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たとえ破滅するとしても婚約者殿とだけは離れたくない。だから、遅れてきた悪役令嬢、あんたは黙っててくれないか?  作者: 桜枕
第3章

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第11話 叱られた

 学園内にある応接室へ移動した俺たちはそれぞれの妻の前に座り、子供たちから哀れみの目を向けられることになった。


「それで、どうしてあのようなことに?」


「先輩が!」

「ウィルフリッドが!」


 カーミヤ嬢に睨まれ、口をつぐむ。


 どうやら、俺たちではなくリムラシーヌとクローザくんへの問いかけだったらしい。


「父上は俺を止めるために割って入ってくださったのです。悪いのは俺です! ついカッとなって我を忘れてしまって」


「私も同じです。負けたくない一心で剣を振るいました。お父様たちが仲裁に入っていなければ二人とも大怪我を負っていました」


 なんて良い子たちなんだ。

 大人気なく、正式な決闘まで始めそうな勢いだった俺たちを庇ってくれるなんて。


「状況は理解しました。クローザ、いくらなんでもやり過ぎです。貴族令嬢の顔に傷を負わせてどう責任を取るつもりだったのですか」


「……はい。申し訳ありません」


「謝るべきはわたくしではありません」


 一度、言葉を切ったカーミヤ嬢がリムラシーヌに目配せする。


「リムラシーヌ嬢、剣を持つなとは言いませんが、女には引き際を見極める能力が必須です。それを覚えておいた方がいいでしょうね」


「はい、カーミヤ様。この度は申し訳ありませんでした」


「ですから、謝るべき相手が違うと言っているのです」


 顔を合わせたリムラシーヌとクローザくんは照れくさそうにしながらも、ぎこなく謝罪の言葉を交わし握手した。


 さすがカーミヤ嬢だ。事態を丸く収めてくれた。


 さて、俺はこれでおいとまするとしよう。


「誰が立ってよいと許可を出したのですか、ウィルフリッド・ブルブラック。あなたもですよ」


 ギクッ!!


 どうやらクロード先輩も俺と同じ考えだったらしい。


「子供たちが目の前で仲直りしたというのに親が逃げるとはいうのはいかがなものかしら」


 子供たちには諭すように言っていたのに今では冷徹そのもの。

 まるで昔のカーミヤ・クリムゾン公爵令嬢を見ているようだった。


 リューテシアに目配せすれば、諦めてくださいと言うように首を振られた。


「カーミヤ様の言う通りです。さぁ、早く仲直りして観戦の続きに参りましょう」


 リューテシアからの手助けを無碍にするわけにはいかない。

 クロード先輩に向き直った俺は、深呼吸して先に謝罪の言葉を口にすることにした。


 だって俺の方が大人だから! より人間ができているのだから!


「ごめんね、クロード先輩」


「すまなかった、ウィルフリッド」


 互いに握手した手に力を込める。

 表面上は笑顔を貼りつけていても水面下では許していない。そんな態度だ。


 ギチギチ、ミシミシと音を立てる両者の手を見て、子供たちが視線を逸らしたのが分かった。


「……ハァ。男って本当にバカな生き物ね。そうは思わない、黒バラ姫?」


「そうですね。よく言えば負けず嫌い、悪く言えば意固地といったところでしょうか。ただ――」


 あっ。嫌な予感。


「久々にウィル様の血気盛んなお姿を見れたのは喜ばしいことです。娘のために剣を取る姿は惚れ惚れしました」


「はい?」


 あっ。急に胃が。


「どう見てもクロード様の方が勇ましかったでしょう」


「失礼ながら全盛期の頃とは比べものにはならないかと。その点、ウィル様は毎日が全盛期ですから」


「クロード様がただ座って職務を全うしていると? 誰が衰退していく王国騎士団を立て直したとお思いかしら」


 あ、これ、ダメなやつだ。


 おほほほほ、と口元を隠しながら思い思いのことを発言する二人の威圧感は俺やクロード先輩の比ではない。


 子供たちも不穏な空気を察したのか、逃げるように俺たちの方へにじり寄ってきた。


「先輩、逃げましょう。四人で昼飯でも食べに行きませんか」


「賛成だ。ここは私は持とう」


「ゴチです。行くぞ、二人とも」


 小声で話し、そそくさと退室しようとしたその時――


「あら、どこに行くというのかしら」

「まだランチには早いですよ」


 俺とクロード先輩は妻たちに肩をがっちり掴まれ、逃走に失敗した。


 

 それから小一時間、どちらの夫がより優れているのか、どこを愛しているのか、という議論は白熱した。


 要するに惚気大会だ。


 俺とクロード先輩は子供たちの前で顔を真っ赤に染めるという屈辱を味わわされた上に、婚約当初から現在に至るまでの恥ずかしい話を全て暴露された。


 まさに地獄。


 こんなことになるのならさっさと謝って闘技場に戻れば良かった。


 後悔先に立たず、とはこういう時のためにあるのだと、この年齢になって痛感させられる出来事となった。

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