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グレイル・アイズ  作者: 九六式
冥海の使者
8/12

I CAN FRY!



 曲がり角から飛び出して来た触手の化け物を刀で切り捨てては、また別の方角へ向かって走る。


「その、どこまで逃げるんですか?」


 さっきからずっとこんな感じだ。遭遇しては撃退し、化け物がいない方向へ向かって走る。


「違う」


 何が違うのだろうか。そもそも、彼女は一体何者なんだ。助けてくれたのは事実だが、信用して良い相手なのか?


 あたりは薄暗く、フードの奥の顔はほとんど見えない。


「ん、こっち」


 今度はオフィスビルに入る。ここでやり過ごそうという魂胆なのだろうか。


 入口を抜け、階段を上がり2階へ。しかし、2階への最上段には見覚えのある人影が。


 間違いない、奴だ。


「チッ」


 目の前の彼女は舌打ちをすると、刀を納めたかと思いきや


 パァンッ


 勢いよく背後の窓ガラスを蹴り割る。


「ちょちょちょ!」

「掴まって」

「はえ?」


 突然ふわっと浮遊感を感じた次の瞬間、僕は割れた窓の外で宙ぶらりんになっていた。


 どうやら僕を抱えたまま、ビルの外壁にしがみついている様だ。


「口、閉じてなさい。舌を噛むから」


 そう言うや否や、凄まじい勢いで地面が遠のいていく。


「ぐぅぅぅぅっ!」


 あろうことか外壁を駆け上っている。


 そのまま屋上まで登りきった所で、足が止まる。


「(し、死ぬかと思った……)」


 しかし、一向に降ろしてくれない。


「その、もう降ろして貰っても……」

「まだ口を閉じていて」


 彼女はそう言うと、トントンッと靴のつま先で地面を軽く蹴る。おい、まさか。


「え、ちょ、待っ」


 僕の抗議は、凄まじい衝撃波に遮られる。


「うおぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 夜空に悲鳴が響き渡る。勿論、僕の悲鳴だ。


 今僕は空を飛んでいる。絶叫マシンは別に苦手でも何でもないが、これは話が違う。


「(死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!)」


 なるほど飛び降りれば奴に殺されなくて済むと。冗談じゃ無い。嫌だ、こんな死に方したく無い。


 しかし、現実は非情なもの。ドンドン地面が近づいてくる。


「(死ぬ……!)」


 観念して目を閉じるが、急に勢いがなくなっていく。


 ドボンッ


 こんな所で聞こえる筈のない音が聞こえる。


「え?」


 気づいた時には、お姫様抱っこされた状態で地上に着地していた。


「先を急ぐわ」

「え、ああ、はい!」


 何が起きたのか全く分からないが、漸く降ろしてもらい、再び手を握られ走り出す。


「(というより、この先って)」


 西洋の物語にでも出て来そうな、御大層な校門が見えてくる。僕が通う武凪士学園だ。


 助けを呼ぶつもりなのか、それとも僕だけ学園に逃がそうとしているのか。


 しかし、目の前の少女は僕の手を握ったまま門を通過し、奥へ奥へと進んでいく。


 このまま行くと本校舎を含む部外者立ち入り禁止エリアだ。こんな時間に足を踏み入れようものなら、警備のセキュリティドローン達が殺到してくる。


「待ってくれ!そこは!」

「いいえ待たないわ」


 逆に加速する。マズイ、このままだと!


「あれ?」


 何も起きない。ドローンどころか警報すら鳴らない。


「街中の人間があの短時間で1人残らず消え失せてる時点で、察して欲しいわね」

「ごめんなさい……」


 しかし、彼女の狙いは一体何だ?それに、先程からあの化け物が姿を見せていないのが気がかりだ。


 ずっと走り続けていた彼女が、ようやく足を止める。流石にそろそろ僕の体力も限界だ。


「着いたわ」

「こ、ここって……」


 そこは真っ白で無機質な、ドーム状の空間。模擬戦用の仮想戦闘プログラム装置、シュミレータールームだった。






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