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翌朝、六時の少し前に私は身だしなみの一切を整えて洗面所を後にした。居室に向かうとリオンも目を覚ましていてすっかり寝床を片つけて形を取り戻したソファに座っていた。
「おはよう。片つけしてくれたのね、ありがとう」
「ああ、おはよう」
昨夜ソファのトランスフォームもやって見せたから片つけ方は一人で出来たのだろう。それにしても、寝起きでさえイケメンだな。掠れた声など年齢に似合わずセクシーでちょっと生意気。
「さ、リオンも向こうで顔を洗って着替えを済ませて来てちょうだい。服はもう用意しておいたからそれを着てね。準備が出来たら出かけるわよ」
「了解した」
洗面所にリオンを見送って、私は持ち物などを準備していく。リオンの初めての外出だ。万全を期さなければ。
「これでいいのか?」
洗面所に用意した服に袖を通して居室に戻ったリオンは身だしなみの確認をして来た。マネキンにディスプレイされていた通りにアイテムを揃えて用意しておいたから、問題なくまとまっている。サイズも良さそうだ。
「ええ、よく似合ってるわよ。あとはこれを着けてね」
「何だこれは?」
「マスクよ。それで口を覆うの。この紐を耳にかけて、そう」
言われた通りにリオンはマスクを装着してくれた。
「少し息苦しいな。この世界では外出時は顔を隠す決まりでも?」
「宗教によってそういう決まりのある国もあるけどこの日本ではそんな決まりはないわ。それは感染症対策」
マスクで顔の半分が隠れていても意味が分からないという表情なのが分かる。リオンはそれでも黙って私の先の説明を待っている。
「リオンの世界にはない細菌や病原菌がこの世界にはあるかもしれない。そんな細菌をリオンがあなたの世界に持ち込んでしまったら大変でしょう?私たちにとっては大した症状も出ないものであっても、それは長く私たちの周りにあったからであって、それを知らないリオン達の体はどんな症状を起こすか分からない。それとも感染症の脅威に晒されたことはないのかしら?」
「いや、ある。その恐ろしさは十分に理解出来る。だがこんな布で防げるのか?また特殊な繊維でも使っているとかか?」
「細菌を撃退するとかそういう効果はなくて侵入を防ぐのに効果的なんだけど、ちょっと待ってね、えーと、、」
マスクの構造も言われてみれば説明出来るほどの理解はない。ここはまたスマホ先生の出番だ。
「不織布と言ってやはりそれも科学で作られた素材みたい。吸水性、通気性に優れていてそれでいて保湿性もあるそうよ。乾燥を好む細菌には湿度って有効だから呼吸を維持できる上に湿度を鼻や口の周りに保つのは予防に効果的なのね」
「鼻と口を覆うでけで大きな効果を得られるとは、なかなか信じがたいな。病を患った者の体に触れない、近づかないと言うのが一番の対策だろう」
リオンの言葉に私は愕然としてしまった。
「ちょっと待って、それじゃ看病なんて誰にも出来ないじゃない!」
とても受け入れられない言葉だったからつい声が大きくなってしまった。




