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とある客人

さて、お城のほうではお客のようです。

「それでそれで、お二人の関係は!?」

 十代半ばほどの、可憐な少女が目を輝かせている。揺れるチェリーブロンドも、彼女の心情を表すかのようだ。

 応えた青年は、ことさら意識して極上の笑みを浮かべた。

「昔からの腐れ縁だ」

「腐れ(た)縁」

 うっとりと呟く少女を前に、青年はなぜか「してやったり」という顔をしていた。

 その理由を知るルーは、特に何も突っ込まないことにしてとてもおいしいブリオッシュを堪能する。関わるのが面倒だからだ。

「なあ、ルー」

 青年が、視線をルーに向けてくる。少女の相手に飽きたのだろう。ルーは仕方なくフォークを置いて、顔を上げた。

 行儀悪く頬杖をついて、いつも楽しげな光を失わない金の双眸が何かを期待するようにルーを映している。整いすぎるほど整った美貌に、黒い蓬髪が無造作にかかるのすら計算ずくのように決まっていた。

 いや、実際計算しているのかもしれない。この青年の職業は、目下のところモデルなのだから。

 しかしルーの方も、相当以上の美形である。長身に纏うほどの丈為す黒髪は相手の青年とは対照的に流れる滝のよう、瞳は闇に磨かれたエメラルドの翠。醸し出す雰囲気や容貌も、こちらは冬の夜を思わせる凄艶さだ。

 だが、薄い唇が紡ぐのは、至って暢気でほえほえした言葉。 

「こんなことなら、例の新刊持ってきてやればよかったかもな」

「そうだねぇ。どっちが右か左かでだいぶもめてたけど、結局最高売上額更新した傑作みたいだしね」

「結局上か下かはじゃんけんだったのにな」

 一部の人にしかわからない会話は、少女にはなじみのものらしい。ますます目をきらきらさせて二人の青年を交互に見やり、時折悩ましげな溜息すら漏れる。

 金の目の青年は、ヴァル。

 冬のエメラルドを持つ青年は、ルー。

 彼らを並べて眼前に置けるこの状況は、少女ならずとも目の正月だったろう。

「あー、それにしても遅ぇな」

 頬杖をついたまま、ヴァルは紅茶をすすった。行儀が悪いはずなのに妙に決まっていて小憎らしいが、つきあいの長いルーには見飽きた光景だ。

「もう来ててもおかしくないはずだったんだけどねぇ」

 ルーは再び、ブリオッシュに集中する。こんがり香ばしく焼けていて、とても美味だ。

「あまり遅いようでしたら、探しに行って参りますわ。さ、お茶をもう一杯いかが?」

「ああ、いただこうか」

 モデル業で磨いた究極営業スマイルが、またしても炸裂する。

 少女がうにょうにょと身をくねらせているのを、ルーは視界の端で捕らえていたが特にコメントしなかった。

 彼が出入りするとある家族のところでは、日常茶飯事の光景だからだ。


天使と堕天使の親友コンビ

何しに来たんでしょうね?

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