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リオン・グランクヴィスト。その響きには覚えがる。しかし、自分の知る人物と目の前の男は似ているが別人の様な気もする。
「リオンね。領地と言った?あなた領主様なの?」
「私ではなく今は父が治めている。数年後に私が引き継ぐ事になるが、今は父の仕事を手伝い学んでいるところだ」
「そう。領地は誰かから管理を任されているの?例えば王様とかいう絶対的君主がいる?」
私の知っているリオン・グランクヴィストと目の前のリオンに関係性を求めて的を絞った質問を投げていく。
「いや、シュタイン王国に隣接はしているが完全に独立した自治領だ。我がグランクヴィスト家を筆頭にカースヴィスト家、ネオンヴィスト家の御三家が手分けして治めている。三領を合わせトロワヴィスト領とされていて、シュタイン王国以上の広大で豊かな領土を有し発展を続けている」
誇らし気なリオンの話の中に、やはり知っている家名や国名があげられて確信が深まる。
「そんな素晴らしい土地を治めているなんてすごいわね。でも王国もすぐそばにそんな土地があるのなら黙っていてはくれないでしょう?大変そう」
「ああ。これまで幾度も戦さを仕掛けられては退けての繰り返しだ。我々の軍事力には敵わないと何度教えてやっても懲りなくて困る。私の側近は恐ろしい程有能な男なんだが、自分が手を貸してやるからいずれ俺に王国を掌握してしまえと本気で言ってくる」
リオンは自分の事を話すうちに言葉が崩れていったが気づいていないだろう。年相応で今の方が好ましいから指摘しないでおく。