特異点
運命。
それはきっと誰も知らない道であり、誰もが辿る道である。
だけど、無数に存在する運命の中にただ一つの特異点が存在する。
その特異点は全てを手に入れ、全てを超越し、全てを壊した。
世界を恨み、壊し、それでも世界を愛した。
しかし、特異点の愛は人には過ぎた愛。
受け入れることも受け流すことも出来ない傍若無人の様な愛。
そんな特異点が辿り着く運命は只一つ。
生きながら眠りにつく。
それが唯一無二にして絶対の手段。
特異点は愛を与える事は出来るが、愛を注がれる事は無い。
特異にして異端。異端にして特異。
涙を流しながら特異点は眠りにつく。
【こんな世界壊してやる。こんな世界恨んでやる。こんな世界滅ぼしてやる。】
【それでも、、、それでも、、、世界を愛してるよ。】
理不尽な世界であろうとも世界を愛してる。
そうして特異点は深い深い眠りにつく。
特異点が存在した運命の人々は大いに喜ぶだろう。
だが、特異点の存在は世界そのもの。
人が忘れていった本当の愛。
特異点が眠りにつくと世界は止まる。
大地に芽吹く植物は枯れ、生命の源と呼ばれる海は死に、人々に光を注ぐ空には曇天が隙間なく覆う。
確かに特異点はその運命にとって異質で異端な存在に過ぎない。
しかし、決して忘れてはならないことを人は忘れた。
特異点は確かに全てにおいて異端であるが、特異点もまた生きている者なのだ。
そして、、、そんな特異点を愛する者もいるという事を、、、。
忘れてはいけない。
特異点は愛を与える。
その愛は平等でもあり不平等でもある。
でも、特異点の愛を受け入れることが出来なくても、その愛を理解する事は出来るから。
この先は俺個人の意見だから別に見なくても良い。
あー、、、でも、これを見るのが だったら別だけどね?
どうか、彼女の愛を受け止めてほしい。
彼女はああ見えて本当はすごく優しいから。
無口そうに見えてもあれは仮面みたいなものを取り繕ってるだけで、本性はギャップが激しい面白い娘だから。
こちらから話しかければ直ぐにボロを出しちゃうような単純な性格の持ち主だよ。
しかも他人の恋愛事となると何処からともなくプリンを取り出してこっそり様子を伺いながら食べ始めたりと破天荒な人物だよ。
でもね、そんな大胆不敵な彼女だからこそ、俺はどうしようもなく彼女に惹かれたんだよ。
だから、、、だからどうか忘れないで。
彼女と過ごした時間を、彼女が居た空間を、彼女が笑った瞬間を...彼女の全てを忘れないで。
あの時の時間が止まればいいと思ったほど、彼女と過ごした日々は掛け替えのない思い出だから。
でも、そんな彼女はもういない。
俺の目の前で笑ったり、怒ったり、いきなり無理難題を言ったりなんてもうしない。
苦しんで、苦しみ続けて、泣いて、泣きながら叫んで、、、そして消えた。
煙の様に後を残さず綺麗さっぱり跡形なく消えた。
彼女が消えたその瞬間から、彼女と過ごした大切な思い出がまるで燃やされる紙のようにじわじわと消えていく。
俺の世界の全ては彼女だった。そんな彼女との思い出が消されていく...。
だから俺は命を捨てた。
彼女が居ない世界なんて俺が生きる意味が無い。
もしも、次があるのなら、今度も彼女に出会いたい。そう、、、思った。
でも、やっぱり運命ほど理不尽なものは無いと俺は気づいた。
俺が気づいたと思えたきっかけはやはり彼女だった。
彼女と出会って俺はまた彼女に惹かれた。
何回でも、何十回でも、何百回でも、何千回でも彼女に惹かれた。
彼女の全てが愛しい。
彼女が居るこの世界だから、俺は世界を愛せるのだろう。
世界を愛しているわけではない。世界は俺にとっては彼女のついでにしかない。
そして、、、遂に終わりがやって来た。
待ち望んだ世界の崩壊。
俺から彼女が消える理由なんてどこにもない。
もしも理由があったとしても俺が認めない。俺が壊してあげる。
この...理不尽な運命を。
例え何度も繰り返して結末を変えようとしても、終わりは変わる事が無い。
幸せか不幸せの選択肢が待っていようと彼女だけはその結末は変わらない。変われない...。
だったら、彼女が眠りにつく前に俺が世界を壊そう。
彼女が嫌いな世界なんていらない。彼女が恨む世界なんていらない。彼女が愛する世界なんて、、、いらない。
俺が壊すよ。君の代わりに世界を壊そう。
だからいなくならないで...。
隣にいてよ...。
いつもの様に馬鹿みたいに笑ってよ...。
眠らないで、消えないで、置いて行かないで...!!!
俺が、、、俺だけが、君の愛を受け取るよ。
だから、、、俺の愛も受け取って?
もう君が居ないと世界は愛せない。
愛すつもりもない。
お願いだよ、、、。
早く、俺の所に戻って来てよ...!!!
世界は、君の憎んだ世界は、俺が壊したっていうのに、、、。
世界を壊したら、、、君は眠らなくていいと、、、そう思ったのに、、、。
どうして彼女は消えてしまったんだろうね?
憎み、恨み、愛し続けた世界から彼女は消えた。
理由なんて分からなかった。
だけど、なにぶん俺は諦めが悪いから何度でも繰り返すだろう。
でも、繰り返して行く内に彼女の事を忘れていくんだ。
だからここに記そう。俺の全てを。
もしも俺が彼女を忘れてしまったら、、、。
きっと、、、。
大切な人と過ごした思い出は忘れなれないけど、大切な人ほど、消えてしまった時の喪失感は図れない。過去に戻りたい、戻って救いたい。何度も繰り返して大切な人を救おうとするけど結末は変わらない。でも、諦めれない。また一緒に笑いたいから...。
願いを込めて