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色々おかしい異世界召喚〜異世界珍人録〜  作者: とある吟遊詩人
第一章:愚する勇者は魔人と踊る
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10.不穏な影






「首尾はどうだ?ニーズヘグ」


洞窟の中に響き渡る、くぐもった声。その声質は、老若男女のどれとも言えず、また人外という訳でもない。


薄暗い洞窟は、長く広く一本に伸びているが、天井はこの洞窟にしてはそこまで高くない。


そしてそこに居るのは2人。


1人は、黒いローブを着込んでいて、顔すらこの洞窟の暗がりで見えない男。もう1人は、大柄で頭から特徴的な角が生え、そしてその男に傅いている男だ。


ここは、ブランチダンジョン。その1つの最奥部。


そこはグリモニア国の領土だ。しかし、最奥部は、ダンジョンがクリアされない限り前人未踏なのが常だ。よって、誰にも管理されることはない。


そう、普通ならば。


誰にも管理されない、という点は、ある者たちにとってはとても好評である。


その者たちとは、差し詰め犯罪者や、テロリストなどと言ったアウトローな人々であろう。


ならこの者たちはどうか。


犯罪者ならば、単独もしくは少人数でブランチダンジョンに潜むなんて事はしない。何故なら食料が供給できないし、最悪攻略にきた冒険者と鉢合わせて、逃れられる確率が低いからだ。


それは一重に冒険者ギルドの尽力のお陰でもあるのだが。


閑話休題。


「はっ、只今グリモニア上層を、<変装>スキルを持った我が軍の、兵がくまなく探索中であります!必ずや、この『魔軍大将』ニーズヘグ率いる第二隊があの小娘を探し出して見せましょう!」


「気をつけろよ。この国はつい何日か前に『勇者』を召喚した話だ。しかも結構なことに『円卓の絆』なんていうアホみたいな呪術なんて使ってやがる……………。



いいな、『解呪』だとか『妖魔』なんてので切り抜けようと思うな。アレは相当タチの悪い代物だ」


「はっ!承知しました!」


「…………はぁ、『人材派遣』の名を預かってる身としては、あんな小娘を拉致するために一師団を送り込むとか無駄以外の何物でも無いんだがなぁ」


「それでは私はこれで!」


「あぁ、行ってよし」






時間にして僅か数分。


グリモニアのどこかに潜む『謎』の悪しき気配は、ゆっくり、しかし着実に、この国を飲み込もうとしている。



彼らが気づくのはもう少し先だ。













☆☆☆










「よし、集まったね」





場所は変わってここは別のブランチダンジョン。


ここには7人の男女が集まっていた。どの顔もみな若く、また殆どが黒髪に黒い瞳をしている。


「おいおい、例の話って本当なんだよな?」


「あぁそうだよ。実際に見せる事はできないけど、まぁ本当さ。この国の法に引っかかるわけじゃ無いし、何より需要に貢献できてるんだ。まぁー騙されたと思って作戦を聞いてくれよ」


言葉を発したのは、斎藤 朋也。部活はサッカー部。クラスでは特にこれと言った特徴は目立たないが、噂ではドゲスというのが専らの評判である。


そして答えたのは工藤 修哉。この時も、胡散臭い話し方を続けている。


「それで?私達は何をすればいいわけ?」


「おっ、石田ちゃん乗り気だねー」


「見張りと誘導員かな」


「あれっ?俺スルー?」


今のは、石田 理沙だ。偽真面目系生徒会役員と言えばだいたいどんな奴か分かるだろう。

その後に出しゃばってきたのは、溝渕 浩太郎。一言で言うとチャラ男だ。こいつが身につけているヘアゴムの所為で、この国にはゴムが無いという事実を知ることができた。


「誘導?待って、話が見えない」


「あー、そうだね。まあまあ。作戦は今から話すから。な?」


「分かったわ」


「それじゃあ説明しよう!名付けて『勇者のダンジョンRTA』!これはな、まず初めに、出来るだけ多くの人が必要だ。


と言うのも、攻略するダンジョンの数だけ人員が欲しいのさ。みんなには事前にダンジョン前で他の冒険者が居ないかを見張って欲しい。


決行は夜中だ。国がダンジョンの管理をしているのは言わずもがなだが、夜中になるとそれは変わる。活発でないダンジョンでは夜中に見張りが居なくなる。さらに言えば昼に、定期的に犯罪者が隠れてないかパトロールに来るだけのダンジョン何かもある。俺たちが狙うのはこれらだ。


腐ってもダンジョン。それなりの魔石は手に入る。


そんな場所に見張りを立てたのは他でもない。不安要素を消すためだ。


もちろんみんなには報酬として3分の2をくれてやるし、実際に攻略させたりもしない。


これは迅速にやらなきゃダメなんだ、みんな抜かるなよ」



俺の説明に大凡の面々は理解したようだ。



「………ちょっといいか?」


今のは小暮 裕司だ。髪を染めたりタバコを吸ったりと色々している不良だ。しかし斎藤以上に悪い噂を聞かないので、ただのチンピラだとは捉えられている。


「なんだい?」


「肝心のよォー、魔石なんだが。それって工藤と木戸の2人で採掘するって考えでイイんだよなァ?」


「そうだな」


「それってよォー、俺らに対して幾らでも誤魔化しが効くって事だよな?俺らは発掘なう、みてーな魔石なんて見て無いんだからよォー、万が一のために、俺がお前等を見張ってたいんだが」


