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ファイル2:可能性

ここはストリート6(シックス) ギャルドのアストラ部隊支部、本日のエイリアン討伐を終わった一行は各々、各自のやるべき事をこなしていた。トキノ・カゲウチは焼かれて焦げた体をポリポリと掻きながら何やらノートに書いている。フィリア・アルトリウムは化粧を落とし、パモス・F・トレバーは大きないびきをかきながら寝ている。バックス・サーベスランドは自分より遥かに小さなパソコンに向かってポチポチと何かを入力している。フィリアはパモスの鼾がうるさかったのか、振りかぶった張り手で頭を叩く。その瞬間から静寂が壊され、賑やかな空間へと変貌した。

「もう少し静かにできんのか、お前らは…」

ワイワイと騒ぐ3人を横目に頭を抱えながらパソコンを弄り倒すバックスと、それを気にを止める事なくノートに必死に何かを書くトキノと、何ともカオスな空間が出来上がった。

最中、木製のボロボロの扉がノックされる。

「バックスー、お客さん」

「お前らが騒いでるから気づかなかったんだよ」

いち早く気づいたのは先程まで騒いでいたフィリア、彼女は狐のシリオンであり、音や気配に敏感である。

扉を開けた先には誰も居ない、かと思われたがバックスより遥かに小さな少女が今にも泣き出しそうな顔でこちらを見上げていた。

「どうしたんだ?お嬢ちゃん。ここに来るって事は訳ありだな?」

バックスは少女の目線に近づく為、屈み込んで話しかけると、まるで迷子が親族に会い、安心感から涙を流すように泣き始める。

「お母さん…お母さんが…」

「あーあー、バックス泣かせちゃったんだァ」

「違うから…お嬢ちゃん、1回中に入りな」

バックスは少女を家の中に入れる。そこから10分程少女は泣いていたが、ようやく落ち着いたのか、吃逆しゃっくりをしながら4人に話し始める。

「お母さん、エイリアン達が近くに出たって外に出たら帰って来なくなっちゃった…」

一同は顔を見合わせ、少女が混乱しているのか不思議そうな顔で問いかける。

「この辺のエイリアンは全部倒したと思ったんだけど、まさか生き残りが居るのかしら?」

「わかんない…。でもお母さん、エイリアン達が居るから外に出ちゃダメって」

「それで待ってたけど、待っても帰って来ないから心配で外に出ちゃったんだ」

フィリアが優しく問いかけると、少女は哀しくこくりと頷く。その目尻には未だ小さな涙が留まっている。4人はそんな少女を放っておけなく、優しく少女に布団をかけ、会議を始める。安心したのか、少女はゆっくりと瞼を閉じ、小さな寝息を放ちながら寝始めた。

「私達は数ヶ月はここに留まってるけど、この周辺のエイリアンは居ない事は確認できてるよね?」

「あぁ、そもそもここはエイリアンの侵入を許さないように推定10メートルはある壁が建設されている。そう簡単には侵入は許さないだろう」

「でもさァ、エイリアン共の生態ってまだあんまりハッキリしてないんしょ?地面掘って壁の下から侵入!って事も有り得ると思うんだよねェ」

「エイリアン、IQは人間の3歳児、カラスと同じ知能指数はある」

「え、そうなん?どこ情報…?」

「この前、エイリアン倒した後に脳を調べたら、後頭葉、側頭葉は無かったが、大脳皮質の形状は人間と大差無かった」

「うげ…まさか解体したん?」

「ダメ、だった?」

「そんな事ねェけど、その、気持ち悪くなかったんか?」

「うん…あんまり」

「まぁまぁ、トキノは感情薄いからそういう事も簡単に出来ちゃうよねって私は思ってるよ」

「こう止まっていては何も解決はしない。明日、明朝から調査に入るぞ。全員、支障が出ないよう休め」

バックスの掛け声により、文句を言いながらも4人は散り散りになり寝床へと入っていく。フィリアは少女を抱き上げ、自室へと運ぶ。瞬間、窓の外に気配を感じ、ジッと見たが何も無いと感じ、暖かな布団へと潜り込む。

日付は変わり、明朝、4人は早速調査へと赴くため、おもむきのあるアストラ部隊支部の家の前に並んでいた。当然、少女は眠い目を擦りながらフィリアと手を繋いで並んでいる。

「よし、全員揃っているな。今から調査を始める。調査内容は少女『リン・ヤオ』の母である『ジン・ヤオ』の捜索、街に潜むエイリアンの討伐及び、侵入先の特定。俺とトキノは街の壁周辺、パモスはヤオ家周辺の捜索、フィリアとリンは街の中で聞き込み調査。以上、各々武器を持ち、調査に入れ」

3人はバックスの指示に異論は無い事を示す敬礼をする、リンはそれを真似て敬礼をする。その様子にバックスは笑顔を見せると、4人はそれぞれの持ち場へと足を運び始めた。

バックス、トキノは壁周辺に到着すると、トキノは直ぐに屈み込み、壁近くの地面を弄り始める。

「どうした?」

「意味は特に無い。けど、侵入したと考えると、地面は考えられない」

「言い切れる理由は?」

「エイリアン達には大きく発達した爪があるけど、地面を掘り進める為には余りにも不適切。彼等の爪の面積は約10センチ弱、全長は1メートル弱、掘れたとしても切れ味の悪い包丁で南瓜かぼちゃを切るような感覚だよ」

