☆73 心踊る旅路
森を出ると、ほんのりと潮風のニオイが鼻をかすめた。地平線にまで続く太陽の光を反射しキラキラと光る海。
心地好い風を思いっきり吸い込む。
「くはー。あれが港街アイーゼかー。でっけぇ街だな。でっけぇ槽も泊まってんなー」
「おう、ここらでは一番の港街だかんな。ここから船に乗ってレイムロック近郊の街まで行ければ直ぐだ」
「うん、確かにロックの言う通りだな。先ずは直近でレイムロック行きの船があるか調べよう」
「おーし、じゃー、出発!!」
俺の掛け声と共に一行はアリーゼに向けて歩き出した。
一歩一歩歩く旅に街が近づいてくる。
なんだか、こう言うのはワクワクするな。旅って感じがする、ファンタジーの世界に転生したって感じがして楽しいな、
「なんだ、アルルはやけに上機嫌じゃねぇか?」
ロックが俺の様子を見て話しかけて来た。俺は勿論と言った感じで笑顔を向けピースサインをしてみせる。
「まったく、君はお気楽だな。これは任務だぞ、はしゃぐのはいいが程ほどにするんだな……」
何時ものようにドッグがやれやれと言った様子で嗜めてくる。
「まあ、少しは許してくれや。なんせ、俺は産まれてこの方、スラムとホワイト・ロックしか見たことねーんだからよ!」
そう言ってドッグに笑顔を向ける。
「あ…… す、すまない。そこまで気が回らなくて……」
見ると、ドッグが死にそうな顔をしてコチラを眺めていた。明らかにテンションが下がっている。
「お、おい。別にそう言うつもりで言った訳じゃなねーからな。勝手に哀れんでんじゃねーぞ……」
「す、すまない……」
そうは言うもののドッグが見るからにテンションが下がってしまった。
ロックを見るとは呆れた様子で首を傾げた。
いや、そうじゃなくて、なんかフォローしろよ。
一番、年上だろ?
はあ、ここは俺がフォローするしかねーのかな……
「なあ、そんなに落ち込むならよ。少しは海で遊ばしてくれるか?」
取り敢えず、効くかもわからん上目遣いで頼み込む。今の俺に許される全力のブリっこである。
正直、あんまり海で遊んびたいとか思ってない。髪とかギチギチになって面倒臭そうだし。
「ああ、少しなら問題ないだろう。それに君が隊長なんだ、ある程度は好きにするといい」
ドッグは先程の言葉を取り繕う様にして応えた。その表情からは今のドッグから見れる精一杯であろう笑顔が作られている。
「よっしゃー。やったー♪」
と、言って露骨に喜んで見せる。
出来るだけ可愛い笑顔で、可愛いステップを踏む。
「ふっ(笑)」
視界の端でロック笑ったような気がする。
腹立つから、後で殺す。
取り敢えず、俺達の一行はそんな感じでアリーゼへと近づいて行ったのだった。
潮風が導く先にアリーゼの街たどり着いた俺達。新たな港町で冒険の始まりがある。
さあ、行くぜ。冒険の始まりだー!!




