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【完結】スマホを持たない二人は電話ボックスで出逢った -グラハム・ベルの功罪-  作者: ネームレス


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第17話 6月9日 火曜日①

 昨日はあれからお湯を沸かし直して菊池さんにもう一杯お茶を淹れたあと、またすこしだけ病院での話をきいた。

 菊池さんが帰ったあとはすぐに戸締りをして寝た。


 電気は僕が寝るちょうど一時間前に復旧した。

 高校の授業料を払うという前提はあるけれど、これでいちおう僕の普段の生活というものに戻った。


 ふつうに登校して、ふつうの授業を受けることができる。

 まあ、こんなんじゃ当然、進学は無理だろうけど。

 ただ学校にいるあいだ家の電気が点くようになったのか点かないかの心配をしなくていいのは本当に助かる。


 悩みがひとつ減っただけで体がずいぶん軽くなったように思えた。

 悩みを抱えた状態というのは心に相当な負担がかかって本当に苦しい。

 おかげで僕は今日一日晴れ晴れとした気持ちで過ごすことができた。

 それは授業を終えた放課後の今でも、だ。


 肩の荷がひとつ降りた僕は軽い背中のまま校門を出る。

 目の前の理髪店をながめると店主は今日も誰かの髪を切っていた。

 営業時間と定休日と「HAIR SALON」のステッカーのすきまからそんな様子が見えた気がする。

 何気ない日常がどんなに大事だったのかをまた身をもって知る。


 理髪店の奥さんが店から出てきて「赤」がトレードマークの飲料メーカーの自動販売機でジュースを買っていった。

 あとすこしで誰かの髪が切り終わる合図だ。


 理髪店にも常連さんがいて散髪が終わったあとでも世間話をしてる人がいたっけ? 僕も小学生のころ区切りのいいところまで漫画を読んで帰ったこともあった。 

 でも早く帰れ、というような顔をされたこともないし嫌味を言われたこともない。


 大納言もだけれどS町の人は人と客との距離がすごく近くてある意味旧時代的なのかもしれない。

 それを嫌がる人もいれば孤独から救われる人もいる。

 

 僕も家で独りだけど周りに人がいるからなんとかやっていけてる。

 窓ガラスが割れて壁に穴のあいている居酒屋を横目に、そのまま交差点まで進む。

 ここを斜め横断をすれば早く電話ボックスに着くけれど、今日だって僕はそれをしない。


 でも、まずはコンビニに寄っていこう。

 なんていったってテレホンカードの残量が「11」しかなから単純に百十円ぶんしか通話できない。


 これだけあればすぐに使い切ることはないだろうけど、なんとなく心もとない。

 信号が青に変わるの待って僕は横断歩道を渡る。

 コンビニの駐車場で「ようこそ化石の町へ」ののぼり旗に出迎えられそのまま店に入った。

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