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似たような現象についてこれまで沢山見聞してきた私だが、体験するのはもちろん初めてである。しかも冷蔵庫とは。もしかしたら私以上の有識者達なら即座に前例を挙げる事も出来るかもしれないが、あいにく私にはそれが媒介となった事例は思い当たらなかった。冷蔵庫も媒介となり得るのかと素直に驚き、感動している。
いけない、いけない。のんびりと構えていては強大なエネルギーに冷蔵庫のドアが弾け飛ぶかもしれない。そんな事になればビールを今後どうやって冷やせば良いのか。
私は慌てて冷蔵庫のドアに手を掛け、意を決して慎重にその扉を引く。途端に強い光が溢れ出て辺りを照らした。
「っ…わわっ、、痛ぁ!」
信じられない程の庫内の明るさに思わず目を瞑るがそれと同時に庫内から重みのある圧に押し掛かられてキッチンの廊下に尻餅をつく。
しばらくして眩しさが落ち着いたのを察し眼を開けば、開け放たれた冷蔵庫は通常の光量で庫内を私に曝け出していた。
「よかった。ビールもつまみもドアも無事だ」
私は安堵の呟きを溢し、身を乗り出して静かにドアを閉めた。しかしまあ、穏やかな休日は諦めなくてはいけないだろう。私は足元に転がる者に視線を落として自分に降りかかった運命を確認した。