2.召喚考察①side工藤
ナルシスト注意
御察しのとおり、各話毎に主人公が交代していきます。
いやはや、まさか異世界召喚を経験するとか、俺たちは稀有な人生送ってるよやっぱりさ。
「そう思わない?瑞樹ちゃん?」
「………なんでそんなに楽観してるのよ。いつも思うけどその化けの皮が剥がれるのはいつになる訳?」
「いやだなぁ、俺だって内心動揺しすぎて何していいかわからないんだってー。だから現実逃避に瑞樹に話しかけたに決まってるだろー」
「うわ薄っぺらい話し方」
「………露骨すぎたかな?」
「彼方の演技力って変なとこで抜けてるわよね………」
あ、俺の名前は工藤 修哉。ちょっと震災経験して、ちょっと異世界召喚に巻き込まれただけの普通な高校生さ(キリッ。
で、今話しかけた女性は 国分 瑞樹ちゃん。幸薄そうなところが第一印象だな。それ以外は特に言及すべきことは無いね。
あ、黒髪ロングの巨乳でモデル体型ってとこはかなり高評価。結構男子にモテそうな属性あるなそういえば。
まぁ幸薄そうのも愛せるから困ったら僕に相談してね、って言ったら上段回し蹴りが来たんだけどね。いやぁ参った参った。
「おい!!見ろよアレ!誰か来てるぜ!!」
「ん?本当だ、現地の人かな」
「あれ、神父さんだよね?なーんか村人第一号って感じ?」
「他にも大勢いないか?」
突如現れた謎の集団………神父ローマ法王貴族騎士騎士騎士騎士といった顔ぶれを晒しており、何だがとても嫌な予感がする。
何か十字架振り回して戦いそうな神父さんだな(笑)。
てかこれ絶対コスプレ集団だとか巫山戯たものじゃないね。少なくとも、この人たちが何か知ってる可能性は高い。僕たちが何故こんな目に遭ってしまったのかを。
「失礼しました勇者の皆様!この度はこのような形となってしまい誠に申し訳ありません」
「あの………どちら様で?」
担任、荒谷がローマ法王っぽい人の対応をする。また、後ろの騎士貴族神父はやはりというべきか、こちらに中世の映画でよくある忠誠のポーズみたいなお辞儀をしてきた。
うん、確定だね。この人たちが俺たちを召喚したんだ。まぁまずグルなんだろう。僕たちのこと勇者とか呼んでたし、嫌な予感は的中してるな。
「おお、これは申し訳ありません。我らは神、グーリエ様の使者であり、そして私はこの国、グリモニアの国王と聖グーリエ協会の法王を兼任しております、オーブ・リンデルバルドと申します。これからもどうぞ、宜しくお願い致します」
「勇者様とその御同輩方、歓迎の準備が整っておりますので、こちらへどうぞ、着いてきてください」
真っ白な印象を持つ法王と金の十字架がいいセンスしてる厳つい神父が好好爺とした笑みを浮かべた。
後ろで跪いてる貴族騎士神父などは微動だにしない。腰に差している剣や金色に輝く半透明の錫杖は既に地面に置いている。
担任の荒谷やクラスメイトの何人かはその纏う覇気に気圧されたようで、荒谷に限っては気の抜けた返事をしていた。
雲林院、木戸………南雲、黒沢、佐久間……広瀬……おっ、瑞樹ちゃんもか。
逆に気圧されてないタフな奴らを見れば、クラスでも異彩を放つメンバーだった。
………寝ている藤沢と近衛はカウントすべきだろうか。
☆☆☆
起きる気配のない藤沢を雲林院が担いでいること以外何の事故もない1-2面子は法王らについて行くことになった。ちなみに近衛は起きた。凄く不機嫌なのは誰でも見てわかる。
まぁ右も左も分からないし、こうなる仕方ないのかな。
「なぁ、瑞樹ちゃーん。さっきの法王さんたち恐かったねー」
