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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

空土 海

強い記憶

 暗闇が支配する空間、電灯のように月が空の真ん中から辺りを照らしている。そこでは周りにそびえる木々がぐるりと囲む開けた場所。家もビルもないその場所には、多くの四角い物や槍のような物を囲う小さな柵が無数にある空間。聞こえる音は木々のざわつきだけ、そんな中で人の言葉が風に乗った。

「今日はここにするかな」

 月の明かりは一つの四角いものを照らす。そこには文字が刻まれており、その一部である「大塚」という文字だけが鈍く光を反射していた。

「さて今日はどんなのかな?」

 簡単紡がれた言葉とは裏腹に、口元が綻んでできた笑みはくっきりと三日月をつくりだす。


   ‡‡‡‡


「遅くなっちゃったー、近道しよっと」

 左手首に巻かれた腕時計の針は今日の終わりを告げようとしていた。友達との遊び時間は時間の流れを忘れさせ、気が付けばこの時刻だ。彼女はいつも使っている近道を通る。

 そこは獣道のように雑草が生えていないだけど土の道、木々のざわめきは暗闇での恐怖心を煽るかのように、彼女を包む。

「やっぱ夜来ると全然違うね……」

 心細さを和らげるように独り言を呟き、身に付けているもので唯一明かりとなる携帯電話の小さなライトで少しでも視野を確保し、歩き続ける。

 少しすればいつものように開けた空間に出る。四角い石が多く寄り添う場所。墓地へと辿りつく。

「こ、来なきゃよかったかな?」

 予想以上の恐怖に顔を引きつらせる彼女は、ここから早く離れようと歩みを早める。

 すると突然彼女の照らす光現れた。

「ひっ」

 突然のことに体をビックと弾ませ、右からくる光にゆっくりと顔を向けた。光によって短い髪とまだ幼さが抜けない顔つきをした制服姿でカバンを肩に下げた少女が浮き彫りになる。

「ここでなにをしている」

 光を放っている主は彼女に声をかけてきた。ゆっくりとした足取りで近づく人型。

 目を細めたていた彼女の視界にも人型から、少しずつ服装や顔が見えてくる。警戒していた彼女は光を放っている主の服装を見て安堵していた。

「君、こんな時間にここで何をしている?」

「す、すいません。今から変える途中で」

 服は青、帽子をかぶっているその服装は警察管だと一目でわかる。顔つきはいかにも気難しい人を表わしたかのようだ。

「……本当にそうか? この辺りで連続通り魔殺人が起きてな」

「通り魔? そんなニュースありましたっけ?」

「そのための巡回だ」

「……もしかして、疑ってるんだすか?」

 そんなありきたりなセリフが出てきた。どのみち補導は免れない状況だ。取り調べじみたことはされることは目に見えている。

「少し荷物検査をさせてもらう」

 確認させるためか警官は内ポケットから警察手帳を取り出し掲げた。そこには大塚 秀明と書かれていた。

「は、はい」

 やましいことがあるかのようなに動揺と緊張を示す彼女は、抵抗も反論もすることなくカバンを差し出す。

「そ、その通り魔ってどんなふうに――」

「人が殺されているのに知らないのか?」

 警官がカバンを受け取り、開くと疑問を疑問で投げ返された。

「……」

 うまく会話が成立していない。警官が巡回強化をするほどならば学校でも話ぐらいはするはずだ。

「ん!? これは!」

 警官が顔色を変え、カバンの中身を凝視していた。するとすぐさま身構え、もっていたカバンを投げ捨て、いきなり彼女を組み伏せにかかった。

「ちょ、な――」

 その意見は虚しくも中断され、顔は土に付けられる。背中に馬乗りされ、関節技をかけられる。ギチギチと右肩と肘の関節が悲鳴をあげ、彼女は身動きがとれなくなった。

「通り魔犯、刃物で抵抗後に無効化、確保。念のため応援を求む」

 警官はすかさず胸にあったトランシーバーで連絡を付ける。

「ちょ、なにも、」

「動くな」

 左手も背中に回されると両手をガチャリと手錠で固定される。

「なにもないでしょ」

 彼女の叫びは聞こえないかのように、警官は呟く。

「黙れ、貴様にしゃべる権利があるものか」

「いいかげん――」

「大人しくろ」

「だから――」

「暴れるな!」

 わけもわからないといったふうに暴れる彼女は、気が動転していた。

「だったら――」

「往生際が悪いんだよ!」

 そのとき彼女の頬には拳がとんできた。背中から側面を殴るように二回、三回と拳が振るわれる。

「ぐふっ、かは」

 殴られた衝撃で漏れる声と警官の荒い息が響く中で、彼女の嗚咽が混じる。そんなことお構いなしかのように殴る男の表情は怒りに支配されたかのような形相だ。

「お前のせいで、お前のようなクズに、娘は、まだ十四歳だったんだ!」

 怒りからあふれ出た涙は止まることなく顎から滴を垂らした。彼女の動きが鈍くなろうと、拳が赤く染まろうと拳の動きは止まらなかった。

 そのうち彼女は動かなくなった。そのことにやっと我に返る警官は荒い息を吐き、立ち上がると彼女を無視してフラフラとある墓を目指していた。

『大塚 美幸』

 そう書かれた墓の前で立ち止まる。そこで森から人型が出てきた。音もなく、ただ森から出てきただけだ。その片手にはナイフが握られ、それを弄ぶように投げては掴みことを繰り返していた。

「もう終わりか」

 その言葉を放つ物はニヤニヤと笑みを浮かばせた、それは嫌悪するほど醜悪な笑みだ。

 警官は近づいてくるその人型に気が付くこともなくぼうっと墓を見据えていた。

「もういいよ、おもしろいもん見せてもらったし、じゃ、お疲れ様」

 その言葉と同時にナイフが警官の頭の天辺をスイカかなにかのように刺し、液体が赤い噴水のごとく流れ出る。ドシャっと警官も彼女のように横たわり動かない。人型はナイフを内に仕舞い込んだ。

「はは、譲ちゃんも災難だな」

 笑いながらの声は、同情でも憐れみでもなくただ愉快を孕んだ言葉だ。

 しばらくすると警官の体は姿を消していた、なにも存在しなかったかのように。

「んー折角だし探ってみるかな! 新鮮でもあるからな~」

 一人で笑うその男には空から照らす月の明かりで見られるその人型は影もつくらず、地にもついてはいなかった。

「譲ちゃんの中で一番、強い印象の記憶わ~と」

 横たわる体の頭に腕が入って行く。血も穴もなくただ貫通しているのだ。すり抜けるように。

「ちぇー、しょぼい人生。再現の価値なしっと」

 落胆とともに俯く人型はため息とともに進んでいく。月明かりで見える後ろ姿はマントにフードを被った人型。先ほどのナイフが玩具に見えるほど大きな鎌を背負った背中。

「どこかおもしろい記憶もった魂ないかな~」

 人型は夜に溶け込むように消えていった。

その墓地で雲に隠れようとする月に照らされるのは横たわる人間その側に存在する『大塚 秀明』と書かれた墓石だけだった。

今回のテーマは「墓場でボーイッシュな女の子が逮捕される」です。


 ……なにこのテーマ?


と思った人もいるでしょうけどこは「どこで」「誰が」「何を」の三区切りランダムでの決定なのでこうなりました。以外と辛いテーマでした。


読了ありがとうございました!!

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