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アリサのキセキ  作者: ししし
はじまり
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026 彼女の奇跡の軌跡を追って

「──カハッ! ……はっ、はっ、はっ……」

「目覚めたか。あまり動くな。背中の傷は完治していない」


 息苦しさを感じて目が覚めた。瞳を開けた先には、ソファに掛けた少女がこちらを見下ろしている。いつか見た景色と妙に重なった。始めて出会った時と、妙なまでに。


「せっかくのお目覚めにそんな辛気臭い顔されちゃあ、俺は一体どうするべきだ? あっつつつ……」


 包帯が巻かれた腰に手を当てつつ、上半身を起こしてユーマはソファに寄りかかった。


「すまんな。振り回してしまって」


 マオが安心したような微笑で言う。


「あれは……まぁ、言葉の綾だ」


 窓枠に肘を突き、外の風景に視線を逸らす。二人の目を真正面から見られる自信がなかった。


「……調子に乗ってごめんな。俺も謝る」


 ユーマはふてくされたように言う。


「お前の姉は──」

「魔王を倒した勇者、なんだろ?」

「……うむ」


 うつむいて頷くマオ。


 ユーマは振り向いて笑ってみせた。


「確かにな。姉貴なら魔王と仲良くなっちまっててもなんらおかしいことはねえ。あの人は、そういう人だ」

「……そうだな」

「だぁ~もう、笑え! そんな顔すんな!」

「むぐっ、いたたたたた!」


 指で無理やりマオの頬を押上げる。一瞬笑ったような表情になったのを確認して、ユーマはそのまま頬をつねった。


「心配させやがってコンチクショウ!」

「やめろやめろ! 離せバカ者!」

「あ、もしかしてユーマ起き──」


 操縦席で魔導車を動かしていたエミリアが、こちらのドタバタに気がついた途端、


「ぐはっ」


 ついさっきまで座っていたソファもろとも床が消え、地面へと臀部を強打した。その痛みがそのまま腰へと伝わりじんじんと痛む。傷口が開くことはなかったものの、十分悶絶ものだった。


「わっ、突然魔導車片付けないでよマオ。びっくりしたよ」

「すまんすまん。このバカ者が悪いのだ」


 エミリアは難なく着地に成功したようで、何事もないようにこちらへ歩み寄ってマオに言った。


「あれ、そういえば……キルナは? つか、マオ。なんか大きくなってないか? なんだか少しおとなになったかのような……」

「気づくのが遅いぞユーマ。見ていろ──。今一度我が元から解き放たれよ、『ヴァール、デル、レーヴェ』」


 見上げたマオの身長が、初めてあった時より数段大きくなっていたことに今更気づいて問いかける。すると、マオはほくそ笑んで魔法を唱える。見る見るうちにマオの体は光の粒に包まれる。そのシルエットは次第に大きさを変え、小さく、そして二つに分裂した。


「あ……あの、どうも……」


 その片割れは覇気のない弱々しい言葉で、ペコリと頭を下げる。それは紛れもなく、キルナの姿だった。


 そしてその横には、キルナより頭ひとつ小さいマオが、さっきとは打って変わって可愛らしくチョコンと突っ立っている。胸を張り、腰を手に当て、どうだと言わんばかりにふんぞり返っていた。


「キルナは元々私の力だ。それを吸収すればするほど、私の体も元の姿へと戻る」

「なるほど……。ってことはマオ、お前ってホントはもっと大人の女性だったりするのか」

「当たり前だ。このか弱い姿など仮初に過ぎないのだ。封印に伴う力の分割によって、私が自分の力の吸収分離を自在に出来るようになっている。『ヴァール、デル、レーヴェ』」


 すぐさまキルナの全身が光に包まれマオの体と混ぜあわせられる。そのシルエットは見てわかるほど大きくなり、光の幕から再び現れた時には大人びた雰囲気はあるが、まだ幼さを残すマオの姿があった。


「お前が大人って……全く想像がつかねえよ。知ってたか? エミィ」

「う……うん。これに全部、ね」


 エミリアは特に驚いた様子もなく、ユーマの問いかけに対して腰の小物入れから一通の紙切れを取り出して言った。


「なんだそれ?」


 問い返す。


「マルステンで先生に会った時に。ユーマに渡しておいてって」

「…………」


 エミリアから紙切れを受け取って目を通す。


 そこには、ユーマの姉アリサのこと。ユーマの剣のこと。そして魔王のこと──その全てが克明に記されていた。


「結局、俺だけ何も知らなかったってことか」


 ルキからの手紙をくしゃくしゃに握りしめてユーマはぼやいた。


「何も全てを今すぐ知る必要などない。これから知っていけばいいのだ」

「そうだよ! 旅はこれからだよ!」


 少し大人びたマオが、ユーマの背を叩き慰めるように囁く。同調してエミリアも言う。


 謎が解けて、秘密を知って、肩の荷が下りたように楽になった気がした。


 気を失う直前にディータの口元が語った『セイハンタイダ』。


 勇者が封印した魔王を、勇者の弟が守って旅をする。正反対だ。姉貴の通った道を辿るように全く違う道を歩んでいる。


 だけど、これから進むだろうとする道が間違った道とは思わない。


 姉貴が通った『王道』。これから自分が通る『覇道』。


 『方法は違ってもいい。やりたいことをやればいいんだよ、ユーマ。結果は後から付いてくる』。また姉貴の言葉が脳裏に浮かんで消える。


「で、次の行き先は?」


 服についた土埃を払ってユーマは歩き出す。


「そんなもの知るわけがなかろう」


「放浪の旅になりそうだねぇ……」

「はぁ、こりゃまた長く掛かりそうな依頼を受けちまったもんだ……」


 歩いて行く先を眩しいくらいに陽の光が照らしていく。土の感触を、これから歩く道を確かめるように踏みしめて進む。


 大陸最高の暗殺者の弟子──エミリア。


 復活の魔王──マオ。


 勇者の弟、そして『魔を断つもの』の所持者──ユーマ。


 三人は宛もない旅路を進み始める。それぞれの大切なものの為に。


 誰かの軌跡を追い続けて。

読了お疲れ様でした。

すでに書き終えていた分はここまでとなります。


ここまで読んでくださった方々のご意見<もらえるかどうかもわかりませんが>を参考に、この続きを書くかどうか決めたいと考えています。


本当にありがとうございました。

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