とある襲撃者
先月までは偶数日更新でしたが、今月からは奇数日になります。
さて、なんか来ました( *´ー`)
それは、実に突然やってきた。
魔術師をからかっていた麗人も。
うさうさたちに遊ばれていた勇者も。
そんな光景をのんびりまったりと眺めていた従兄弟同士二人も。
一斉に、空から降りてくるものに目を転じ、そして。
「な、なんだあれ!」
勇者と魔術師だけが、驚愕の表情を浮かべた。
「魔術……いや、異種族との混血か?」
「違いますよ」
ブラウの呟きに答えたのは、閖吼。
「こんなところで何をしているんでしょうね、彼は」
「え?」
目を瞠るブラウには一瞥すらくれず、閖吼は立ち上がり歩き出す。
ぬいぐるみ~ずと、メイズの方へと。
「あ、ちょっと下がってた方がいいよ。巻き添えくらうから」
「え? え?」
ケインに肩を掴まれて、訳がわからないままブラウは引きずられていく。至って気楽そうな顔をしているのに、すごい力だ。逃れられない。
そう言えばさっきも、メイズを担いだ上大量のにんじんまで運んできていた。あのときはまったく意識していなかったが、並みの腕力ではない。
何者なのだ、彼らは。
「いちおう構えておけ。大丈夫だとは思うが」
幻もいつの間にか、そばへ来ていた。
ブラウは混乱したまま閖吼達の方へ視線を転じ――。
次の瞬間、何も見えなくなった。
「ほら、駄目だよ直視しちゃ。幻、洗浄手伝って」
「瞼を圧迫するな。傷がつくぞ」
両手を無理矢理掴まれ、もがく。痛い。どこかわからないが、痛い。何も見えない。暗い。痛い。
「大丈夫大丈夫。力抜いて。今洗浄するからね」
のんびりしたケインの声の直後、さらに痛みが増す。鼓膜がびりびりと震え、喉奥を割かれるかと思ったとき初めて、ブラウは自分が力の限り絶叫していることを知った。
そして、痛みの発生源も。
「うん、大丈夫。応急処置は終わったからね。もう少し我慢してて」
髪を、撫でられる。まだ真っ暗だったけれどそれで少しだけ落ち着いた。気づけば、両目の痛みも和らいでいる。
ブラウが身体の強ばりを解いたのを感じたのか、髪に感じる暖かさがもう一度優しく通り過ぎていく。
「本格的な治療は、元凶にやってもらうから。ちょっと待っててね」
頬を凪いだ風と、草を踏む音。背中に感じる軽い振動。
ケインが、遠ざかっていったようだ。
足音は一つ分。幻はそばにいるのだろうか。まったくわからない。
「痛くはないか?」
そんな心情を読み取ったかのような絶妙の間合いで、幻の声が降ってきた。
「はい……まだ少し」
「そうか」
そこで少し間が開いたあと、「すまなかったな」と彼は続けた。
「いえ、そんなことは。でも、いったい何が起きたんですか?」
「……ああ」
声が低くなったことに、ブラウは気づいた。それも、相当険悪な調子で。
「話せば長いんだが……」
そんな前置きから始まった話に、ブラウは言葉を失った。
かわいそうなブラウ(ノ_Θ。)