「なるほど、だとすると犯人はエイリアンだと考えるのは野暮か?」

「ん…?」

パモスはヤオ家の周辺を歩き回り、調査をしていた。見る限り家の外傷は無く、エイリアンに襲われた形跡は見つからなかった。

「何にも無いじゃん。あ、面白い物あるねェ」

パモスは何かを見つけると、それを拾い上げる。写真立てのような物であり、中に入っている写真はくすんで見えない。

一方、フィリアとリンは街で聞き込みを続けていた。

「すみません。この子のお母さん見かけませんでしたか?」

「おや、アトラクターの嬢ちゃん。と、リンちゃんじゃないか。お母さんがどうかしたのかい?」

八百屋にいる初老の女性に話しかけると、リンの顔を見ると驚いた様子で返答をする。どうやら彼女の事を知っているようだ。

「ご存知なのですか?」

「えぇ、ジンさんはいつも私の所で野菜を買って行ってくれるのだけれども、何かあったのかしら?まさか…」

何かを察したのか、女性は青ざめ始める。

「いえ、迷子になっていた所を私が見つけただけですので、ご心配には及ばず。それとも、何か心当たりがありますか?」

「そうなの…。ジンさん、最近かなり疲れた様子で、もしかしたら育児に疲れたのかしらって思ってしまって…リンちゃんの前で言うことじゃないわね。ごめんなさいね」

女性はリンちゃんの存在を改めて認識したのか、話を曲げ頭を下げる。そんな様子を周りの人が疑いの目を運ぶ。

「あ、頭を上げて下さい。私のような人と一緒に居たら疑うのも無理が無いです。とにかく、迷子の彼女を送り届けようとしていただけですので」

フィリアは女性に頭を下げた後、女性から離れた所で聞き込みを再開した。しかし、返ってくる返答はどれも似たようなもので、期待したような返答はあまり無かった。あまり、というもので気になるような返答はあった。「昨夜、奇怪な物音を聞いた」「あれは人間のようで、人間では無かった」「ジンは最近おかしな行動が多かった」という返答。フィリアはこれらの返答に頭を傾げ、深く聞こうとしたがそれ以上は知らないと、まるで賑わっている鍵のかかった部屋をノックしたが、中から何も聞こえなかったような感覚を味わった。

「お母さん…」

「大丈夫、きっと見つかるわよ」

リンは不安そうな声を漏らすと、フィリアは彼女に目線を合わせて頭を優しく撫でる。それでもリンは不安そうに首を縦に振ると、聞き込みを再開した。

「内壁には損傷無い」

バックスとトキノ、こちらは壁周辺の調査しており、トキノは壁に手を当てて言う。調査は難航しているようで、2人は頭を抱えていた。

「エイリアンの侵入は無いと考えた方が妥当か?」

「彼等に言語能力があれば振り返れるけど、今はそう考えるのが妥当」

「そうか。だとしたら、何故ジンさんはエイリアンが居るとリンちゃんを家に残したのか」

「彼等の力はまだ未知数、誰も遭遇した事ない未知の力によって、この壁を突破した可能性も高くはない」

「トキノはまだエイリアンが侵入した可能性を考えているのか?」

「違うの?」

「これは俺の推測だが、リンちゃんを危険な目に合わせたくなくてあえてエイリアンと言った可能性もあると考えている。脅威はエイリアンだけじゃない」

バックスはトキノに教えるが、トキノはまるでわからないというように首を傾げる。子供に難問を教えるかのような感覚をバックスは味わう。しかし、当の本人は既に壁を見ており、その様子に溜息を1つ吐くと、バックスは他を当たるように動き出した。

「バックス、君の推論は正しい。けど、可能性はあくまで可能性、潰せるなら1つ潰す事が必要」

バックスは振り向くと、トキノは此方を振り向かずに壁をペタペタと触り続けていた。その様子にバックスはかつてを思い出した。それは4、5年前の出来事、結成し始めのアストラ部隊はバックス、トキノ、パモスの3人だった。

「トキノ、調査は終わりだ。これ以上探しても見つからない」

そう言い放つバックスにトキノは無視をし、ずっとパソコンに顔を近付けている。

「トキノ…ッ!」

「バックス、こうなったらトキノは何も聞かねェッスよ。あいつは手を伸ばせる事には必ず手を伸ばす。例え、砂漠に埋められた遺体を探し出すと言われても、誰かが困ってるっつうならトキノは探す。あいつはそういう奴だぜェ」

集中し切ったトキノはその会話すら届いてないような様子で、一心不乱にパソコンを弄り倒している。その時のバックスには理解出来なかった。何故、そんなにも他人の事情に必死になれるのか、常に心ここに在らずの様なトキノには何か事情があるのか、無表情の下には何が隠されているのか理解出来なかった。

その後、探し求めていた物が見つかり、無表情のトキノにも少し笑顔が溢れた様な気がし、バックスはそこで悟った。「コイツは根っからの正義心がある。コイツは己の人生をかける覚悟がある」と。

時は今に戻り、バックスはトキノの様子に懐かし羨む。時は経っても彼の正義感は変わり無いという事実に羨んだ。

「ところで、バックス。気付いてる?」

そんなトキノは手を動かしながらバックスに問いかける。疑問に思ったが、バックスは黙ってトキノの言葉に耳を傾ける。

「僕がこんなに必死にここの壁を見ているのか」

トキノの言う通り、彼は数十分間そこから動いていなかった。

「そこがエイリアンの侵入口なのか?」

「ううん、ここじゃないよ。バックスは気付いてないんだね」

「どういう事だ?」

「これは侵入じゃなくて潜入だよ」

同時刻、パモスは調査を切り上げ、どこかへ向かっていた。向かった先はとある廃墟。

「いいねェ。いい隠れ場(ばしょ)なんじゃねェの?俺チャン的にはもっといい隠れ場探すけどねェ」

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