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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-新たなる任務-
89/95

☆87 曇天の闘い

 雨が徐々に強さを増している。きっと、夜になる頃には土砂降りになっているだろう。


「はあ、はあ、はあ……」


 俺は縺れそうになる足を伴い、ギルドへと駆ける。


 感じる、港の彼方、地平線のすぐそこから巨大な魔力を感じる。

 言われたから初めて気付く程の遠く。

 されども、それは徐々にコチラに近付いてきている。


 やっと、ギルドが目に入った。

 俺は駆け込むようにギルドの扉を開く。


「アルル。何をやってるんだ、病み上がりなんだから安静にしてなきゃいけないだろ!」

「おいおい、お前は頭を打ったんだぞ、あんまり動くと身体に障るぞ!」

「それはいい!! 二人とも臨戦態勢!! ギルドの人達は民間人の避難頼みます!!」


 俺の言葉に二人は一瞬目を丸くしたが、直ぐに表へと駆け出した。

  

「アルルさん。一体何が?」


 ヒイロは疑問に満ちた表情で俺に語りかけて来た。


「今、説明してる時間はねーんだ。兎に角、民間人を森に避難させてくれ。いや、それよりももっと遠くへ避難させてくれ!!」


「お、おい!! アルル、あれは、あれは一体なんだ!!」


 表に出ていったロックの叫び声が耳に届く。

 急いで、俺も表に出る。


 二人が唖然とした様子で港の方を見ている。

 俺も恐る恐る、港の方を見る。


「おいおいおい、なんだよアレは化物じゃねぇか……」


 海面から天へと伸びる長い触手に、絶え間無く蠢くその触手の数々に思わず身震いがする。


 その姿は正しく巨大な蛸だ……


 まだ、彼方にいるが直ぐにやって来るだろう。はやく、対策を考えなければ。


「アレは海魔だ…… しかも、呆れる程、巨大な海魔だ。あんな巨大な物、本の挿し絵でしか見たことないぞ……」


 二人の顔が絶望に歪んでいる。

 無理もない、アレだけの巨体を見せ付けられては戦意も失う。


「二人とも、無理に戦わなくてもいい! だけど頼むから民間人の避難だけはやってくれ!!」


 俺の言葉にドッグが顔を歪める。


「アルル、君はアレと闘うつもりなのか?」


 今も巨大な蛸はヌルリヌルリと街に近付いて来たいる。

 凄まじい早さだ。まるで津波だ。津波事態が命を宿して迫ってきているようだ。


 全くもって恐ろしいな……


「でも、アレと闘えるのは恐らく俺達だけだ。俺達まで逃げたら、この街の人も、街事態もなくなっちまうだろ?」

「アルル、わかったやろう。とことん付き合うよ……」


 ドッグの瞳に闘志が宿り、その精悍で知的な顔立ちが戦士の表情へと変わる。

 

「おうおう、お二人とも熱々だねぇ。どれ俺も混ぜてくれよ」


 そう言いながら、ロックが背中の大剣を引き抜く。彼には恐怖と言う感情があるのだろう。意気揚々と港へと向かい歩き出した。


 悠々自適に歩くロックに向かって、ドッグが語り駆ける。


「ロック、君は関係ないだろ? 僕達に無理して付き合うことはないんだぞ!!」

「ここで関係無いって逃げたら、騎士の名折れだ。俺は国に帰れねぇよ!!」


 ロックは微塵もその歩みを止めず、真っ直ぐ港へと向かう。


「二人ともありがとうございます。ギルドの皆さんは民間人の避難を…… ヒイロ頼むぜ……」


 俺達のやり取りを傍らで見ていたヒイロに語り掛ける。

 彼は静かに頷くと、街の方へと駆けていった。他のギルドの人達もそれに続き、街へと駆けて行く。


「アルル!! 海魔が動いたぞ!!」


 ロックが叫ぶ。

 その声に誘われて海魔に視線を向ける。


 海面から触手が伸びる。その手には巨大な岩石が巻き付いている。

 不意に触手がしなる。そして、その触手に巻き付かれた岩石が放たれ。空を飛ぶ、


 まるで隕石だな。

 ドッグが心配そうに俺を見る。


「どうするんだ、アルル!!」

「大丈夫。今の俺は空だって飛べるんだからな!!」


《術式展開》!!

《専権磁界》!!

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