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色々おかしい異世界召喚〜異世界珍人録〜  作者: とある吟遊詩人
第一章:愚する勇者は魔人と踊る
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8.眠り続ける男①




何か、忘れている。


それすら思い出せない時がある。


何が真実なんだ。ここはどこだ。


わからない。


こんな時いつも頼りになる男がいた。


いつもは、日々をテキトーに過ごす暇人で、いつもバカみたいなテンションでバカみたいなことを繰り返している。


その癖にいざという時にサラリと名言をかまして何事もなかったかのように振る舞うそのギャップに打たれた女子は少ないのは知っている。


しかし、彼にとっては少数でもいることが意外だった事なのか、初めに聞いた時は驚いた。きっと無意識にやっているのだろう。それにしても天然ジゴロが実在するなんて………。




ん?あれ、何を考えてたんだっけ。





☆☆☆





異世界に来てちょうど10日目。


僕は朝早くから特に理由もなく、藤沢を探していた。


しかしこの宮殿、予想以上にデカく、かつ入り組んでいて、とてもじゃないが今日一日かけて探しても見つからないと思う。


「っだー見つからねぇー」


「あら、どうかしました?」


「あ、えーと………「ターニャです」……ターニャさん、突然ですが藤沢 蓮也って人が今どこにいるかわかりますか?」


「うーん………。誠に申し訳ありません。その様なお方は存じ上げません。勇者様方への担当が割り当てられており秘密事項が多いのですが………あ、恐らく医務室にいらっしゃると考えられます」


「成る程、医務室ですね………申し訳ないんですが、道案内頼めますか?」


「ええ、もちろんです」


迷っていると、この宮殿内でたまに見るメイドさんーターニャさんーが道案内してくれることになった。

ターニャさんが女神だ。いや、今までの僕の女難さが可笑しいだけだ。ちょっと対比で女神に見えるだけで。あ、やっぱ女神だこれ。………おまけに美人だし。


「………行きますよ?」


「あっはい」


随分間の抜けた返事をしてしまった。ちゃんと歩幅に合わせてくれて先導してくれるあたりめっちゃ配慮されてるのが分かる。


それから適当な会話をしつつ、迷路の様な道をあっちへこっちへ曲がり、進んでいくと、唐突にターニャさんは歩みを止めた。


「こちらが、医務室になります。ここでは専属の治癒師(ヒーラー)による治療を行い、重傷者を寝かせております。あまり騒がないようお願いしますね? …………それでは私はここで」


「いやもう本当に、ありがとうございました。道案内してくれなきゃ辿り着けなかったですよ」


「………メイドにありがとうございますなんて言うものじゃありませんよ?私は使用人。貴方がたの役に立つ事ができて光栄です。それでは、失礼します」


と、言って微笑みながらそそくさと行ってしまった。プロ意識半端ねえ。

ちょっと思春期の青年としては憧れるものがあるな。


「何か用?」


あ、そうだった。医務室が完全に頭から抜け落ちてた。

こちらに声をかけてきたのは、白衣に銀髪が印象的な長身の女性だ。

………さっきから女性ばっか会うのは気のせいか。


「えーっと、藤沢 蓮也ってここに居ますか?」


「ええ。勇者様の1人ですもの。一番良いとこに寝かせてあるわ。あの奥の部屋よ」


と言って、医務室の先にある扉から覗く廊下の奥を指差す。

ここにくるまでの通路と医務室、廊下はHの形をしている。医務室が真ん中だ。


言われたところに向かうと、そこには、ベッドに寝かされた藤沢と………




空間上に浮かぶ多数のエラーコードだった。




「な、なんだこれはぁ!!」


「煩い!静かに!………何なんですかいきなり。耳が割れるかと思いましたよ」


な、何だ。目の錯覚なのか?

え?これってよくある事なのか?



………もしかして、見えてない?



この異常な光景は、俺にしか見えてない。そういうことか?


「見えないんですか?」


「貴方がどうかしちゃったのはよく分かるわ。後で診察しましょうか?」


「い、いえ大丈夫です………すいません」


ただ単に、医師だから肝が座ってるとかそんな話じゃなさそうだ。

さっきのリアクションで十分だ。

確定的に、

これは、

この現象は、

俺にしか見えてない。


エラーコードのウィンドウの数は正直数え切れない。少なくとも、多過ぎて藤沢の体が見えなくなる程度には多いという事だけは言っておこう。


ちなみに藤沢だと見抜けた方法は単純に、ベッド傍にあった靴の靴紐の結び方があいつらしく個性豊かであったからだ。チェッカーボードなんて言うんだったか。そんな感じのやつだ。



それにしてもこいつは異常だ。とても異世界転移なんていう現実じゃありえないような現象が起きた身としては何とも言えないが、これは異常だと思える。どのくらい異常かと言えば、不思議の国のアリスにガチの戦略兵器が紛れ込んでたり、有名なスポ根漫画とかにガチの恐竜が紛れ込んでたり、ゾンビがうじゃうじゃなパニックホラー世界で空をドラゴンが悠々と飛んでるみたいな、それくらいの異常さだ。

