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☆93 夢
あの頃を夢を見る。
生臭いニオイがする裏路地。
俺はボロボロの貫頭衣を纏って立っている。
俺はどこに行けばいいのかと、回りをキョロキョロと見渡している。
ふと、通路の先を見ると建物と建物の合間から賑やかな街並が視界に映った。
何故だか、そちらに誘われているような気がした。
一歩、また一歩、街並みの明かりに向かって歩を進める。
明かりから誰かの手が伸びてくる。
白くて暖かくて優しい手。
女性のような細くしなやかなで、それでいて、何処か力強く男性的な心強さも感じる。
明かりから誰かの手が伸びてくる。
日に焼けた健康的な腕。
鍛えられた、たくましい腕。鍛練の後が見てとれる、誠実な手。
その二本の手が俺の名前を呼ぶ。
「アルル……」
そうだ、思い出した。
俺の名前はアルルだ。
そして、これは夢だ。
だけど、これは悪夢なのだろうか。
いや、これは悪夢なんかじゃない。
明かりに向かって手を伸ばす。
彼らに向かって手を伸ばす。
二人の手には触れた瞬間、俺は目を覚ました。




