃ普通の質問だと俺たちの力で乗り越えていける。…けど、今回ばかり俺たちの力では乗り越えていけない。だって俺たちはまだ子供だから。完全な大人になる為の成長中だ。でもだからと言って何も考えないっていうのもどうかと思う。そう思ってたのに、今回は違う。
子供しか考えてない。大人も考えなくてはいけない事件なのに大人は関係がない為あまり首を突っ込んではくれない。それが当たり前だと思う。俺でも知らない人が死んだとニュースが出ていても何も思わない。所詮、人間はこういうもんなんだよ。
「どっちも考えてないのに、貴方はみんなを引っ張っているの?」
「まぁ、今言ったことを合わせて考えてみるとつまりそうだな」
「つまりって…何?今言った事嘘なの?お願いだから正直に言ってくんないかなぁ」
もうあまり時間がないという目で俺は有村にひどく睨みつけられる。何で睨みつけられてるんだ、俺?
時間がない?って事は、もう約束の時間までに時間がないってことか?でもこんな日に限って約束なんか…。と思ったが、次の瞬間何で睨みつけられていたのか分かった。
「怖いのか?もしあの世界に行って死んだらどうしようという恐怖感が」
「べ、別にそんなわけじゃ」
「無いって言いたいつもりなんだろうけど、今回は強がっても何もいい事はないと思うぞ。それは君の勝手だけどさ、今は自分を信じてみればどうだ?」
俺はもう少しで鞄が肩から落ちそうだったので上げながらそう言う。予想だと、今のはプライドが高い有村には駄目な言葉だったと思う。けど今は、そんな事に構って慣れない為有村もその事に気がついてない。いや、怖くて気付けないんだ。
俺はどうしたらいいか全く分からなかった。
今まで女とはあまり喋らなかったし、こういう場面など一切無かったので俺は恋愛初心者だし使えない奴だし何よりも今何もできない事が最低だ。
ただ俺は泣きそうになっている有村から顔を背けてるだけしか出来なかった。
こいつは、みんなが居る時女子の中で唯一有村だけが泣かなかった。最初はあまり感情がない子なのかと思ったが、そんなのは撤去だ。自分までもが泣いたらまたみんなの気が狂いだす…有村はそう思ったのだろう。そこには俺も凄いと思っている、正に俺と思っていた事が一緒だったから。
俺はもうどうにもなれと思い立ち止まって有村の頭に手をポンと置き、顔を見られないように顔を逸らしておく。
「ごめんいきなり。…一応、向こうの世界に行って有村が俺の視界に居たら、その時は守るよ」
「別にいい。私一人で大丈夫」
「悪いが有村。俺の視界にクラスメイトがいたら何がなんでも守ると決めてあるんだ」
「…お人好し」
「ああ、本当…これどうにかならないのか」
✴︎
夜が来た。
さっきからテレビは朝からずっとニュースばかりでこれから俺たちが関わる事件の内容を放送している。勿論こんな数時間で新しいネタが入りまくるなど決してありえないのでさっきから同じ事ばかりを繰り返して言うばかりだ。だが、俺の心臓のバクバクは止まったりなどしない。
ニュースでは今日一日中高3の人は決して寝ないで下さいと1分に一回は言ってあるが、絶対にそうしたらあの世界には行かなくて済むって事にはならないしそんな簡単な事があるばずがない。
今夜はオールナイトする人が多数だろう。だが、俺の予想だと連れて行くまでの期限なんか書いてない。
…つまり、寝た人から順に向こうに連れて行かれるってわけだ。だったら先に行ってあっちの事を先に観察していた方が後から役に立つ。
俺は嘘である事を願い、電気を消して五分間無心でいながら寝る事にする。
ーーどうか、どうか来ないでくれ…有村達の恐怖心を、ここで止めといてくれよ…
心の中で俺は必死にそう思ったが、そんな思いは誰にも一切届きやしなかった。
上手く書けるか心配です