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序
最初、それはほんの小さな願いだった。
大切な者たちがいつまででも幸せであるように……そういう願いだったはずだった。
まさかそれが脆くも崩れ去ろうとはその時は夢にも思わなかった。
絶望と怒りがない交ぜとなった慟哭に、光の中に小さな闇が生まれ…この世は瞬く間に火の海に没した。
それは遠い遠い、まだこの世が混沌としていた時代の話。
そして今、災厄の源となるであろう小さな歪みがいずこかで生まれた。
今は未だ小さな歪みだが、すぐにこの世を飲み込むほどの力を持つだろう。
それはわかりきっていたことだ。
だが…………
「まだ……その時ではない、か」
御簾内で青年の小さな呟きが漏れた。
カラカラと何かを回す音。
その音は二度、三度聞こえ、再び止まった。
「…………」
溜息がこぼれる。
今は眠りに就いているが、活気に満ちたこの都の中で、これから起こるであろう災厄を知るのは今はまだ彼一人であった。