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色々おかしい異世界召喚〜異世界珍人録〜  作者: とある吟遊詩人
第一章:愚する勇者は魔人と踊る
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4.ステータスside山城



この世界にはステータスがある。



そう知ったのは僕らがこの世界に召喚されてから、そこの国の神父と法王に連れられてご飯を食べた後だった。

法王より神父の方が偉そうなのは何故だろう。やっぱり宗教上そっちが支持されるからだろうか。

よくわからないなぁ。


そんでもって今僕らが向かっているのは「識の水泡」と呼ばれる宝物を僕ら「勇者」に見せるため。それはこの宮殿の中層部にある宝物庫にしまってあるらしい。だから宝物庫へ足を進めている。


「ステータスだって、言われるとなんだかゲームみたいだよね」


「死んでデスルーラができない致命的なバグを除けばな」


「人生ハードコアモードなんですねわかります」


雲林院は通常運転だ。

にしてもステータスかー。本当に小説みたいな話だよな。現実に起こってるから信じざるを得ないけど。


「皆様、後ろをご覧ください」


円卓の間を大きな石の扉から出て、左右に伸びる通路を延々と先に歩いていた神父が突然振り返るように言った。


「お?おお!なんだこれ!?」


振り返るとどういうわけか今まで歩いていた通路ではなく、金銀の輝きで視界が埋まるほどの財宝がそこかしこに整頓された空間になっていた。

前の円卓の間に移動する時の転移魔法とはまた違うようだ。


「フフフフフ、驚かれましたかな?この技術もグーリエ様のお導きによるものにございます。

さぁ、宝物庫に着きました。皆様、どうぞお足元にご注意ください」


神父もガヤガヤどよめくクラスメイトたちにいい気になったのか御満悦のようだ。僕も驚いたけどね。

それにしても、雲林院や近衛をはじめとした例の面々は然程動じてないのが凄い。いや、雲林院は建物に興味津々だったけど。


あ、藤沢はまだ起きないようだから、医務室に運ばれてったよ。雲林院がドナドナ言ってたからツッコミ入れたけど大丈夫かなあいつ。


宝石のみでできた創りに不安しかないシャンデリアの明かりをくぐり抜けて、僕らは一つの水晶を起点として全員が余裕持って入れるほど開けた空間に出た。


「こちらが『識の水泡』に、ございます。こちらの水泡に手を差し込んでいただくことで、勇者様のステータスが見られます。とはいえ、こちらは成人の儀式とも言われるものでございます。故に、皆様もその形式にある程度倣ってくださいませ」


成人式ここでやるんだ。

違うか。これを成人式で使うってだけなのか。

きっちりしっかりやるのかな。やり直し!とか怖いんだけど。


「失敗したらやはりやり直しですか?」


「そこまできちんとやらなくても宜しいのです。元より形式があまりにも多すぎる故、覚えている貴族などは一握りもいないでしょう。」


参考にならないフォローだった。

ちなみに受け答えしているのは僕ではなくて、クラスの学級委員でリーダー的なポジションの松田 悠斗だ。

神父のすぐ後ろを歩いているので、かなりこの神父に興味津々なんだろうな。




それから僕らは出席番号早い順にステータス開示をやることにした。ちなみに担任 荒谷も混ざっている。


「じゃあ、アタシが一番最初なわけね」


今のはギャルギャルしてるクラスの女子の一人だ。名前は秋元 照美。金髪黒ギャルなんてのは今になっては希少種だが、そこまでケバくないのは…いやちょっとケバい。

ちなみにうちの高校は制服がないし、髪型も自由である。

まぁみんな学生服改造しまくったの着てるわけだけど。


「この際、儀式はそこまで難しく致しません。まず、水泡に近づいて右手を表、左手を裏にして差し出し、手のひらを空洞ができるように合わせてお辞儀をします。そのあと、利き手を水泡に差し込んでいただくのです。見終わった後はもう一度そのお辞儀をしてください。では、どうぞ」


「は、はいぃ」


うへぇ、と言いながら支持された動作を行う秋元。そして手を水晶にへと突っ込む。


あれ水の塊みたいなやつなのかな。


魔法ってスゲー。


「うわぁ、ニュルってするぅ!何かキモいぃ!」


と言いつつ手は突っ込んだままである。逞しいのだろうか。

すると、上空の金のベニヤ板みたいなでっかい板に何かが映し出される。


<秋元 照美 ( Akimoto Terumi )>

種族:異世界人

年齢:15

性別:女

HP(耐久力):B

MP(魔力保有量):C

STR(総合筋力):D

CON(総合代謝):B

DEX(精密動作):C

POW(総合魔法力):C

スキル:なし

霊魔:<ファッション・モンスター>



「な、何これぇ!何かフツウなんですけどぉ!てか霊魔って何!?」


秋元さん、いいツッコミだ。友達になれるかもしれない。いや無理だわ。近寄り難い感じ。


「いえいえ、十分に人族を凌駕した値でございます秋元様。基本はSABCDEFの七段階評価なのですが、人族の平均は大凡E程度。一番低い項目でも人族の平均は超えているので、そう気を重くしなくても宜しいかと」