「やめてよその口調。さっきの神父法王みたいに胡散臭いじゃない。あと普通にキモい」
「うわ酷いなー。僕は真面目に恐がってるのに」
「じゃあその薄ら笑みは何よ」
「仮面」
「あっそ」
「酷い」
安らぎを求めて瑞樹ちゃんに話しかけたのが間違いだったのか。
「この状況で誰かに安らぎを求める時点でお門違いよ」
「リラックスすることは精神衛生上かなりいいんだよ?」
「誰だって知ってるわよそんなの!」
ちなみに一連の会話は全てヒソヒソ声である。
「………ん、あれ何かしら」
「どれどれ?」
視力は普通なので藤沢みたく人間望遠鏡みたいな芸当はできないけど、瑞樹ちゃんよりかはいいはず。
「あの、大きいエレベーターみたいなというか螺旋階段というか」
「アレか」
目に映ったのは巨大な人工物だ。天まで伸びる円筒状の建築物は、まるで地下鉄の建設現場のテレビ番組などでよく見るあの掘削機で縦に掘ったかのような一直線であり、無骨な白い壁と時折見れる鋼鉄の金具が装飾としてあしらわれていて、近くに小川が流れ、草原が未だに広がりを見せていることも合間って、とても神秘的だ。
この場所だけにポツンと聳えるコレは、世界を支える柱だと言われても納得がいく。
さらにその円筒状の建築物がこちら向きに巨大なドアのような物を拵えており、真ん中から今にも開きそうだ。昔のデパートとかの回転扉が閉店して閉まっている時のような見た目だと思えば良い。エレベーターだとか螺旋階段だとかに推察できなくもない。
「なんだこれは………」
これが僕の心からの感想だ。正直に言おう、意味不明だ。
ここが少なくとも現代じゃないことは薄々察していた。こんなのどかで真っさらな緑の大地など現代じゃまず見られない。故にタイムスリップでもしたのかと楽観、いや異世界に次元転移したのだという暴論の二択で考えたが、そんな人間ぽっちの思考をあざ笑うかのような世界観を醸し出している。
何だ、この建築物は。
人々は中世に見られた宗教国家ではなかったのか。こんな巨大な建造物を作るほどの高度な科学力を持っているのか。
個人的には勇者などと僕らを囃し立てて目に見えて利用しようとしている真っ黒な信仰心を持った狂信者が、そんな国のトップだとは到底考えられない。
………冷静さを欠いてしまったな。
ふむ。
ありのまま受け入れよう。
そしてその上で考えよう。
見たものは全て事実だ。
このことから僕の脳味噌は、ある結論を弾き出した。
この国を操っているのは、法王らが呼ぶ神、グーリエだと。
いやぁ、恐ろしいことするわぁ。
あー何かこれ宇宙人の仕業って言われても納得。現実味がない。
発狂から立ち直り余裕も出来たのでふとあたりを見る。
………雲林院は凄く興奮しているようだ。建築家にでもなりたいのだろうか。応援しよう。
それ以外のみんなはやはり異質過ぎる建造物に圧倒されているようだ。誰も一言も声を発しない。
藤沢はあれからずっと寝ている。というか気絶?なのだろうか。便宜上召喚されたということにするが、もしかして召喚酔いみたいなことがあるのだろうか。
瑞樹ちゃんは………目が密かに輝いていた。まぁこの子は異世界の方が都合がいいんだろうな。
「剥がれたわね」
「ん?何が?」
「化けの皮」
「ははっ、流石にこれは無理だったよ」
瑞樹ちゃん笑ったからいいか。
「皆様、こちらへ!」
ツアーガイドさながらの誘導で一行は迷いなく歩みを進める。行き先はあのエレベーターモドキだ。最早最初の畏怖や胡散臭さも忘れて、未知なる乗り物へと皆歩みを進める。