「………そうだね。それは盲点だったかな。最初に言っておくけど、普通魔石は特殊な加工法でしか砕いたりできないんだ。俺等はその方法は知らない。売れば金になると考えてたからな。


………まぁいいよ、同行を許可しよう。一番最初のダンジョン担当が決まっただけだしね」


さも公正を謳っているように聞こえるが、工藤は相変わらずの口調なため、皆やはり不信感は否めない。


「………」


ここに来てから一度も言葉を発して無いうちの1人は、立川 聡太だ。内気でシャイな性格の所為か工藤などとは話す事が無いが、藤沢や雲林院といったオタ知識に精通する面々とはよく話しているのを見かける。


「じゃあ、今日はこれで解散よ………立川君は後で話があるわ。残ってね」


「え?ぁあ、はい」


そそくさと帰ろうとした立川が木戸に呼び止められ素っ頓狂な声を上げる。


そして、木戸が立川を呼び止めたことに、誰かが舌打ちをした。その者の正体を知る者は木戸のみであった。












☆☆☆












「そ、それで、木戸さん直々に、一体僕に何の用でしか?」


噛んだな。


「残念だったね。用があるのはこっちなんだよ」


今のは工藤だ。


「あのね?立川君。さっそく聞きたいんだけど、藤沢君の『あの様子』どう思う?」


「………え?っと、普通に寝てたよね。何でずっとご飯食べずに寝てるのかは疑問だけどさ」


「成る程ねぇ、それだけかい?」


「………え?」


立川は何のことだかさっぱりだという顔だ。

それだけって、それでも十分な事だと思うんだけど、という立川の思いは届かない。

2人は何やら思案顔をしてから、


「よし、まぁあいつがヤバいのは今に始まった事じゃないから、心配しなくてもいいだろう」


「………そうなのかな?」


「確かに、このまま死ぬ姿は思い浮かばないわね」


「そ、そうだね、万が一になったら医師のヴェロニカさんが何とかしてくれるはずだもんね」


「っと、じゃあもう戻ろうか。それじゃあ、立川君?」


何だったんだろう。

そう思わずには居られなかった立川だが、次の言葉に耳を疑った。


「ゴメンね立川君、ちょっとだけ、チラッとだけだから。




『スムーズ・クリミナル』ッ!!」




立川は何をしているのか分からなかったが、自分が金縛りにあったかのように動けない事に気づいた。



「……!、!」


「フゥーン、どうやら本当になにも知らなかったんだね。ありがと立川君」



そしてやっと体に自由が戻る。


「な、な、なな、何を…………」


「え?何もしてないよ?僕らは何もしてない。そうだろう?僕らはここから一切動いてない」


「そ、そうじゃ、ちが」


「まぁ藤沢はやっぱ心配かもしれんな。食べてないなんておかしいもんね。





じゃあ『忘れてね』立川君」










☆☆☆







そのあとのブランチダンジョン。

内部には2人の男女が出口に向かって歩いている。


「………立川君はまだだったわね」


「まぁ、それに例の術に掛かってるままだったもんね」


「………ふぅ、これで『霊魔使い』は全員で7人ね。まぁ多分、亡命した人たちも目覚めてるでしょうから、それらを含めて11人ね」


「あ、雲林院入れるんだ」


「当たり前よ。素養バリバリあるじゃない。アレで目覚めない方がおかしいんじゃないのかな、って」


「まぁ普通そうかな」


「それより、工藤君の霊魔って本当、体のいい忘却能力になってるわよね。本来はどの辺までできるんだっけ?」


「オイオイ、いくら協力者だからといっておいそれと人の霊魔の能力なんて喋らないもんじゃないかな?例えるなら、そう、尻はいくら親しいからと言って見せるわけじゃないだろ?そういう事だよ」


「ちょっと、下品よ工藤君」


「そういう事なんだよ。能力ってのはおおっぴらにしたら下品なんだ。だから君だって能力の全容を教えてくれるわけじゃないだろ?」


「まぁ、人とは違った『力』っていうは、存在だけで迫害の対象になったりするから仕方ないわね」


ダンジョンの中だが、不思議と魔物が出てこない。

一般のグリモニア人からすれば不気味に思うかもしれないが、2人にしては何ら疑問を抱く事は無かった。


「まぁ、君がどれだけ『情報』を持ったとして。『彼』に危害が及んだらどうするつもりだい?」


「問題ないわ。全て殺すもの」


「うわー流石だね。大好きなんだね、『彼』のことが」


「そう、大好き!彼ね、いつもはテンション低くて眠そうにしてるんだけど、いざという時キリッとしててカッコいいの。あとその眠そうにしてる顔も大好きであの寝そうで寝ないどっちなのよって思わずなんでもしたくなるあのお寝坊さん!可愛い!めちゃくちゃ可愛いの!あとはねーーー」









工藤は終始苦笑いを貼り付けていたが、内心では「恋する乙女は無敵だな」と、どこかズレた感想を抱いていた。

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