表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たとえ破滅するとしても婚約者殿とだけは離れたくない。だから、遅れてきた悪役令嬢、あんたは黙っててくれないか?  作者: 桜枕
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/84

第33話 約束を守った

 生前、母から聞いた話では花にしか興味のなかった学生時代に父から声をかけられて恋に落ちたらしい。

 マリキスなんて最初から眼中になったのではないか。


「それはご愁傷様でした。しかし、だからといって俺から婚約者を奪う理由にはならないと思いますが」


「貴様もオレと同じ苦しみを味わえばよいのだ。愛しき人を失う悲しみと絶望を思い知れ!」


「仮にリューテシアが先生との交際を望むのであれば俺は素直に身を引きます。でも彼女にその意思がないのであれば、俺があなたに愛しき人を譲る道理はありません」


「彼女といい、リューテシアといい、黒い薔薇なんかを贈る非常識な男のどこがいいんだ! 憎しみや恨みの意味を持つ花を貰って喜ぶなどっ!!」


「それは違いますよ、先生。黒薔薇は不滅と破滅の意味を持つ花だと母から教わりました。俺はリューテシアを他の誰にも渡すつもりはないし、他の女性に目移りする気もないので、これ以上に俺の心を代弁してくれる花はこの世に存在していないのですよ」


 当時の俺は偶然色を変えた薔薇をリューテシアにプレゼントする形になってしまったが、今ならこういう意味を込めて黒薔薇を贈りたいと思う。


「奇跡の青い薔薇さえあれば」


「薔薇の色は関係ありません。たとえ先生が奇跡を起こしたとしても、俺とリューテシアが離れることはありません。絶対にです」


「どうして……。あの公爵令嬢の言う通りにすれば、ブルブラック家に復讐できるはずだったのに。もう彼女はこの世にいないのにっ! オレは何も掴めない!!」


 虚ろな目でそんなことを叫ぶマリキスの肩を叩いたのは学園長だった。


「私利私欲を満たすためだけに伝統ある剣術大会をけがし、ウィルフリッド・ブルブラックおよびリューテシア・ファンドミーユの名誉を傷つけようとしたことは看過できない。教え子の一人だからと甘やかし過ぎたようじゃな」


 学園長は無理矢理に立たせたマリキスを連れて、闘技場をあとにした。


 結局、俺が第110回剣術大会の優勝者となったわけだが、一昨年前の時とは違った意味で後味の悪いものになってしまった。


◇◆◇◆◇◆


 学園の東側にある壁に彫られた俺の名前。

 その遥か左側には父親の名前も刻まれている。しかも三年連続だ。


 その右隣にはマリキスの名前もあった。これを見るに父が卒業してから彼が大会で優勝者したのだろう。


 マリキスは剣術の腕でも、恋愛でも父に負けたことになる。

 それが今回の騒動に繋がったというわけだ。


 あれから時間が経たずうちにマリキスは解雇。誰も行方は分からない。


 以前、転生女が言っていた隠しキャラというのは、マリキス・ハイドで間違いないだろう。

 俺にとっての絶望という意味でも合っている。


 マリキスには初対面のときから良い印象は受けなかった。ゲームの話とはいえ、リューテシアがあんな男とハッピーエンドを迎えるなんて胸クソ悪い。


 好きだった女性の代わりに、娘でもおかしくない年齢の生徒に手を出そうとするなんて気持ち悪いの極みだ。


 いったいどんなエンディングだよ。


 ともあれ、俺は公然の場でマリキスを辱めた。

 彼に対してこれ以上の報復をするつもりはないが、こんな悲劇を起こすきっかけを作ったのが、あの転生女だというのなら許すつもりない。


「ウィル様、おめでとうございます。約束を守っていただけたこと嬉しく思います。なによりも――」


 俺は人差し指をリューテシアの唇に押しつけ、次の言葉を遮った。


「決めつけて勝手なことを言ってしまった」


「そんなことはありません。わたしは九歳の時からウィル様をお慕いしています。これからもずっとです。わたしの気持ちを代弁していただき、ありがとうございました」


「それなら良かった。リュシー、今日は疲れたよ」


「では、早く休まれた方が」


「…………」


「でも、その前にウィル様へのご褒美が必要ですね」


 俺の腕の中に収まっていたリューテシアが離れ、両手で俺の頬を包み込んだ。

 そして彼女の顔が近づく。

 一生懸命、背伸びをしても届かないから、俺の顔を少しでも近づけようと両手に力が込められた。


 彼女の意図を汲み取って、膝を折る。


 そっと触れ合うだけのものではなく、息が苦しくなるほどの深い口づけ。


 頬から離した両手で後頭部を撫でられれば、頭の先からつま先まで痺れるような感覚に襲われた。


 それは彼女も同じだったようで紅潮した頬と、とろんとした瞳が物語っていた。


「リュシー、好きだ。ずっと離れないで」


「もちろんです、ウィル様」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