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プロローグ

今回で4作目です。

思ったよりも残酷描写はカットできていたので、タグを外しました。

不定期な連載になると思いますが、お願いします。

 どこかの、恐らくは地下の一室でロウアーは目を覚ました。

 治療のあとは見て取れるが、死なない程度の最低限の治療。手足にこれでもかというほど手錠がかけられている。それに加え、拘束衣を着せられており、身動きが殆ど取れない。

「『僕は怪我なんかしてな……』」

 言おうとしたとき、頭に重い角ばった何かが激突し、中断させられる。投げられたものを無視して視線を動かすが、拘束で上手くいかない。

「おはよう。詐欺師さん」

 ややあって声がした方を見るとハヅキがロウアーを睨みつけていた。傍らにメツも控えている。

「やあ、おはよう」

「余計なことを話すな」

 拷問吏の眼差しで女はロウアーを睨む。

「私の質問したことだけに答えろ。それ以外で言葉を発するな。指一本、動かすな。ぶち殺すぞ」

「随分、強気な……」

 首元に電撃が走った。電流が体を駆け巡り、堪らず絶叫した。

「スイッチをいれた」

 ハヅキがメツの制止を無視して牢屋に入る。ロウアーの頭に体重をかけて足を乗せる。タイルと足にはさまれ頭蓋がみしみしとなる。顔が横になったお陰で視界に入ってきたのは先ほど投げられた何かだ。大きな国語辞書だ。天才という触れ込みのハヅキが今更、必要なものではないだろうに。と思ってひとつのいやな推測に辿り着いた。

 単にロウアーを甚振る為に彼女はこの辞書を持ってきたのではないか。

そして、この推測にいたらせる目的があったのではないか。

 ありとあらゆるものを使って痛めつけるという意思表示だ。

 頭上から嗜虐に満ちた声が降ってくる。

「センサーつきの拘束衣だ。私が許可したとき以外に言葉を話せば電流が流れる。妙に動いても流れる。勿論、私の任意でも流れる。わかった?」

 ロウアーは無言。

「私の質問には答えろ」

 スイッチが入れられ、電流が流れる。ロウアーが絶叫。

「では質問。四月席と何を話した?全て吐け」

「な、何のことだか……」

 電流、絶叫。

「吐け」

 彼女は拷問の才能があるな、とロウアーはそう考えつつも思案する。

 話してしまってもかまわないか。

「彼には……アリスと、合わせてやると……それを取引材料に、君たちを拘束させてもらった。…………後で反故にした。いくら僕でも、誰かを彼女の所とまで引っ張り上げることは不可能だ」

 だからあの脱出の際、長い間。隙がなかった四月席が動揺したのか、とハヅキは思い当たる。そしてロウアーの言うことが本当であれば、彼は一応、アリスに会うことはできるらしい。

「随分と口が軽いわね」

「もう隠しても意味がない」

「アリスは……貴方の婚約者?」

「まぁね」

「他に隠していることは?」

「僕たちの境遇はクゥに聞くといい。僕の目的も彼女が知っている」

 電流。今度は絶叫しなかった。そんな体力がなかった。

「あの子は貴方がいじめたせいで部屋に引きこもっているわ」

「そ、れは……申し訳、ないことをした……ところで……何で、僕を殺さない?」

 ロウアーの言葉にハヅキは優しく笑う。

「お前は情報源だ。楽に死ねると思うな」

 殺す気はあるのか、と内心ひやひやする。神との和解などと夢を見ている女だから甘いところがあるだろう、と少し見くびっていた。そして天使である自分を脅威だと正しく認識している。

「生理中なのかい?」

 顎の先端に蹴りが入り、脳を揺さぶられたロウアーは気絶。

 気絶してしまった天使を見てハヅキは溜息をつく。

「やっぱり下手ね。こういうの」

 この下手というのはうっかり気絶させてしまったことだろう。

「その割りに随分と乗っていましたね」

 引いた笑いをメツが浮かべている。

 肉体が優れていても脳をゆすぶられれば、気絶は免れない。狙って脳震盪を起こした彼女が下手にはとても見えなかった。

「私怨があるからね。事あるごとに私の恋人いじめてくれるんだから……」

 つま先でロウアーの脳天を小突く。

「やっぱり私にこういうことさせないほうが良いと思うのよ。勢い余って殺しちゃいそう」

「それはさすがに……」

「やんないわよ」

 そういいつつ、牢屋の前に備え付けられた椅子に座る。

「私が見張っておくから行っていいわよ。人手不足ってほんとに嫌だわ」

 ハヅキはそう言うとメツを牢屋から追い出した。

 メツは数少ない神へのカウンターだ。ここで遊ばせておく理由はない。

 ここは人里離れた孤島。旧日本軍が放置していた収容施設だ。なんに使われたかというと……まぁ、今と似たようなことに使われていたのだろう。

 対ビの収容施設のこの天使はとてもおいていけなかった。ただでさえ、服従因子で周囲の人間は気を失ってしまうのだ。

 そして、前回の件で戦力が激減した。

 その責任をとり、謹慎代わりにハヅキはここで彼を見張るという役目を与えられた。

 責任の擦り付け合いがこの有様だ。

 タダトがかばってくれなければ、もっと重い処分だっただろう。

 無能な上層部はこちらの足を引っ張ってくれる。

「ほんと、嫌になるわね」

 さらわれた恋人のことを想う。

 あれから二日しかたっていない。

 彼は一体どうしているのだろうか?


ではかき溜まったらまた投稿させていただきます。

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