☆7 騒がしい食卓
燃え盛る様な髪型と、瞳をした青年が俺を見て不敵に笑う。
それを他所に、俺はシチューを啜る。
「おい、デイヴ!! その言葉を取り消せ!!」
空かさず、ドッグが立ち上がると彼に向かって歩き出だした……
普段はあんなに冷製パスタなのに、今は熱々のマグマスパゲティーになってしまっている。
それはいけん……
空かさず、ドッグのローブの裾を引っつかんで制止する。
「な! 何をする、アルル!?」
「べ、別に気にしなくて良いでふ、本当の事なんへ」
「ア、アルル…… こんな時も食べるのは止めないんだな……」
まあ、人殺しなのは間違いないからな。
それに、どうせ俺達は“師団”の人間だ。遠くない未来、皆人殺しの仲間入りさ……
「そんなひとよひ、今は飯が冷めない内に食わないほ……」
「……」
「……」
両者言葉を失っている。
「モグモグモグ、ゴクン。こんなコカトリス野郎、放っておけや。それより飯だ、飯!」
それだけ言って、パンを口に放り込みシチューで流し込む。
うん、んまい!!
「ふいー。じゃあ、俺はパンとシチューをおかわりするぜ。おばちゃん、おかわり持ってきて下さい!!」
「お、おかわりもするのか、君は……」
「おい、テメェ、舐めてんのかよ。この人殺し野郎ォ……」
そう言うと、コカトリス野郎がコチラへズイズイと近付いてくる。
「おい、デイヴ! それ以上アルルに近付くな!!」
「近づいたらなんだ、アルルのイヌッコロ!! ヤッチまうぞってかぁ!? へっ、やれるもんならやってみろよ!!」
ハァ、くだらねー。
俺はドッグのローブを引っ張って席に座らせる。
「テメェもスラム出身。こう言う時にはどう話をつけるかわかってるよなぁ、アルルぅ!!」
「ったく、めんどくせーなー」
その瞬間、コカトリス野郎が大きく拳を振り上げる。
そして、その拳が俺に目掛けて降ってくる。
まさに降ってくる、と言った感じだ……
俺とコカトリス野郎との身長差ならこうなっても仕方ないな。
俺の身体はブン殴り合いをするには余りにも小さく貧弱過ぎる。
それに俺は魔術師だぞ……
肉体言語はあまり得意ではないだ。
て言うか、そもそも女の子だぜー。
まともに、男とヤリ合っても絶対勝てねー。
迫り来る拳を避け、懐に入り込む。
《雷の書 四章 指電》
そう唱えた瞬間、人差し指を稲光が包む。
《簡易術式展開》
これは心の中で唱える。
それに呼応して、全ての指に稲光が纏う。
「たんと喰えよー」
《指電・五重詠唱》
《五指絶掌》
その瞬間、稲光が全ての指を纏う。
そして、そのまま掌底をコカトリス野郎の溝内に目掛けて、目一杯ブチ込む!!
何かが弾ける様な凄まじい音と共に、目映い光が張り裂け輝く。
「うび、うびびびびひっ!! あばだっ!!」
そんな不様な叫び声と共に男は痙攣すると、食堂の床にゆっくりと倒れ込んだ。
見ると、意識は保っている様だが激しい痙攣を起こしており。
動きたくても、動けない様子だ。
「まあ、威力は抑えたからよ。オメーなら数分もすりゃー、動けるようにならー」
「うごご、うぎ、アルル、テメェ。汚ねぇぞ……」
その言葉に溜め息が漏れてしまう。
「はー、俺達は兵隊だぞー。戦場に出て綺麗だの、汚いだの気にするのかテメー?」
すると、丁度のタイミングでおばちゃんが俺の所にシチューとパンを持って来てくれた。
「はいよ、アルルちゃん、おかわりだよ。でも、あんまり暴れないでおくれよ。他の御客さんもいるからね」
「はい、ごめんなさい!」
俺は大きく頭を下げると、おばちゃんからシチューを受け取り、それを一気に飲み干した。
ふいー、魔力を使うと腹が減る減る。
「あ、パンは持ち帰って食べますんで。それじゃあ御馳走様でした。美味しかったです♪」
「はいよ、授業頑張ってね!」
俺は、おばちゃんからパン受け取ると、他の団員達の邪魔にならない為にも、食堂を後にしようと歩き出した。
「御馳走様でしたー!!」
「お、おい! 待ってくれ、アルル!!」
俺が食堂を後にしようとするのを見て、ドッグが慌てて残っていた食事を平らげ、俺の後に着いてきた。
別に、そんな急がんくても良いのに……