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最終話 その奥に秘めるものとは

「おや、起きたかい」


 目覚めたと同時に男の声が聞こえる。

 目の前には見下ろすように白衣を着た男が立っていた。


「ここは…」


 海斗は乾燥した喉から息を吐く。


「都内の病院だよ」


 点滴の量を調整している男はすらりとした体格で顔かたちがよい。海斗が高校生と分っているからか、言葉を崩して話してくれている。


「あ、あまり動かないでね。君体全身に疲労がたまっているようだし、筋肉の筋をとても痛めているようだから。それのせいか君、昨日からずっとうなされてたよ」

「うなされてたんですか?」

 一条海斗は医者に訊く。

「そうだよ?」


 悪夢を見ていたわけではない。もしかしたら海斗の記憶にないだけなのかもしれないが。どのような夢を見ていたのかを覚えていないことはよくあることだと思う。

 部屋には二人以外誰もいない。外は明るくなっており、病室に備えられているデジタル時計は十時過ぎを表している。窓から入ってくる風が心地よい。海斗はゆっくりと起こした。


「それにしても君、どんなことをしたらそんな状態になるんだい? こんな人は初めてだよ」


 恐らく海斗のボロボロの身体のことを言っているのだろう。

「まあ、いろいろとありまして…」

 魔術など、理系の人には信じがたいものだろうと海斗は勝手に解釈する。

「それに炎症を起こしていた身体を無理に動かしたね? どうしてそこまでして激しい動きをしないといけなかったのかな?」

「それもいろいろとありまして…」

 海斗はあまり訊かないでほしいという表情をだす。

 それに気づいたのか、まあいいんだけどね? と医者は告げて作業を終え、医療機器の確認を始める。


「そういえば」


 何かを思い出したのか、医師が机の上にある何かを取り、海斗に差し出す。


「これ。お連れの子が帰るときに渡してきたんだ。『目を覚ましたら読んでほしい』だってさ」


 お連れの子というのは恐らくアナリアのことだろう。


 海斗は手紙を受け取り、宛先も送り主の名前も書かれていないラブレターが入ってそうな形をした真っ白な封筒を開ける。封筒の中には便箋が一枚だけ入っていた。海斗は丁寧に三つ折りにされている便箋を開いて読む。


 ――これをよんでいるということは目が覚めたようですね。

 先日も言いましたがまた言わせてもらいます。ありがとう。あなたがいなければどうなっていたかわかりません。あの時は気持ちがどうかしていました。ご了承ください。

 まずはじめに、最初あなたが「パンドラの箱」に加入すると言いましたが、やめにさせてもらいます。あなたのような力のある人が入られてはリーダーである私の示しがつかなくなりますので。

 それにしても、結構無茶なことをされてたようですが身体のほうは大丈夫ですか? あまり無茶な行動をして身を滅ぼすようなことはしないでくださいね。力のためにも。

 またいつかお会いしましょう。まあ、すぐに会うことになるとは思いますが。

 では。

 あ、それとこの手紙はすぐに処分しておいてくださいね。第三者の手に渡っていたらどうなりますか、わかりますよね?


 ほぼ半分は海斗を心配していないような文脈だった。この手紙を読んで自分自ら『パンドラの箱』に入ると言ったことを思い出したが、そんな話が無くなってよかったのだろう。いや、むしろこうなっているほうが一条海斗にとってはいいのだと思う。『第三者の手に渡らぬように』というのが気になるが、それは向こうの都合なのだろう。しっかりと処分しなければ。


「……は~ぁ」


 海斗は手紙を読み終え、大きくため息をつく。手紙を読んでいる間に医者はいつの間にか病室を出ていってしまった。


 久しぶりに一人になった気がする。


 思えばいつもなら家には華夏がいて、学校に行けば大河や琴美がいた。

 周りにずっと誰かがいて、楽しく過ごしていた。

 そんな日常からかけ離れた二日間はとても怖かった。

 苦痛や流血なんて経験はこの二日間で初めて味わったものかもしれない。

 だが一条海斗は琴美を守った。

 アナリア・ヴァンスを守った。

 自分の拳で人を守ることなんて初めてした行為かもしれない。

 なぜそこまでしてみんなを助けたんだ? 魔術なんてオカルトなものを君は信じることができるのか? と訊かれても一条海斗は何も答えることができないだろう。


 なぜなら、


 その行動を起こしたのは自分の身体が動かしたのではなく、一条海斗の中にある『何か』が動かしたからだ。


 それは魔術の力なのか科学の力なのかわからない、一条海斗に秘められた『力』が作用していたのかもしれない。もしかしたら、今もなおその『力』が起動し続けているのかもしれない。


(…そういえば)


 周りを見渡すと手紙が置いてあった机に海斗の携帯が置かれていた。手を伸ばして冷たいスマートフォンを手に取り、電源を入れる。


「うおっ…」


 通知の多さに思わず声が出てしまった。電話やトークが琴美と華夏で埋め尽くされている。琴美に関しては華夏が連絡でもしたのだろう。華夏の通知は夜が明けるまでに止まっているが、琴美は夜が明けても続いている。


「こりゃあ、心配かけすぎたかな…?」


 華夏に関しては飯の心配がある。あいつ一人で朝ご飯を作れるのだろうか。もしも退院が長引いてしまったらそれまでは華夏一人で自炊をしなければならない。『もう中学生なのだから』という常識が通用するような我が妹ではないとは気付いている。


「どうするかな~…」


 華夏に電話をかけるか。琴美にかけるか。


 それになんて話せばいいのかわからない。『魔術師にさらわれちゃいました~☆てへぺろ☆』なんて言ったらとりあえず華夏には殺されるだろう。

 海斗はう~ん、と息を漏らしながら悩む。


 その時。

 海斗の携帯が鳴った。

 海斗は画面に映る名前を見て大きくため息をつく。

 一条海斗の表情には、自然と笑みが浮かんでいた。

「……驚くだろーな」

 海斗は通話ボタンを押して携帯を耳元に添える。

 最終話だけを見てくださった方も、最初からここまで全て読んでくださった方、ありがとうございます。このような駄作でも楽しんでいただけたでしょうか?

 こちらの『魔術という名のセカイ』は、少し前にとある小説大賞に投稿させてもらったものです。ワードで打っていたのですが、このサイトにあげるとき、ルビふりの部分が消えているのが分かったときはとても焦りましたw。そして修正するのにも一苦労で、恐らくですがまだ脱字や誤字があると思います。もしその部分を見つけた人が居たら教えてください。自分でも探しているのですが、なかなか見つからなくて…。

 最初にも言いましたが、この作品は今のところ続きを書く予定はありません。もし気が向いたら書こうと思います。今後の予定ですが、二つほど投稿していきたいと思っているところなんです。てか、既に何話か書いてあるんですw。また少しずつですが、このような作品をのせていきますので、よろしければ見てください。

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