第4話 6月8日 月曜日④
店内に入るとすぐ左の角にこのコンビニの親会社が運営している銀行ATMがあった。
今もそこでなにか操作をしている人がいる。
店内に入って右側は書棚だ。
トイレの手前までつづく本棚はファッション誌からはじまってコミックスの棚で終わる。
レジを確認すると左側のレジにお客が三人ならんでいた。
右側のレジにはお客ふたりがならんでいる。
左側のレジの店員はレシートにスタンプを押していた。
中年女性のお客が何かの支払いをしたんだろう。
そのうえまだ手にカゴを持っている。
このあとに商品の清算か。
一緒に支払いをしたほうが効率がいいのにと思ったけれど、その人の子どもらしき女の子がかわいい動物パッケージのチョコを中年女性が持つカゴに入れた。
なるほど持っているカゴは現在進行形で買い物中か。
僕はレジに用があるからすこし待たなくちゃいけない。
とりあえず店内を回って時間を稼ぐ。
書棚のある通路をまっすぐ進むと突き当りにトイレがあるからトイレの手前で左に曲がって冷凍食品が置かれているガラスケースをながめる。
右側のレジ前にあるアイス売り場にはないたくさんのスティックアイスが入った箱アイスがあった。
ソーダバー、チョコバー、フルーツアイスのパッケージを前面に押し出したアイスのアソートなんかも売られている。
それにコンビにのオリジナルブランドのアイスまである。
アイス類の横は冷凍のおかずなどの冷凍食品コーナーだ。
ここにもコンビニのオリジナルブランドがあって僕は「本格炒飯」を見ている。
ラーメン屋さんの炒飯にも負けないというキャッチコピー。
それはどうだろう? 僕の尊敬する人の作る炒飯は最高に美味しいから。
「本格炒飯」のパッケージは余白の多い簡易的なデザインで必要最低限の写真だけしかない。
にしても値段はわりと高めだ。
仮に味が悪いとしたら割には合わない。
母さんならこんなのは絶対に買わないだろうな。
節約を心がけていていつもスーパーの安売りを狙っていたから。
僕はそこからまたガラスケースの中にある唐揚げや餃子なんかのおかずをながめた。
やっぱりどれも簡易的なパッケージで統一性がある。
ジュースの棚では裏から飲み物を補充している人と目が合って、僕はとっさに視線を逸らした。
なんとなく申し訳なく思ってしまった。
僕はここぞとばかりに雑貨とカップ麺がお見合いをしている棚のあいだから左側のレジの様子をうかがう。
まだ客がならんでいた、どころか増えていた。
今レジの前にいるお客はここのコンビニで使える電子マネーのカードをだしたあとに現金をだした。
これからチャージか。
しばらくして店員がレジの前にコーヒーカップを置いた。
セルフコーヒーも追加で頼んだみたいだ。
まだまだ時間がかかりそうだ。
僕はそのまま直進してプリンやゼリーの置いてある棚を左に回ってエクレアやクレープ、シュークリームのあるザ・洋菓子のスイーツゾーンから正面のレジを見る。
お客がいない、と思っているとチキンやポテト、フランクフルトなんかのホットスナックと中華まんが入っているガラスケースのあいだに「休止中」の札が見えた。
右側レジはいつのまにか無人になっていた。
おそらく店員さんはレジの横のカーテンの奥に引っ込んだんだろう。
あまり待ってもいられない。
僕はコンビニの真後ろにあるアナログ時計を見た。
四時二分、か。
すこし不安だけど、まだ残りがあるから大丈夫だろう。
僕はコンビニの中で元きたルートを引き返した。
途中で二、三人の客とすれ違ったけれど、そのままコンビニの入り口のドアを開いた。
店員さんは忙しそうにしながらも僕をチラっと見る。
それでも「ありがとうございました」の挨拶はしてくれた。
僕は――こちらこそお世話になりましたと、聞こえないように言った。
もしかしたらあなただったかもしれないし、今は奥に引っこんでいるあなただったかもしれないし。
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