会合
指示通り教室にて自分の席で待機していると、1人の女子生徒が近づいて来る。
その顔には見覚えがある。
【燕翔寺智恵】。中学の頃、一度だけ同じクラスになった事がある。
「桐堂廻影様、でございますよね?」
「ええ。お久しぶりですね、燕翔寺さん」
だが、今まで全くと言って接点が無かった。というのも彼女は雲の上の存在だ。
「(まさかこんな所で会うとは)」
飛燕グループ。近年、ハウンドの開発で力をつけてきた企業、その社長の一人娘。いわゆる社長令嬢だ。
一時期、社長の隣にいる所をよくテレビに映されていた。
てっきり卒業後は進学すると思っていたのだが、家業を継がないのだろうか。
「ああ良かった。見知った方がいらして、安心致しました。これから宜しくお願い致しますね」
「こちらこそ、宜しくお願いします。燕翔寺さん」
彼女いう通り、知っている人間がいるのは有り難い。せっかく出来た縁だ。今度とも仲良くやっていきたい。
「クラスメイトなのですから、どうか肩の力を抜いてください。名前も呼び捨てで構いませんよ、桐堂様」
そっちは様付けかよ。と突っ込みそうになるが、口には出さず飲み込む。
「えっと、じゃあ……燕翔寺、で」
「はい」
眩しいほど満面の笑みを見せられ、視線を逸らしてしまう。そこでふと周囲からの視線を感じる。
中学の時もそうだったが、彼女は人気者だ。
飛燕グループとの接点が欲しいというのは勿論だが、やはり彼女が可愛らしい容姿をしているからだろう。
中学の頃接点が無かったのも、緊張して話しかけられなかったからかもしれない。今この瞬間も、声が上擦ってしまわないかと内心ドキドキしている。
燕翔寺が席に戻った後もまだ何人かからの視線がこっちに向いていて、居辛さを感じていると、逆にこちらを見向きもしない人物を見つける。
左隣の席に座る女子生徒。先ほど新入生代表をしていた子だ。確か、深海だったか。
今時黒髪とは珍しい。
昔は多かったらしいが、今では空気中に漂う魔素の影響で鮮やかな色をしているものが殆どだ。
燕翔寺なんかが最たる例で、天気のいい日の青空の様な色をしている。こういう明るい色は体内の魔素が特に多い事を示している。
つまり彼女は……
「何」
「あ、いや……」
勘づかれた。眼鏡の奥から冷ややかな青い目が覗いている。別にやましい事は無いのだが、全て見透かしているかの様な目に、たじろいでしまう。
「ごめん」
「それ、何に対する謝罪かしら?」
「その……マジマジと見てたから」
「そう」
会話終了。
なんだろう、美人なんだが燕翔寺とはまた違った緊張を感じる。
「………ふぅーっ」
ため息まで吐かれてしまった。