この異世界は剣と魔法とちょっとしたカラクリ仕掛けが発達した世界だと思ってたのに。これではSFじゃないか。


というかこれ放置してて良いものか。


「容態はどんな感じですか?」


「………意識不明で原因不明よ。治癒師として失格だわ」


「まぁ呼吸はしてるから死んでないのは分かるんですが………異常ですよね」


「そうね。おかしい点が多すぎるのよ」


「おかしい点?」


さっきのパニック状態からの急な脱却はスルーすることにしたようだ。

それにしてもこれが見えない人でも異常な点があるのか。


「全部で三つよ。一つ、彼はここへ連れてこられてから何も食べてないのに生命活動が当日からまるで変わらない。二つ、ここら一帯の魔素濃度が他よりはるかに低い。三つ、彼に触れる事ができない。…………どう?心当たりは?」


「ないです。って、こいつこの10日間何も食べてないのか!?」


「それでこの表情よ。少しはげっそりしててもいいと思うんだけど」


人は一週間飲まず食わずだと死ぬ。それは常識だ。また、水も3日以上取らないともっと早く死ぬ。常識だ。

こいつは、一体何なんだ。

友人の現実味のない様相を見せられた僕はただ呆然とするだけだ。


あと、ここら一帯の魔素濃度が低いらしい。

これが何を意味するかというと、魔法が使いにくくなるという事だ。



この際だから魔法について説明するとしよう。


①魔法は、体内の魔素を呪文によって変質、調整し、空間中の魔素を媒介として具現化する。

②魔法は、呪文を唱えるだけでなく、イメージすることが重要である。

③魔法によっては魔素やイメージ力に関係なく強力なものが使える。

④体内の魔素をコアといい、空間上の魔素をマナといい、全くの別物である。


ステータスには、コアの総量が魔力保有量として、イメージ力やコアとマナの変換速度などを魔法力で表示されている。



また、魔法の種類というものも存在する。

それぞれに長所短所があり、それが発達している地域もあればそうでない地域もある。

グリモニアにはエレベーターはあるのに活版印刷は無いので、一冊一冊製本された高価な専門書でしかそれらは知ることができない。

しかし、高い金を払って魔導師養成所とかいう下層の施設に行くと、宮廷魔導師を引退した人などから講義が受けられたりするので、魔法遣いが少ないわけでは無い。


そして、広く親しまれているのは、一般魔法術と、精霊魔法術である。


一般魔法術は、先ほどの通り、魔素を媒介とする魔法だ。強力な魔法ほど要求される魔法力が高くなる。多くの魔法がこれに当たる。


精霊魔法術は、属性を司る精霊が媒介となる魔法だ。よってマナの濃さは関係無いが、その属性が存在しない、あるいは少ないとこでは使うことができない。例えば、滝のすぐ側で火の精霊魔法は使えない。イメージとしては蟻の軍隊だろうか。一匹では何もできない可能性が高いが、50万匹もいれば何かができる可能性は大いにある。

そして属性は、水風土火氷雷光闇の8種あると言われる。

全属性を使えるような魔導師はそれだけで宮廷魔導師として採用されるそうだ。また、そのレベルの魔導師をドラゴン級とか呼ぶそうだ。魔導師の階級はそいつが単独で倒し得る魔物で分けられる。


「で、どうするの?折角なんだから1人にしたほうがいいかしら? 」


おおっと現実逃避してる場合じゃかった。


「いえ、もう十分です。今日のところはこの辺にしときます」


「そう。じゃ、くれぐれも迷わないようにね」


礼を言って病室を出る。


扉を閉めて一息。





逆に問題が増えちゃったよ………。



そう思わずにはいられなかった。




☆☆☆



【彼が目覚めるまで、あと■■日】

【この親友と再開するまであと■■■日】



☆☆☆




何かすごい事件を目の当たりにしてしまったので気分転換に一狩り行ってこようと思う。


「ねぇ、山城クン」


「はぃいい!?」


「ははっ、いいリアクションだ」


「お、脅かさないでくださいよー。修哉君」


廊下の曲がり角からいきなり現れたのは美少女ではなく、知り合いだった。

こういうイベント要らないです。


それにしても修哉君は楽しそうだ。


「どうだった?彼」


「どうだった……とは?えっと、まさか修哉君!」


「おお、そのリアクション。良いねェー。君は打てば返ってくるからこっちもやりがいがあるよ」


「見えてるんムガッ」


「しー。これから国が危機に晒される前でキーマンの秘密を言わなーい」


はぁ!?サラッととんでもないこと抜かしやがったぞこいつ!!


口を塞がれていて何もできない。南無三。

そして口を塞がれたうえに、頭をホールドするようにポジションチェンジした修哉君は僕を外へ連れ出していく。


「さてさて、それは後で話すとして。そういえばさぁー、今僕パーティーメンバー募集中なんだよねぇー。いやー、前の彼女に振られちゃってねー。私は自由になるんだ!って意気込んじゃってよー。あ、こんな話聞きたくなかったって?悪かった悪かった。あれ?キミィ、もしかして一狩り行っちゃう?更にソロ?マジでー?ハハッウケるー。今時ボッチでダンジョン行くとかマジキモーい。ソロで潜って良いのはァー、カッコつけたい中学生までだよねー。え?なになに?パーティ組ませてください?しっかたないなぁーもぉー。とぉぉぉっておきのボロ儲け情報くれてやるから、それに手を貸してくれたならイイぜェー?ヨォシ。決まりィ!!じゃあ早速潜りに行くぜ!!」


















宮殿を出てからダンジョンに着くまでずっと修哉君は喋ってました。まる。

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