「そ、そうなんだぁ………。成る程、勇者ってそういうわけなのねぇ」



若干顔が引きつっていた秋元さんは今後の「勇者」の活躍にプレッシャーがかかっているのだろうか。

まぁ平均Eってのは、ねぇ………。

あと、スキルまでは何となく分かるが、霊魔ってのは何なんだろう。


そして秋元さんの番が終わって、次々とクラスメイト達がステータス開示を行なっていく。

霊魔はどうやら神父でも分からない項目のようだ。


大分時間が経って、ようやく僕の番になった。

特に何をするというわけでもないのにドキドキする。

あ、トイレ行きたいです。

え?ダメなんですか?




とかやってる間に出たステータスがこれだった。


<山城 圭 ( Yamagi Kei )>

種族:異世界人

年齢:16

性別:男

HP(耐久力):D

MP(魔力保有量):D

STR(総合筋力):C

CON(総合代謝):D

DEX(精密動作):D

POW(総合魔法力):D

スキル:なし

霊魔:<リユニオン>


おい、軒並みDってどういうことだ。

嘘だろ、俺、もしかして、いらない子………!?


みんなの平均はパッと見た感じCかBな感じだ。

あれ?俺1番低いんじゃね?

女子より弱い男子って………。



…。



……。



……………。




明日から斥候役かな。いや囮か。


「ま、まぁ、アレだぜ山城。元気だせって。な?ステータスは成長するもんだって。特に『異世界人』はよぉ!」


「そうは言うけど近衛ェ。これは差が「うるさい黙れ縫うぞ」………分かった僕は何も言ってない」



近衛に励まされた。

何だかんだ根は優しいから助かる。


………優しさで辛い。



しかも僕が出席番号最後だから超目立って終わりなのかー。ハプニング起きて誤魔化せないかなー。無理かー。


「そ、それでは階上へ向かいましょう。ほ、本日はここまで。今日はお一人ずつ部屋を設け、さらに1人ずつ殿方にはメイド、淑女の勇者様方には執事をお付け致します。何かご不明な点がございましたら、彼らにお任せください。最後になりますが明日は早速この国と勇者の対応についての会議を開きたい所存ですので、『朝傾』の頃合いに円卓の間へといらしてください。それでは、また」



おい、終わりかよ!!


それと何か焦ってんの丸わかりだぞ最初の方!!


てかもう言っちゃったよ!!足が早いなおい!!


てかいつの間にか外でメイド執事ズが待機してたんだが。

魔法ってスゲー。



「なぁ、みんな!これから1-2がどういった形で行動するのか話し合いたいと思うんだ。だから今から円卓の間を借りて会議しよう!」


「まぁ、何かよく分からんがこんな事態になったんだ。お互い、助け合っていかないとダメだもんなぁ?」


今のは松田と田母神だ。なまじ先生と仲がいいためにリーダー的なのを大体任されている。


「そうね。驚かされることでいっぱいだけど、みんなの意見を出しあえば冷静に客観的に判断が出せるかもしれないわね」


「疲れたんで寝たいんですけどぉ」


今度は清水、石田だ。

清水は学級委員で、所謂デキる女ってタイプだ。案外うっかり屋な一面もあるが。

何故そんなことを知っているかといえば、小中高と一緒の腐れ縁だったというのが大きいだろう。

石田は、生徒会役員の1人だが茶目っ気溢れる性格で、悪く言えば偽真面目系だろうか。オンとオフがきっちりしてるってことでいいだろう。


「ねぇ近衛ェ、僕たちこれからどうなるのかなぁ………」


「ん?まぁ、何とかなるさ。現に今生きてるだろう?元の世界に帰る方法だってそのうち見つかるさ」


「そうだね。………あれ?近衛、雲林院はどこ行ったの?」


「さぁ?コーヒーでも切れたんじゃね?あいつ自由だしな。木戸、なんか知らないか?」


「ちょっと砂糖食べてくるって」


「なんだそりゃあ!!」



自由ってレベルじゃねぇぞ!!

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